世田谷経営改革クラブ

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世田谷独立計画(論文要旨、目次、参考文献)

2008年02月24日 | 論文:世田谷地域をより良い街にする方法
序章 世界と日本における地方自治改革
 地方分権に向けた世界の動きと日本の動きを、補完性の原理とNPM改革という二つの理論の説明を交えながら分析している。この論文の議論の大前提となるので、必ず目を通して下さい。

 世界の先進国においては、より身近な自治体が行政を行うという補完性の原理と顧客主義、現場への権限移譲などを柱としたNPM改革を大きな原動力として地方分権と行政の効率化が進んでいる。これに対して日本では、地方分権改革が地方政府から始まったために、権限・財源移譲を求める地方政府と権限・財源を移譲したくない中央政府が対立するという構図が生まれている。そして、この相似形として、東京都と世田谷地域を含む特別区が対立している。

第1章 東京都特別区制度改革
 特別区制度に関して様々な見解をまとめて分析したもの。特別区制度改革に興味がある方は参考にご覧下さい。

 東京都は歴史的沿革から、特別区地域に「一体性」を求めてきているが、ここに論理的な根拠は存在しない。それゆえ、特別区制度改革について、東京都、特別区制度調査会他、様々な団体から改革案が提出されている。しかし、その多くは役所の論理や机上の空論に終わりかねないもので、特別区地域で生活する住民の意見を反映するものとはなっていない。特別区制度を改革するためには、特別区地域で生活する人々の意見を反映させるように、まず特別区制度を廃止し、その上で特別区地域の制度を住民と共に考えていく必要がある。

第2章 特別区制度改革に基づく世田谷地域改革
 政令指定都市になるために、世田谷地域住民は何をするべきなのか、世田谷区が政令指定都市になることによって、どんなメリット・デメリットがあるのかを分析したものである。世田谷区を政令指定都市にしたいと考えられる方は、参考までにご覧下さい。

 現在の世田谷区には、地域社会の安全、都市基盤の整備、緑の保護、福祉・教育政策など、東京都と世田谷区の二重行政による課題が多く、世田谷区が東京都から独立して政令指定都市となれば多くの問題は解決できるであろう。
 そこで、特別区制度改革を実現するために、世田谷地域関係者は、世田谷地域事業仕分けを住民と共に大々的に行い、その事業仕分けを各特別区に対しても推奨し、それらの住民の意思を持って、特別区制度を改革するべきであると考えられる。

第3章 新制度導入後の世田谷改革案
 今の制度のままでもできる世田谷区改革案の骨子です。是非、ご覧下さい。

 世田谷地域は東京都と世田谷区の二重行政を解消することにより、多くの課題は解決される。しかし、世田谷地域をより良い街とするためには、世田谷に生活する人々の意思をより反映させるために、情報共有制度の構築、予算制度改革、人事制度改革、議会制度改革などを実現していく必要がある。


目次
序章
第1節 はじめに
第2節 地方分権時代への変化
第1項 補完性の原理とNPM(New Public Management)改革
第2項 日本の地方分権改革


第1章 東京都特別区制度改革
第1節 東京都の特別区制度の沿革、現状及び問題点
  第1項 沿革
  第2項 現状
  第3項 問題点

第2節 特別区制度の存在理由
  第1項 東京都側の主張
  第2項 一体性、首都性及び大都市経営の意義
  第3項 特別区制度の不必要性

第3節 新たな都区制度の提案
  第1項 東京・6特別市+自主区構想
 
  第2項 東京DC特区構想
  第3項 東京の大都市制度改革案
  第4項 基礎自治体連合構想
  第5項 特別区完全独立案

第2章 特別区制度改革に基づく世田谷地域の改革
第1節 現在の世田谷区の課題

第2節 新たな制度に対する世田谷地域住民へのメリット・デメリット
  第1項 メリット
  第2項 デメリット

第3節 新制度を導入するために、世田谷地域関係者がすべき事
  第1項 世田谷地域事業仕分け(提言1)
  第2項 都区制度協議会の改革(提言2)


第3章 新制度を導入後の世田谷改革案
第1節 情報共有制度の構築(提言3)

第2節 予算制度改革(提言4)
第3節 人事制度改革(提言5)
第4節 議会制度改革(提言6)
第5節 その他の分野の改革案(提言7)

最後に 結論

参考文献



[1] 昇 秀樹(平成15年7月号)「『補完性の原理』と地方自治制度」(都市問題研究)
[2] 大住莊四郎『NPMによる経営革新』学陽書房
[3] 大住莊四郎『ニュー・パブリック・マネージメントー理念・ビジョン・戦略』日本評論社
[4] 第2回特別区制度調査会資料
[5] 世田谷区政策経営部広報広聴課編『世田谷区政概要2006』 (pp. 27-29)
[6] 財団法人 特別区協議会 特別区制度調査会事務局編(平成19年12月)『「都の区」の制度廃止と『基礎自治体連合の構想』《関連資料》
[7] 特別区長会事務局(平成17年5月)『未完の都区制度改革の解決をめざして~平成12年改革の残された5つの課題』
[8] 第12回特別区制度調査会資料

[9] 地方分権推進委員会の中間的なとりまとめ(平成19年11月)

[10] 財団法人 森記念財団編(平成11年6月)『東京・「6特別市+自主区」まちづくり会議構想』
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2006/11/40gbs100.htm
[12] 東京自治制度懇談会(平成19年11月)「議論の整理」
[13] 財団法人 特別区協議会 特別区制度調査会事務局編(平成19年12月)『「都の区」の制度廃止と『基礎自治体連合の構想』
[14] 東京消防庁編(平成17年)『消防行政の概要』
[15] 東京水道局編(平成17年)『事業概要』
[16] 東京下水道局編(平成17年)『事業概要』
[17] 世田谷政策経営企画課編(平成17年)『世田谷区基本計画』
[18] 世田谷区政策経営部広報広聴課編『世田谷区民意識調査2007』
[19] 東京都建設局『東京都無電柱化方針』(平成19年6月)
[20] 構想日本編著(平成19年)『入門 行政の事業仕分け』
[21] 世田谷区政策経営部財政課編(平成18年12月)『世田谷区の財政状況―平成17年度決算―』
[22] 世田谷区政策経営部財政課編(平成19年5月)『平成19年度当初予算概要』
[23] 遠藤愛一郎(2007年VOL11)『公会計制度改革の現状と課題』(DIR 経営戦略研究)
[24] 世田谷区人事課編(内部資料)『世田谷区の人事考課制度概要』
[25] 世田谷区総務部職員厚生課(内部資料)『人事考課の活用』
[26] 山中俊之(2006年)『公務員人事の研究』東洋経済新報社

世田谷独立計画 序章 第1節 はじめに

2008年02月24日 | 論文:世田谷地域をより良い街にする方法
 世田谷区は、東京23区(以下、特別区と呼ぶ)の一つとして特別区制度という、全国でも特異な制度の下、他の市町村と比較して制限された権限で東京都と一部権限が競合しながら活動している。そのために、東京都と世田谷区の間で責任の所在が不明確になり、二重行政が発生し行政の効率化が行いにくいなど、多くの課題を抱えている。従って、世田谷地域を本当に良い街にしたいと考えるならば、特別区制度改革について考察をせざるを得ないのである。

