shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Hysteria / Def Leppard

2008-12-28 | Hard Rock
 70年代はハードロック系アーティストのロング・セラーというのは殆どありえなかった。しかしAC/DCが「バック・イン・ブラック」(80年)「悪魔の招待状」(81年)の連続ヒットでシーンに風穴を明けたのに続き、このデフ・レパードが83年に「パイロメニア」で全米だけで700万枚の売り上げを記録し、80'sハード・ロック・シーンの基礎を打ち立てた。その3枚の大ヒット・アルバムをプロデュースしたのが泣く子もメタる、ロバート・ジョン・マット・ラングである。
 マットの一番凄いところは、バンド本来のハードな音をブチ壊すことなくハードロックに縁のないトップ40ファンでもすんなり聴けるようなサウンドに整えたことで、最新スタジオ・テクノロジーとハードロックの持つ躍動感を見事に合体させ、レップスが書いて持ってきた曲の良さを120%引き出すサウンドに仕立て上げたのだ。こりゃ売れるわな。その後ボン・ジョヴィを筆頭に誰もがデフ・レパード的な分厚い音作りをするようになり、シーンが活性化してきた87年に再びマットをプロデューサーに迎えて本家レップスから出された回答がこの「ヒステリア」なのだ。
 その洗練されたシャープなサウンドには更に磨きがかかり、特にコーラスの重ね方はあのクイーンも顔負けの綿密な作りで、とてもハードロック・バンドのものとは思えない。その幾重にも重ねられた美しいコーラス・ハーモニーをバックにリック・アレンの事故で片腕を失ったとはとても思えない驚異のドラミングが爆裂し、フィル・コリンとスティーヴ・クラークのツイン・ギターが唸りを上げ、ジョー・エリオットの心地良いハイトーン・ヴォーカルが突き抜ける、異常なまでにクオリティーの高いロック・アルバムになっている。
 NWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)と呼ばれるのを嫌う彼らなりのヘッド・バンギング・ソング①「ウィメン」、ビデオクリップにも出てくるビートルズ(サージェント・ペパーとそのバンド?)、ストーンズ、T.レックス、スウィート、デビッド・ボウイ、クイーンといったブリティッシュ・ロックの先輩達への熱きオマージュとして心に響く②「ロケット」、泣きのハードロック・バラッドの究極④「ラヴ・バイツ」、アルバム・セールスの加速に火をつけた大ヒット⑤「シュガー・オン・ミー」、空耳に大爆笑の⑥「アーマゲドン」、ライブで一段と映えそうな⑧「ドント・シュート・ショットガン」、ブレイク前のレップスを彷彿とさせる⑨「ラン・ライオット」、見事な立体感を醸し出すレップス・サウンドの構造美に涙ちょちょぎれる⑩「ヒステリア」など、全曲素晴らしい。
 「パイロメニア」がシーンを築き上げたアルバムとすれば、全米だけで1,200万枚を売り上げた「ヒステリア」はシーンを変えたアルバムと言える。彼らはハードロックの概念を超越し、ロックという大きなうねりの中に自らの音楽像を構築したのだ。ポップな親しみやすさとハードロックのカッコ良さのバランスが絶妙な、まさに非の打ち所のないロック・アルバムの金字塔である。

空耳(アーマゲドン)


Def Leppard - Rocket


Def Leppard - Pour Some Sugar On Me

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