数ヶ月前、F山さんというおじさんと飯を食べに行きました。
F山さんは何年か前自分が今働いている店の店長だった人で、今は問屋の方に勤務しています。歳は40代後半、二児の父でやや東北系(?)の訛りです。パンチパーマみたいな髪型をしています。バリバリに仕事の出来る人ではないけど、とても澄んだ瞳をしていて、全く世間に擦れた様子もなく、まるで少年のように素直な心を持った人なんです。自分もそんなF山さんが好きで、当時はとても仲が良く、歳は離れてるけど友達のような関係でした。ここ数年は全く連絡も取っていない状態だったんですが、ある日突然そのF山さんが”ちょっと頼みたいことがあるから会いたい”と言って来たのです。
約束の日は雨でした。何年か振りの再会にお互い少し恥ずかしそうに挨拶を交わし、ファミレスに入りました。しばらくはお互いの近況等を話し合っていたのですが、そんな風に近況を話しながらも、自分はF山さんの”頼み”が気になって仕方ありませんでした。でも2時間ぐらい経っても一向に本題に入ろうとしません。いい加減しびれを切らして自分からF山さんに切り出しました。
「そう言えば、俺に頼みたいことって何なんですか?」
そしたらF山さんは恥ずかしそうにこう言いました。
「いやー、頼みって程大したことじゃないんですけどね、実は特許を取ろうと思っているんですよ…」
(特許!?)
「特許ですか?!す、すごいですね…それで一体どんな発明なんですか?」
「あのー、車の日よけなんですけどね、僕が20代の時に思いついたものなんですけど、もう何十年も経っているのに僕が当時考えたような日よけはいまだに見たことがないんです。」
(…日よけ?!・・・・・微妙だな…)
と思ったけどとりあえずどんな日よけか聞いてみたら、F山さんはすっかり火がついたらしく、自分が考えた日よけについて目をキラキラ輝かせながら熱く語り始めました。
どうやらその日よけは窓枠に収納出来てそこから扇状に広がり窓を覆うというものらしく、本人曰く、既存の日よけはいちいち取り外したりするのが非常に不便なのに、そこが改善されたものはまだ出ていないので絶対にいけるとのことなんです。しかも試作品まで作ってもう既に自分の車に取り付けているというじゃありませんか!
「後で駐車場に降りた時に見せますね。」
「はあ…」
更にF山さんはこんなことを言い出したのです。
「だから僕と一緒に特許に向けてチームを組んで欲しいんですよ、アイディアを出し合ったり、改善点があったら指摘してくれたりとか。もし商品化されてお金が入った時はもちろん山分けしますしね、音楽やるにはお金もいるじゃないですか。」
(・・・・・。)
こんなに困ったことがここ最近あったでしょうか…。F山さんのことは好きなので気持ち的には協力してあげたいのですが、俺もそんなに暇じゃない…というよりもその扇状の日よけでとても一攫千金を狙えるとは思えん!だからと言って目をキラキラと輝かせているF山さんにそんなこと言えるわけもなく、チームは組まないまでも(かなりがっかりしていた…)、とりあえずその扇状日よけのアイディアが今までに特許を取得していないかどうかを、パソコン持ってないF山さんの代わりに特許庁のHPで調べてあげることに…。(特許は既に与えられていて商品化されていないだけという場合も多々あるらしいので、申請する前にちゃんと調べないといけないらしい)
そういうわけでここで特許の話はひとまず落ち着く…(よかった)
しかし安心するのはまだ早かった…
・・・・・続く
F山さんは何年か前自分が今働いている店の店長だった人で、今は問屋の方に勤務しています。歳は40代後半、二児の父でやや東北系(?)の訛りです。パンチパーマみたいな髪型をしています。バリバリに仕事の出来る人ではないけど、とても澄んだ瞳をしていて、全く世間に擦れた様子もなく、まるで少年のように素直な心を持った人なんです。自分もそんなF山さんが好きで、当時はとても仲が良く、歳は離れてるけど友達のような関係でした。ここ数年は全く連絡も取っていない状態だったんですが、ある日突然そのF山さんが”ちょっと頼みたいことがあるから会いたい”と言って来たのです。
約束の日は雨でした。何年か振りの再会にお互い少し恥ずかしそうに挨拶を交わし、ファミレスに入りました。しばらくはお互いの近況等を話し合っていたのですが、そんな風に近況を話しながらも、自分はF山さんの”頼み”が気になって仕方ありませんでした。でも2時間ぐらい経っても一向に本題に入ろうとしません。いい加減しびれを切らして自分からF山さんに切り出しました。
「そう言えば、俺に頼みたいことって何なんですか?」
そしたらF山さんは恥ずかしそうにこう言いました。
「いやー、頼みって程大したことじゃないんですけどね、実は特許を取ろうと思っているんですよ…」
(特許!?)
「特許ですか?!す、すごいですね…それで一体どんな発明なんですか?」
「あのー、車の日よけなんですけどね、僕が20代の時に思いついたものなんですけど、もう何十年も経っているのに僕が当時考えたような日よけはいまだに見たことがないんです。」
(…日よけ?!・・・・・微妙だな…)
と思ったけどとりあえずどんな日よけか聞いてみたら、F山さんはすっかり火がついたらしく、自分が考えた日よけについて目をキラキラ輝かせながら熱く語り始めました。
どうやらその日よけは窓枠に収納出来てそこから扇状に広がり窓を覆うというものらしく、本人曰く、既存の日よけはいちいち取り外したりするのが非常に不便なのに、そこが改善されたものはまだ出ていないので絶対にいけるとのことなんです。しかも試作品まで作ってもう既に自分の車に取り付けているというじゃありませんか!
「後で駐車場に降りた時に見せますね。」
「はあ…」
更にF山さんはこんなことを言い出したのです。
「だから僕と一緒に特許に向けてチームを組んで欲しいんですよ、アイディアを出し合ったり、改善点があったら指摘してくれたりとか。もし商品化されてお金が入った時はもちろん山分けしますしね、音楽やるにはお金もいるじゃないですか。」
(・・・・・。)
こんなに困ったことがここ最近あったでしょうか…。F山さんのことは好きなので気持ち的には協力してあげたいのですが、俺もそんなに暇じゃない…というよりもその扇状の日よけでとても一攫千金を狙えるとは思えん!だからと言って目をキラキラと輝かせているF山さんにそんなこと言えるわけもなく、チームは組まないまでも(かなりがっかりしていた…)、とりあえずその扇状日よけのアイディアが今までに特許を取得していないかどうかを、パソコン持ってないF山さんの代わりに特許庁のHPで調べてあげることに…。(特許は既に与えられていて商品化されていないだけという場合も多々あるらしいので、申請する前にちゃんと調べないといけないらしい)
そういうわけでここで特許の話はひとまず落ち着く…(よかった)
しかし安心するのはまだ早かった…
・・・・・続く