 そこで、本稿では、まず、序章では、地方分権への時代の流れについて、その大きな原動力となっている補完性の原理とNPM改革を説明した後、世界での地方分権への流れと日本での地方分権の進展について述べる。次に、第1章では、世田谷区を含む特別区制度の沿革、現状、問題点を説明した後、東京都、特別区協議会等の提出している特別区制度改革案について触れて、その是非を考察する。その上で、第2章では、第1章で考察した特別区制度改革を行った場合、世田谷地域住民にどんな変化があるのか、そもそも世田谷区には、どんな課題があったのか、また、新制度を導入するために世田谷地域関係者が何をしていくべきかについて述べる。最後に、第3章では新制度導入後でも世田谷地域にまだ残ると思われる問題に対する改革案について述べることとする。

 なお、本稿では、特別区制度改革について考察し、その廃止も視野に入れて世田谷地域をより良い街にする方法を検討するので、特別区を廃止した場合も「世田谷区」と呼称するのは問題があるため、現在の世田谷地域の行政機関を「世田谷区」、行政機関に限らず現在の世田谷区のある領域について「世田谷地域」と呼称することとする。

序章 第2節 地方分権時代への変化

2008年02月24日 | 論文:世田谷地域をより良い街にする方法
 現在の日本は、「小さくて効率的な政府」を目指し、「自己決定・自己責任」「地方の時代」「国から地方へ」「地方にできることは地方に」等をキャッチフレーズに行政改革を実施している。この改革が、中央集権から地方分権への時代の変化と言われる。

第1項 補完性の原理とNPM(New Public Management)改革

 地方自治は、もともと国家から住民を守るための自由主義の考えから来る団体自治及び地域に住む人間が地域のことを決められるようにする民主主義の考えから来る住民自治の下、必要なものと考えられていた。しかし、実際には中央集権制度の方が大量生産、大量消費の社会には適合性が高かったために、多くの先進諸国は中央集権化され、ときにはナチス政権のような行き過ぎた国家主義を生むことさえあった。
しかし、ナチス政権のような行き過ぎた国家主義は個人の尊厳を破壊するという反省と、成熟した社会の中で先進諸国の住民のニーズが多様化していったことによって、補完性の原理とNPM改革が生まれ、それによって中央集権から地方分権の流れが欧米諸国で加速している。

 補完性の原理とは、「キリスト教社会倫理に由来する考え方で、政策決定はそれにより影響を受ける市民、コミュニティにより近いレベルで行われるべきという原則」である。より簡単に言うと「問題はより身近なところで解決されなければならない」とする考え方である。この「補完性の原理」は、個人の生活に国家はなるべく介入するべきではないという教会の宣言を基に発展してきたもので、現在では「ヨーロッパ地方自治憲章」で条文化され、国連の「世界地方自治憲章草案」にも盛り込まれている「個人の自立」を前提とした社会の構成原理である。「欧州統合に際して、EUと各国政府の関係を整理するための拠り所とされたものであるが、1国内の中央政府、地方自治体、NPO(民間非営利団体)の役割分担にも援用できる」とされている。
 「補完性の原理」の仕組みは、次のようになる。
① 個人でできることは個人で解決する(自助)
② 個人でできないときは、まず家庭がサポートする(互助)
③ 家庭で解決できないときは地域あるいはNPOがサポートする(共助)
④ ①~③でどうしても解決できない問題について、はじめて政府が問題解決に乗り出す(公助)
(イ)政府が問題解決に乗り出すとして、政府の中でまず取り組むべき主体は市民に近い基礎自治体(現在は市町村)
(ロ)基礎自治体でどうしても解決できない問題については広域自治体がサポートする
(ハ)広域自治体でも解決できない問題についてはじめて中央政府がサポートする


とされており、「補完性の原理」は、個人の尊厳と民主主義を守るためのグローバルスタンダードになろうとしている 。

 これに対し、NPM改革は1970年代のオイルショックを契機として、経済成長の鈍化、財政赤字の拡大に遭遇した欧米各国が肥大化・非効率化した政府部門の合理化、効率化に取り組むことによって始まった。このNPM改革は、実施当初は財政的必要性から明確な論理的根拠もなく始められた部分も多く、その定義、論理的根拠については意見が分かれることもあるが、それによって欧米諸国の行政活動は飛躍的に効率化していったことは確かである。1980年代英国サッチャー政権での事業部門の民営化、補助金の削減、外部委託及び規制緩和等の実現、ニュージーランド・オーストラリアでのアウトプットにおける効率性重視及び会計と業績測定のリンク、1990年代米での業績活動の効率性よりアウトカムと有効性改善重視、会社と業績測定は独立等が、その先駆けとされている。また、北欧諸国では市場原理の導入は控えているものの、業績測定を中心とした改革は積極的に行っており、北欧型NPMと呼ばれることもある。
 このNPMの定義は、前述の通り明確には存在しないが、1995年のOECDレポートのよると、
① 結果及びVFM(Value for Money)の向上
② 権限の委譲と柔軟性の増進
③ アカウンタビリティ(説明責任)と統制の強化
④ 顧客志向およびサービス志向の推進
⑤ 戦略および政策形成能力の強化
⑥ 競争その他市場的要素の導入
⑦ 他のレベル(上位および下位)の政府との関係の変化
とされている。
 このようなNPM改革による、業績・成果による統制、手続き重視から顧客重視、権限移譲による中枢部門と実施部門の分離、市場メカニズムの活用、ヒエラルキーの簡素化という変化は、高度成長期の大量生産、大量消費の時代から成熟経済におけるニーズの多様化にうまく対応し、この改革を実現するために、中枢から現場へ、中央から地方への権限の移譲が意識されるようになってきたのである。



 つまり、補完性の原理による民主主義的な要請及びNPM改革による行政の効率化の要請が、世界の地方分権を促進する大きな原動力の一つとなっているのである。

第2項 日本の地方分権改革

 日本の地方分権改革の必要性は古くは1949年のシャウプ勧告以来、唱えられてきている。このシャウプ勧告では、行政責任の明確化の原則、市町村優先の原則が主張され、国税の比率が高く地方政府の歳出は国からの補助金に頼っていることが問題と指摘されていた。しかし、高度成長期の日本では中央集権の下、大量生産、大量消費で経済発展をすることが第一とされ、シャウプ勧告で提言されていた地方税制改革は骨抜きにされ、地方政府に財源はほとんど移譲されなかった。国庫補助金制度で補助金の使途が国によって定められ、「三割自治」と呼ばれるように地方自治の独立性が失われてきていたのである。
 しかし、日本も低成長の時代に入り、財政赤字が累積してくると改革の必要性が認識されるようになり、世界の行政改革の手法であるNPM改革が意識されるようになっていった。日本でNPM改革が最初に導入されたのは、地方自治体からである。1995年に統一地方選で当選した北川正恭三重県知事、増田寛也岩手県知事、逢坂誠二北海道ニセコ町長らは、顧客主義の観点に立ち、企業経営の手法を行政に取り入れ、また徹底的な情報公開をトップダウンで行うことにより、組織を大きく変えていった。そして、この成功体験が各地に飛び火し、多くの地方自治体で改革首長が生まれ、地方での改革手法が中央でも取り入れられるようになっていったのである。
 この流れの中で、日本においても、国と地方の関係が再考され、「国から地方へ」「地方にできることは地方に」とのスローガンが出され、機関委任事務の廃止、財源移譲が行われた。また、「今後の地方自治制度のあり方に関する答申」(第27次地方制度調査会)の中で「今後の我が国における行政は、国と地方の役割分担に係る『補完性の原理』の考え方に基づき『基礎自治体優先の原則』をこれまで以上に実現していくことが必要である」ともしている。ただし、日本の場合、中央政府から地方政府への権限移譲、財源移譲はあまり進んでいない。中央政府はなるべく権限を維持し、中央政府の借金を減らすために改革を行おうとするので、地方交付金の削減で地方政府の財政事情が厳しくなるという問題も発生し、改革を進め権限・財源移譲を求めている地方政府と現在の仕組みを維持したい中央政府という対立の構図が存在しているのが日本の現状である。 そして、この中央対地方の対立関係は、東京都と特別区の間にも存在しており、東京都と特別区は権限・財源の移譲について、様々な点で対立している。

第1章 東京都特別区制度改革 第1節 東京都の特別区制度の沿革、現状及び問題点

2008年02月24日 | 論文:世田谷地域をより良い街にする方法
第1項 沿革

(1)東京都制の誕生(昭和18年)
 東京市の急速な発展に対処するとして、何度か市域の範囲の拡大が繰り返されてきたが、「帝都ノ性格ニ適応スル体制ヲ確立スルト共ニ其ノ行政ノ統一及簡素化ト刷新強化トヲ図ル」(昭和18年法律第89条)ために、東京市と東京府は廃止され、東京府の区域を東京都とすることで東京都制は誕生した。この時、区は東京都の下部行政組織となったが、『区ハ法人トス』とし、官の監督を受けて『財産及営造物ニ関スル事務』を、また都条例に依って『区ニ属スル事務』を処理することとなった。(東京都制第140号)

(2) 昭和22年特別区の誕生と地方自治法の制定
 昭和22年 新憲法の下に制定された地方自治法により、東京都の区は「特別区」と呼ばれ、特別地方公共団体であるが、憲法上の地方公共団体として、また東京都における基礎的地方公共団体として、一般の市に準ずる地位が与えられた。しかしながら、東京都に多くの権限が留保され、事務の委譲や財源を巡り都区の間に紛争が生じることとなった。

(3) 区長公選制の廃止と昭和27年の改正 大都市行政の統一的、効率的運営を図ることを目的に、地方自治法が一部改正された。この改正で、特別区は東京都の「内部団体」とされ、区長公選制も廃止された。また、特別区の事務も制限列挙され、それ以外の事務は東京都が処理することとするなど、特別区の自治権は大きく後退させられた。

(4) 昭和39年の改正
 人口、産業の過密から都政の行き詰まりが叫ばれるようになり、昭和37年第8次地方制度調査会は、東京都の事務を大幅に特別区に委譲することなど、東京都と特別区の制度の合理化を求める答申をおこなった。この答申を受けた昭和39年の改正では、福祉事務所の移管などの事務委譲や税制面においても、地方税法に「特別区税」が法定化されるなど、特別区の事務権能、財政自主権が強化されることとなった。

(5) 区長公選制復活と昭和49年改正
 その後も区長公選制の復活の市民運動が活発化するなど、特別区の自治権拡充運動が重ねられ、昭和47年第15次地方制度調査会は「区長の公選制度の採用」を答申した。この答申に基づき昭和49年の地方自治法改正で、区長公選制が復活するとともに、区長の人事権が確立した。また、特別区の事務権能も、特別区の制限列挙が逆転し、東京都の事務を限定することとなり、一般の市と同等の扱いとなるとともに、保健所等の事務移管行われた。この改革は、特別区の自治権を確立するうえで、画期的な改革であったが、東京都の内部団体的性格は改められず、また財政面などで特別区が自主性を十分に発揮しにくい仕組みが残された。

(6) 特別区制度改革の実現(平成12年4月)
 自治権拡充のため長年取り組んできた運動などにより、平成10年「地方自治法等の一部を改正する法律」が改正され、平成12年4月に特別区制度改革が実施された。この改革は、第22次地方制度調査会の「都区制度改革に関する答申」を踏まえ、大都市の一体性、統一性の確保に配慮しつつ特別区を法律上明確に「基礎的な地方公共団体」と位置づけるとともに、特別区の自主性・自律性を強化し、住民に身近な事務を東京都から特別区へ移譲することを三位一体として実施されたものである。
この改革で、特別区は基礎的自治体である「市町村」に準ずるものとされ(地方分権法第281条の2第2項・第283条)、市の所掌する行政事務に準じた行政権限が付与されている(同法第281条第2項、第283条)。
 そこで、特別区の自主性・自律性を高めるために、固有財源の拡充や特別区特有の特例措置などが見直された。固有財源の拡充では、都区財政調整制度が改正され、市町村民税法人分・固定資産税・特別土地保有税の3税を調整財源として法制化され、入湯税、ゴルフ場利用税交付金、航空機燃料譲与税が都から特別区に移譲、特別区たばこ税を特別区が直接賦課徴収することとなり、地方債を起こす場合、都知事の許可に変更となった。
 また、地方自治法上の特例も改正され、特別区の廃置分合・境界変更について特別区が発議することができるようになり、これまで東京都の規制で事務を特別区に委任し、その事務の執行について都知事が指揮監督を行うことを定めていた区長委任条項、東京都の条例で特別区の事務に係る調整措置を講じることとされている調整条例の規定及び国民健康保健事業に係る都条例による特別区間の調整措置が廃止された。
 加えて、住民に身近な事務は原則として特別区が処理することとし、一般廃棄物の収集・運搬・処分等の事務が移譲され(「東京都清掃局」から各特別区および東京23区清掃一部事務組合へ)、教育委員会の処理する幼稚園の教職員の任用及び小中学校・養護学校・幼稚園の教職員の服務・教科書・教材・教育課程等に関する事務、法律に規定された保健所設置市の事務のうち都に留保されている事務及び温泉法・大気汚染防止法等の法律による政令で定める市に対する事務が東京都から特別区に移譲されている。

第2項 現状
 このように、平成12年の改革で「基礎的自治体」とされた特別区だが、「法律または政令により都が所掌すべきと定められた事務」及び「市町村が処理するものとされている事務のうち、人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の観点から当該区域を通じて都が一体的に処理することが必要であると認められる事務」を処理する事ができない(同法第281条第2項・第281条の2第1項)という制限が加えられている。具体的な権限を挙げると、特別区は、「保健所の設置および運営」を行う責務を有する(地域保健法第5条第1項)など、所掌する行政事務の一部において、通常の市町村より広い権限を与えられている部分がある一方で、「上下水道」・「消防」などの事務に関しては単独で行うことができず、東京都が行っている(水道法第49条、下水道法第42条、消防組織法第26条ないし第28条)。そして、東京都及び特別区の共管事務の処理については、東京都と特別区及び特別区相互の間の連絡調整事務を図るために設置された「都区協議会」によって協議され(同法第282条の2)、東京都と各特別区相互間の協調を図ることとされている。
 税制面では都区財政調整制度(地方自治法第282条)があり、法人市町村税、固定資産税、特別土地保有税、事業所税、都市計画税、国有提供所在地等所在市町村交付金、国有資産等所在市町村交付金、特別とん譲与税は一度「東京都」に入った上で、財政調整の原資となり、東京都と特別区が割合を決め、特別区の財源不足額に応じて、財源調整交付金という形で、特別区の収入となっている。この都区財政調整制度により、特別区間の財政力が調整されている。
 人事面では、職員の採用も、全区からなる一部事務組合である「特別区人事・厚生事務組合のもとに設置された「特別区人事委員会」で一括採用しているのも特徴である。この制度では、一旦、「特別区人事委員会」で一括合格を決めた後、各特別区が合格者に面接を行い、どの区が採用するかを決めることとしている。

第3項 問題点
 このように、基礎的自治体としての地位が認められた特別区であるが、他の市町村と比較すると、権限配分と財源配分には、まだ問題があるとされている。具体的な問題点については以下のとおり。

(1) 法に沿った役割分担と財源配分の整理
 通常の自治体では、市町村事務の財源には市町村税、府県事務の財源には府県税が充てられている。これに対し、「基礎的自治体」としての面も持つとされていた東京都は、都区財政調整制度により市町村税の一部を徴収し、市町村事務の一部と府県事務の両方を行っていた。この東京都の権限及び財源を、特別区に「基礎的自治体」としての地位を認めて移譲するのが、平成12年度の特別区制度改革であった。しかし、東京都に、一体性や統一性を確保するのに必要な事業及び大都市経営に必要な権限だけを留保するとも決定したため、権限・財源配分が複雑になってしまっている。東京都の側はこれまで「市町村事務」と「府県事務」の区分を行っていなかったために、東京都が実施している「市町村事務」の内容を明確には定義しておらず、福祉、まちづくり、保健衛生の分野で特別区と競合する場合もあり、東京都と特別区の役割分担が不明確となっているのである。その結果、特別区から東京都に支払われている市町村税の総額は判るとしても、実際に何の事業のために、どれ位の予算が特別区から東京都に配分されているか不明確となってしまっている。そのために、東京都が大都市経営の観点から特別区の為の市町村事務を一体的に行うという目的とは関係なく、予算を使うことが出来るようになってしまっている。従って、例えば東京都が特別区以外の東京都の別の地区である三多摩地区のために、特別区から徴収した予算を使っていたとしても、それを住民や特別区はチェックする事ができなくなってしまっているのである。

(2) 特別区の財源配分に反映されていない清掃関連経費の取扱い
 平成12年に東京都から特別区へ移管された清掃事業の経費は、移管時に2032億円であったが、1287億円の財源しか特別区に移されていない。ただし、平成18年の都区協議会において、平成18年度200億円の別途交付金が出されているが、これでも、まだ不足している。

(3) 小中学校改築需要急増への対応
 校舎の耐用年数は50年と言われ、今後20年間で改築時期を迎える小中学校は900校を数えるにも拘わらず、財源は140校分しか確保されていない。

(4) 都区双方の都市計画事業の実施状況に見合った都市計画税の配分
 まちづくりの基盤を整備する都市計画事業は、都区が分担して行っているが、特別区の財源には事業実績の割合に見合わない都市計画交付金が都から交付されているだけである。

(5) 17年度までに大きな制度改正等があった場合の財源配分変更
 平成12年度以降、児童扶養手当事務の東京都から特別区への移管等があったが、財源配分が行われていない。

(6) 東京都と特別区の間の権限の配分調整の不調
 管轄が不明な部分を都区協議会で協議することとなっているが、基本的に東京都は権限移譲に後ろ向きであるため、権限はなかなか移譲されないという問題がある。その結果、権限移譲を求める特別区と対立し易いが、それを解決する明確な手段が制度化されていない。従って、東京都と特別区の議論が水掛け論に陥り易く非効率な行政が継続しやすい。

そして、これらの課題が解決され権限配分、財源配分が明確に東京都と特別区の間で整理されると

() 都区が役割に応じた責任ある事業運営をできる
 東京都と特別区の役割分担に応じて安定した財源配分を確立することで、特別区は基礎自治体として、東京都は広域自治体として、それぞれ責任ある事業運営を進められるようになる。

() 税金の使途が明確になる
 納税者である特別区の住民に対し、府県税、市町村税それぞれの使途が明らかになり、都区の行政責任が明確になる。特に、現在のように、特別区のための市町村税が、三多摩地区などの特別区以外の地域に投入されたりする可能性がなくなり、自己決定・自己責任の原則が守られる。

() 住民の意向に沿った行政運営が実現しやすくなる
 都区の役割と責任を明確化することで、分権改革を推進するための土台が整い、住民の意向に沿った行政運営ができるようになる。これは、NPM改革の考え方にも合致するもので、より住民に近い位置にある自治体が、多様な住民のニーズに応えることが可能となる。

()特別区が基礎自治体として責任を果たす基盤が整う
 清掃事業の円滑な実施や教育環境の整備、地域に根ざしたまちづくりなど、特別区が基礎自治体として住民に対する責任を果たしていくために必要な財政基盤が整う。

() 大都市東京の発展に向けたパートナーシップが確立できる
 都区の役割や財源関係が整理され、合意形成のルールなどが整備されれば、今後の社会情勢や住民のニーズの変化を踏まえて大都市東京の課題に対応する都区の真のパートナーシップが確立できる。

第1章 第2節 特別区制度の存在理由

2008年02月24日 | 論文:世田谷地域をより良い街にする方法
第1項 東京都側の主張
 東京都は、特別区制度が存在しなければいけない理由として、「一体性、統一性を確保しなくてはいけないから」「政令指定都市制度ではカバーしきれないから」「東京は首都であるから」「大都市経営を行うため」という理由をこれまであげてきている。これを具体的に述べると

(1)人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から当該区域を通じて都が一体的に処理することが必要であると認められる事務(地方自治法282条の2)が存在する。

(2)特別区の存する区域は、指定都市制度では対応しきれない規模として既存の指定都市を相当上回る人口数百万程度で一体となった社会的実態がある区域であると同時に、当該区域の行政についての一つの普通地方公共団体である指定都市で対応することには問題があると思われる(地方自治法逐条解説281条の2)から、政令指定都市の行政区より、東京都は特別区に権限を分ける必要がある。

(3)東京都は首都であるから、首都機能を実現するために、それに相応しい制度が必要である。

(4)大都市が日本経済を牽引する役割を担い続けるためには、「大都市経営」という観点で東京都が特別区においても行政を行うことが必要である。

という理由が挙げられてきている 。この点、沿革から考えると、最初、東京都は首都であるから特別の制度が必要であるという(3)の考え方から始まっているが、その後、東京都は繰り返し「一体性、統一性の確保」の重要性を主張するようになり、最近では道州制との関係で(4)の大都市経営の必要性を主張するようになってきている。

第2項 一体性、首都性及び大都市経営の意義
(1)一体性とは

 特別区制度が必要とされる理由としての一体性とは、時代によって、「有機的一体制」「行政の一体性」「大都市地域における行政の一体性及び統一性」というように、異なる様々な文言が使われていて、その定義は明確ではない。
① 有機的一体性とは、昭和21年頃に使われ、昭和32年東京都の内部資料第一次都政調査会答申など、特別区が東京都の内部団体であった時に用いられていた文言で、
(イ) 特別区区域は、沿革と社会的実態との二つから各区は相互に結合して一体として大都市を形成しているのであって、単なる集合体ではない。
(ロ) 住民が区の境界を越えて一の都市の住民として、社会的、経済的、文化的生活を維持していること。
などを理由として、区民がその特別区の財政力の強弱に係わらず、「負担の均衡」を負い、「福祉の均衡」を受け、どこに住んでも公平同質である根拠とされていた。

② 行政の一体性とは、昭和39年及び平成10年の地方制度改正の時に用いられた文言である。それまで、歴史的沿革から、かつて同じ基礎自治体があった東京市の区域である特別区地域は「有機的統一性」の定義のように、全てについて利益及び負担の均衡が保たれなければならないとされていた。しかし、時代の変化に伴い、行政の一体性は分野分けされるようになり、どんな行政に一体性が必要とされるか考えられるようになってきている。

③ そして、大都市地域における行政の一体性と統一性は、平成10年の地方制度の改正で出てきた文言である。この文言で、大都市地域において均衡を保つ必要がある行政分野について、一体性が必要であるとされるようになってきている。

(2) 首都性とは
 首都とは、内閣法制局参議院法制局第2部第一課長に対し、平成17年に特別区制度調査会が確認したところ、法律上は不明確であるという回答を受けているが、事実上、国際的にも、東京が首都である事を否定するものはいないであろう。そして、世界各国には首都であるからと特別な制度を設けている国も存在している。しかし、日本では、昭和37年第8次地方制度調査会にあるように、首都的事務としては、「国会・政府機関・外国公館等の警備、皇族・内外要人等の警備、外国賓客の接遇等、警察・渉外事務の一部に見られるほか、首都としての景観の維持を特に求められる程度」が考えられるのみであった。そして、「一国の首都における国家的象徴ともいうべき施設又は首都としての体面を維持するために必要な公共施設を維持するために、国はその責任の一端を担うべき」とされ、首都としての機能を果たすには国から援助を受ける必要があるという場合に首都性は主張される傾向が強くなってきており、首都であるが故に東京に特別区という特別の仕組みを必要とするという考え方は言われなくなりつつある。

(3) 大都市経営とは
 東京自治制度懇談会 議論のまとめ(平成18年11月)によると、大都市の安全性、機能性及び快適性を維持向上させるという大都市全体の利益のために、その地域の行政課題を統合的・一体的に解決することによって、集積のメリットを効果的に発揮し、集積のデメリットを解消していくこととしている。具体的には、
① 都市づくりビジョン、大都市経営に必要な都市計画の策定
② 基幹的な交通ネットワークや物流拠点などの都市基盤整備、維持管理
③ 集客機能の強化、都市文化の振興、都市景観の整備
④ 都市の魅力をアピールするプレゼンテーション
⑤ 都市型犯罪やテロへの対応
などのことであるとされている。

第3項 特別区制度の不必要性
 このような理由で必要だとされていた特別区制度であるが、補完性の原理とNPM改革の観点から考えると、不要であるということが出来る。

(1)まず、一体性を必要とする理由について、
① 補完性の原理から言えば、身近な地域で解決できない場合にはじめて、より広域の自治体に問題解決を委ねるべきとされている。従って、普通の基礎自治体であったとしても、必要があれば広域自治体に解決を委ねているのである。つまり、基礎自治体が他の地域との間に行政の一体性が効率的であると判断すれば、より広域の自治体に基礎自治体自体の権限を委譲することもありうることなのである。それを、東京都の場合だけ、特別区制度を導入して、最初から、特別区地域の基礎自治体の権限を制限して一体性を確保しなければならないとは考えがたい。

② 特別区の中で、福祉と負担の一体性を確保し、特別区住民は、均衡された負担と福祉が行われなければいけないというのは、自分の責任は自分で取るという分権改革の時代の考え方に逆行していると考えられる。

③ 人口が集中する区域であるならば、特別区地域の人口密度は約13500(人/km2)だが大阪市のように約11000(人/km2)という地域が他にも存在するのに、特別区地域にのみ特別区制度を導入する合理性が存在しないと考えられる。

④ 人口集中を理由として特別区制度が必要であるとするならば、大都市圏が広がっている現状において、特別区制度は常に拡大を続けなければならないということになる。東京都は後述するように、この立場に立ち、道州制において、東京圏を拡大させると同時に特別区の範囲を拡大させるべきであるとしている。しかし、それでは特別区の地域が人口の拡大に応じて拡大されていき、大都市であることを理由として、基礎自治体としての権限を制限された自治体が増えることとなってしまうであろう。このような事態は、NPM 改革の観点から見れば、中央から現場に権限が移譲されず、不効率が拡大していく状況にほかならないので、問題があると考えられる。

⑤ 更に、地方分権推進委員会の中間的なとりまとめ(平成19年11月)では、国から地方に行う地方分権への懸念に対して、「統一性」は直接介入ではなく、法律で極力限定的な基準を定め、地方の創意工夫を生かせる体制とするべきであるとしているが、この考え方は、そのまま、東京都と特別区の関係にも有効なものであると考えられる。

(2)また、特別区地域は、政令指定都市制度よりも規模が大きいから特別区制度が必要である(地方自治法逐条解説281条の2)という考え方だが、規模が大きくなった基礎自治体に適用するべき政令指定都市という制度を、なぜ府県事務を行うべき東京都に適用するのか、なぜ東京都が特別区地域の基礎自治体に代わり、基礎自治体的な業務を行うことができるのかという説明にもなっていない点からも問題があると考えられる。

(3)首都としての事務を行うために、特別区地域には特別の制度が必要であるという考え方であるが、現在では行政の一体性を確保できれば、特別な機能を要求する必要もないと考えられる傾向にある。従って、首都的事務である国会・政府機関・外国公館等の警備、皇族・内外要人等の警備、外国賓客の接遇等などは警視庁があれば十分であり、首都であるから、特別区を持つ必要はないと考えられる。これに対し、DC特区構想では、首都であるがゆえに理由もなく他の地域よりも得をしているとして、特別の制度を要求しているが、この点については後述することとする。

(4)大都市経営の考え方についてだが、日本全体のことは日本政府が考えるべき事であり、東京都が日本経済を牽引する為に、大都市経営をするというのは越権行為であると考えられる。更に、補完性の原理から考えれば、まず、住民の福祉の向上を目的として、行政は運営されていくべきであり、基礎自治体である市町村で対応できない事態になってはじめて、広域の都道府県に委託するべきものなのだから、大都市経営に必要な事業を広域自治体が決めるという考え方は補完性の原理に反することとなると考えられる。詳しくは後述する。

 以上のように、特別区制度には様々な問題があり、特別区制度が必要である理由も見出せない。そのような中、地方分権の流れから、特別区だけでなく、東京都や、他の団体も特別区制度の改革を考えており、現在の特別区制度が、このまま継続するとは考えがたい。そこで、次の節では、特別区制度に代わる制度として提案されている制度を総括した上で、東京都の新たな制度として、どのような制度が相応しいかを考察することとする。

第1章 東京都特別区制度改革 第3節 新たな都区制度の提案 第1項 東京・6特別市+自主区構想

2008年02月24日 | 論文:世田谷地域をより良い街にする方法
 東京・6特別市+自主区構想は、平成11年6月に財団法人 森記念財団が提唱したもので、特別区を6つの地域に統廃合して特別市を創設し、同時に、特別市の中に自主区を創設して、住民が参加し声を反映する仕組みを補完しようという構想である(以下、特別市構想とする)。
 特別市構想では、まず、東京都民のライフスタイルの変化に注目する。すなわち、東京都民は「いえ」に住むのではなく、「まち」に住むという感覚で生活圏は拡大・変化してきているのであるから、生活者の視点にあった生活都市を作る必要があると考える。そうしないと、まちづくりと言っても、住民の生活実感から離れたまちづくりとなってしまい、まちづくりに参加する人が増えることはないとする。
 そこで、特例市構想では、住民の生活圏を次の3つに分類する。
すなわち、個人の居住地や就業地など市民生活の拠点となる生活拠点地区(市民が自分の日常活動の中で認識している町レベル)、個人の居住から就労までを含めた日常生活が営まれている行動範囲全体都市レベルである生活行動圏(生活拠点地区とそれらを結ぶネットワークを全て内包する範囲)及び日常的行動範囲ではないが生活上の結びつきが強い範囲である生活連携圏(広域圏レベル、空港、高速道路、廃棄物処理施設、水源など)の3つである。そして、このように分類した地域をそれぞれ、生活拠点区では市民による身近なまちづくり計画提案と地区正接の運営管理を目指す自主区に、生活行動圏は市民の日常活動を支える都市経営母体としての特別市に、生活連携圏は都市圏内や周辺都市との協議調整を行う広域組織に委ねることを提唱している。

(1)特別市構想における特別市の規模そして、特別市構想では、特別市の規模の範囲について、23市案、1市案、6特別市案を挙げて以下のように検討している。
① 23市案
 まず、特別区をそのまま市として独立させる23市案についてであるが、特別市構想では、現在の行政区域のままで23の都市経営母体とする案は、区行政の歴史的継続性というメリットはあるが、
(イ) 各特別区の財政格差が大きい。
 東京都は、都心区のように人口は少ないが、企業が多数立地している特別区と住宅を中心とした郊外の特別区(特に墨田区より東側の区)とでは歳出格差が大きい。                          
 そこで、現在では、都区財政調整制度によって、この格差を是正しているが、この財政調整が各特別区の東京都に対する依存体質を生む原因にもなってしまっているとも考えられる。従って、各自治体が自立して活動するためにも、特別市は、財政的に独立している必要があり、特別区間格差を解消するには居住地から就業地までを含む領域を合併して、最初から特別市間の格差が存在しないようにすることが望ましい。
(ロ) 生活行動圏と行政区域の不一致の度合いが高く、むしろ独立性が強まる分、不一致が表面化する恐れがある。1995年国勢調査報告を基に森財団が作成した表によると、自市内への15歳以上の通勤通学率が30%程度しかない特別区も存在しており、特別市構想では、このような不一致を放置すると、まちづくりに住民参加が期待できないとしている。
(ハ)広域的な街づくりを実施するとき、23区域のままでは調整するべき主体数が多く、調整に時間がかかる、として否定的な見解を取っている。

② 特別区を一つの市とする案
 特別区地域全域を都市経営母体とする戦前の東京市復活案は、東京と言う大都市の一体性を保つ上で最適のように思われる。しかし、現在の特別区地域の居住者は約800万人存在し、その住民像や生活行動圏、要望が類似する幾つかの区域からなっているとみなせる。そうした差異を軽視して、一つの市にすれば、市と地域・地区の物理的・心理的距離が大きくなり、地域・地区に対するきめの細かい対応が困難となるであろうとして、否定的な見解を取っている。

③ 6特別市案
 そこで、特別市構想が提唱するのは、23市案と1市案の欠点をなるべく解消するために、各特別区を統合して6つの市にするという案である。特別区における現在の日常生活範囲は、就業地や広域商店街の位置などに影響されており、鉄道を中心に展開されている。そこで、生活行動圏を沿線別に想定して統合を考え、業務中心地である都心・副都心から、各鉄道沿線別に区分する。このとき、千代田区、中央区は、財政格差の低減を図るため、東側の区と統合し、
千代田市:千代田区、文京区、台東区、荒川区、北区、足立区の範囲
城東市:中央区、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区及び臨海副都心の範囲
城南市:港区、品川区、大田区(臨海副都心を除く)の範囲
渋谷市:渋谷区、目黒区、世田谷区の範囲
新宿市:新宿区、中野区、杉並区の範囲
池袋市:豊島区、板橋区、練馬区の範囲 としている。

 この統合により、自市内通勤通学率は最低の特別市(他市依存率が高い)でも50%各市財政の歳入歳出比は、最低の特別市(池袋市=豊島区+板橋区+練馬区)でも、0.93となるので、各特別市は独立性を維持して活動ができるために、6特別市が望ましいとしている。

(2)特別市の呼称と役割
 特別市という呼称は、政令指定都市が出来る以前に大都市(東京を除く、大阪、名古屋、横浜など)を対象にしていたもののことである。特別区から特別市へ名称が変化した方が市民にとって感情的に受け入れやすいと考え、実質上の権限は政令指定都市でも、特別市構想では、特別市という呼称を用いることを提唱している。
そして、特別市構想では、特別市が、市民の生活行動圏とできるだけ一致する範囲での基礎自治体であるがゆえに、行政サービス対象者が現在より明確となり、円滑な都市運営をはかることができるようになるとしている。その役割をまとめると
① 効率的な行政運営、安定した都市計画
② 市民参加システム運営による「まちづくり」への市民要望の反映―インターネットなどを利用し、生活都市計画に対する意見について行政域を越えて公聴―生活都市計画のうち、地域密着型計画に関して計画提案権を後述する自主区へ委譲
③ 重点改善地区の整備や生活的都市間競争への対応など、戦略的・政策的都市づくり
④ 市民の生活行動圏における生活基盤施設の整備・管理
⑤ 周辺都市との協議調整に基づく生活連携圏の広域サービス基盤施設の整備・管理
となるとしている。

(3)自主区の創設
 特別区を統合して、特別市を創設した場合、そのままでは、市民と行政の距離が遠くなってしまう。そこで、これまでの特別区より大きな特別市においては、市民と行政の距離をより近いものとするために、新たな組織を設ける必要がある。そこで自分達が「住む」「働く」「遊ぶ」場である生活拠点地区に、現在の特別区の支所的役割を担うとともに、市民参加による「まちづくり」の計画提案と地区施設の管理運営方針の策定を行う「自主区」を創設することが必要であると特別市構想は提唱している。
 この自主区の規模は、生活拠点地区と一致することが適当であるとしている。具体的には、小学校2校、中学校1校の学区程度の範囲で、世田谷区の場合ならば、世田谷、松沢、千歳、駒沢、玉川、砧の5つに自主区を創設することが適当であるとしている。
 自主区の組織は、特別区の行政下部組織としての「自主区事務局」と市民参加による計画提案・運営方針策定組織である「まちづくり会議」の2つにより構成する。これにより、自主区に関係する様々な立場の人々が計画提案・運営方針策定に参加できるような仕組みとすることを提唱している。
 この「まちづくり会議」は、居住者やその自主区内で働く従事者や商店経営者など、様々な生活者の立場を代表する人(町会、商工会など既存の地元組織から推薦してもらうことも考えられる)、自主区内で活動するNPO、その自主区内に住んでいなくてもまちづくりに深く係わる土地所有者などの代表者によってまちづくり会議を設立し、そこで市民の意見をまとめ、街づくりの専門家のアドバイスを考慮して、その自主区の街づくり計画案を作成する。なお、計画案の作成費用は都市経営計画母体である特別市によって賄われるものとしている。
 これに対し、自主区事務局(特別市の行政下部組織)は、特別市の職員により構成される。現在の各区の支所、政令指定都市の行政区に相当する役割、例えば各種証明書の発行や生活に関連した細々とした問題の相談を引き受けることとしている。この自主区事務局と今までの支所と自主区事務局との最大の違いは、まちづくりをコーディネートするまちづくりコーチがいて、
① まちづくり会議の支援(組織作り、計画案づくりの支援)
② 特別市とまちづくり会議の間を取り持つ連絡役
③ 特別市が確定したまちづくり計画及び、自主区の運営方針に従った各種事務など
を実施することとしている。

このまちづくり計画提案のメリットは
① 市民ニーズを的確に反映(多元的な価値観への対処も含む)したまちづくりが可能
② 市民間合意形成の促進と施策の円滑化
③ 自主区市民の自主区環境に対する関心を高め、自主的な管理改善運動を誘引する
④ 計画の実現性を制度上担保する
とされている。

(4)特別市構想の問題点
 特別市構想は、実現が成功し、うまく運営することができれば効率性、民主制両面でメリットは大きいが、プロセスの民主制と実現性に問題があると考えられる。

① プロセスの民主的問題点
 特別市構想では、特別区を事前に6つの特別市に統合し、財政力と市民の生活行動圏を一致させようとするものである。しかし、住民の意思に関係なく、特別区を統廃合することは、明らかに民主的に問題がある。たとえ、財政格差が大きくとも、その差を受け入れるか、自分の区を捨てて他の区と統合するかは、住民が決定するべきことであり、他のものが勝手に決定するべきことではない。統廃合を決定するか否かは住民にとって大きな関心事となりうるし、それによって住民のまちづくり参加が活発になる可能性もあるのだから、その機会を逃すべきではないだろう。
 また、生活活動圏は、ライフスタイルの変化により大きく変化する可能性があるものであり、それに合わせた行政区分に変更しても、ライフスタイルの変化に応じて、頻繁に変更しなければならなくなる可能性もある。加えて、自区内通勤通学率は、15歳以上の人数を示しているが、15歳以下の子ども、働いていない専業主婦及び高齢者の数字が含まれていないため、正確な数字が出ているとは言いがたい。従って、これも、住民の意見を反映させてから決定するべきであると考えられる。

② 実現性の問題点
 もし本当に「まちづくり会議」が創設され、機能するのであれば、地方分権の骨子たる補完性の原理とNPM改革の双方を満たすことができるであろう。しかし、その実現性には大きな疑問がある。現在は、区政に興味を持たない住民が増え、区議会選挙の投票率は40%を切る区も多く、例えば世田谷区では町会等に参加する人数も50%を切っている地域が半分以上存在する。特別市構想では、住民の生活実感と一致するまちづくりを行えば、住民の参加が期待できるとしているが、その論拠は乏しい。むしろ、これまで、地方分権が進まず、権限・財源不足から、身近な基礎自治体であるはずの特別区が問題を迅速に解決できず、特別区が国や東京都の下請け的存在に甘んじてきたから、国や東京都に関心を持っても、自分の住む特別区に関心がもたれなかったのではないかと考えられる。そのような特別区に不信感がある中で、住民が自主的に集まり、自主区の将来を決める「まちづくり会議」に参加する可能性は非常に低くなると考えられる。その結果、機能しない「まちづくり会議」が各地に作られることになるであろう。
 従って、自主区実現の為には、まず現在の行政区分の中で、「まちづくり会議」に類似する組織を作り、権限委譲等を試した上で「まちづくり会議」作成を模索し、まずは住民との間に信頼醸成を行う必要がある。現在ある区議会、区長を廃止して特別市を作り、機能する保障もない「まちづくり会議」を名目上だけ作り上げても、住民の政治への参加の機会は今以上に失われる危険が高いと考えられるからである。
 加えて、特別市構想には、実現を担う主体がいないという欠点もある。すなわち、特別市を実現したところで、利益を受ける主体が明確でないために、誰も特別市構想を積極的実現しようとはしないのである。
 つまり、特別市構想では、特別区の統合を提唱しているために各特別区の区議会議員、区長などは統合により現在の権限が脅かされる可能性があるために、積極的に特別市を支持するものは少ないだろう。実際に、世田谷区議会では、特別市構想が提唱された際、世田谷区が目黒区と渋谷区と統合されて渋谷市になるのは反対する、世田谷区だけで人口80万人を超えるのだから、統合などしないで政令指定都市を目指そうという旨の意見が出されている。
 次に、東京都側だが、東京都は特別市の創設により、現在の権限、予算の多くを剥奪されるのであるから、特別市構想を実現する主体とはなりえないであろう。ただし、特別区を統合するという構想だけは、後述する東京都の大都市制度改革案の中に取り入れられ、検討課題とされている。
 また、特別市構想によって意見を反映できるようになるとされている住民も、そもそも住民の意見を反映する自主区も「まちづくり会議」が未だ存在しないために、利益が実感できず、特別市構想実現を担う主体とはなりにくだろう。
 以上のことから、特別市構想は机上の空論に終わってしまっていると言えるであろう。

第1章 第3説 第2項 東京DC特区構想

2008年02月24日 | 論文:世田谷地域をより良い街にする方法
 東京DC特区構想は、2007年4月政府の地方分権改革推進委員、猪瀬直樹氏より提案された構想である。

(1)東京DC特区構想の概要
 東京都は日本の代表で首都だから超一流企業が集中する。中央区、港区、千代田区の3区のあげる税収は莫大である。法人住民税、法人事業税、固定資産税のほか、勤め人の一流企業のサラリーマンが多く、個人の住民税も多い。だから、東京の努力の有無にかかわらず、地方自治体の中で東京が独り勝ちし、税収の偏在、格差を生んでいる。
 東京の年間予算は総額13兆円。韓国、オーストラリアなどの国家予算並みである。東京への税収の偏在は国家レベルで是正しなければならない時期に来ている。
 東京駅を中心に新宿駅までの約5kmを半径とした円の中を首都機能に特化した国直轄の東京DC特区にして「大政奉還」する。円の中には、中央省庁のある霞ヶ関、オフィス街の丸の内、日銀のある日本橋、六本木、お台場などが含まれる。DC特区内の税収は国直轄で、財政の苦しい地方自治体に回し、地域間格差を是正しようとしている。
 東京DC特区の範囲は、千代田区、中央区、港区、品川区、新宿区、江東区など、おおむね12区にわたり、人口は約300万人となる。猪瀬氏の計算によると、特区内の地方税収は3.3兆円(2004年度決算ベース)で、地方税収全体の約1割を占める。特に、法人2税は1.5兆円で、全自治体の2割を超えるとしている。

(2)東京DC特区構想の問題点
 東京DC特区構想は、補完性の原理からもNPM改革の面からも問題がある。東京DC特区構想は、住民の意思を全く無視し、国家の為に住民を犠牲にする面を持つので、補完性の原理に反する案であると考えられる。また、現実に、300万もの人口をどのように国家が直轄するのかも全く考えられていない点にも大きな問題がある。国の出先機関として、廃止された区役所がその役割を担うとしても、そのための予算がどこから出るかも不明確であり、区役所を完全に廃止して新たな機関を創設するとしても、そのための人員、予算をどうするかは不明確のままである。何より、300万もの人口を国家が一括で対応しようとするならば、NPM改革の観点から、効率的な行政サービスが提供されるとも考えられず、地域住民にとってメリットがあるとは思われない。
また、地方に東京都からあがった税収をばら撒いたところで、努力しないで地方政府の収入が増えるだけでは、今までの地方交付税の配分が増えるだけであって、地方政府が良くなることとは結びついていないと考えられる。

第1章 第3節 第3項 東京の大都市制度改革案

2008年02月24日 | 論文:世田谷地域をより良い街にする方法
 東京の大都市制度改革案は、東京都自治制度懇談会『東京自治制度懇談会 議論のまとめ』(平成18年11月)において提唱された都区制度の改革案である(以下、大都市制度改革案とする)。この考え方は、『東京自治制度懇談会 議論の整理』(平成19年11月)においても提唱されており、大都市制度改革案では、これまでの均衡ある発展という概念を捨て、大都市が経済力の源泉となって、周辺地域を牽引しながら、日本全体を発展させていくべきであるという考え方に立ち、大都市行政を実施するために必要な権限・財源は東京都が確保し、道州制を視野に入れながら、国と地方の関係を再構築しようと提唱している。

(1)大都市経営の範囲
 大都市制度改革案では、大都市経営の範囲は、高度集積連たん区域(Bの区域)にすべきとしている。

Aライン(生活圏・経済圏)通勤・通学の範囲を包含(半径40km、都県境を越え、横浜市、千葉市周辺を含む)
Bライン(高度集積連たん区域)人や企業が集積し、市街地が連たん(半径15km、特別区及び一部周辺市を含む)
Cライン(業務機能特化区域)昼間人口が高く、企業が高度に集積(半径5km、都心8区)
Dライン(コア)居住人口が周辺と比較して少なく、昼間人口や企業の集積が突出(半径3km、都心3区)

    
 この地域は、昼夜間人口が共に多く、DID(人口集中地区、業務機能、住機能が連たんしている地域)が区域内全てで連たんしている地域である。ここでは、一定程度の企業の集積があり、かつ、住宅が密集して広がっており、業務機能と住機能が一体となって存在している。また、流入人口はあるものの、その区域内の居住人口の大部分が地域内で活動している。東京圏では、特別区及び一部周辺市を含む半径15kmの範囲であるとしている。

(2)大都市制度改革案における権限配分
 この大都市制度改革案では、東京都が特別区地域における大都市経営を担うべきであり、大都市経営のために必要な事務に、第一義的に取り組むことが必要であるとしている。すなわち、東京都は、府県事務、市町村事務という枠組みにとらわれることなく、大都市経営に必要な事務か否かという観点から、都の事務を再構築することが必要であるとしているのである。その際、国が担っている事務についても、大都市経営を行う上で都が担った方が効率的あるいはサービス向上につながる事務は、都へ移管を推進するよう求めることも重要であるとしている。また、いわゆる任意共管事務の役割についても、大都市経営に必要な事務か否かを判断基準とし、具体的な基準づくりに向けて検討を進めることが望ましいとしている。加えて、道州制を導入した場合、首都圏の道州は、少なくとも一都三県を包含する範囲(対象はAライン全域)が必要であるとして、大都市経営のための東京都の権限の拡大を提唱している。
 その一方で、東京都は大都市経営に必要な事務及び府県の立場で行う事務以外は、地方自治法の改正も視野に入れつつ、できる限り特別区に移管すべきとしている。つまり、特別区は、地域における総合的な行政主体としての機能を十分に果たすため、より広範に地域の事務を担うことが必要であるとしているのである。この大都市制度改革案では、特別区は、大都市地域における基礎自治体であり、高度集積連たん区域の特徴を活かした効率的・効果的な地域行政を展開することが望まれるとしているが、まず大都市経営に必要な範囲を決め、その残りの権限を特別区に配分するという点に特徴がある。

 また、大都市制度改革案では、特別区の区域について
① 特別区民の生活圏の拡大に対応して、行政サービスの受益と負担をできる限り一致させるためには、現行の区域では限界である。
② 特別区がより広範に地域の事務を担う場合、専門性や需要を確保する必要性から、規模拡大が必要である。
③ 今後見込まれる膨大な大都市の行政需要に対応していくため、より一層効率的で効果的な行政運営の推進を図る上で、区域の再編は重要な検討課題である。
④ 特別区の区域における税源の偏在が拡大する中で、区域の再編により、税源の均衡化を図ることも検討するべきである。
として、東京都は、特別区の合併構想を策定するべきであるとしている。


(3)大都市制度改革案の問題点
 大都市制度改革案は、改革案の前提である「大都市が経済力の源泉となって、周辺地域を牽引しながら、日本全体を発展させていくべき」という考え方に問題があり、更に補完性の原理からもNPM改革の観点からも問題がある。

① 大都市が日本全体を発展させていくという考え方は、東京一極集中を是認する考え方であり、地方経済の疲弊が叫ばれ、地方分権が推奨される現在の状況には適合しない考え方である。そもそも、EU諸国もアメリカも決して人口集中による大都市によって繁栄した訳ではないのだから、経済のグローバル化へ対応するために東京に一極集中し日本経済を牽引しなければならないという考え方には根拠が欠けると思われる。また、東京都の道州制の議論は、国の権限を削り、東京都に権限、財源を分配するべきと言う考え方が中心となっているが、道州制の議論の中には、いくつもの州都を作り、地方を活性化させようという考え方もあるのだから、東京都への一極集中が継続することを前提として大都市制度を作ることは他の地方からの反対を受けやすく、実現性からもかなり問題のある提案であると思われる。
なお、仮に、大都市制度改革案を導入し、東京一極集中により日本を牽引しようと決めたならば、その場合、地方経済の疲弊に対応するため、東京DC特区構想のように、地方に東京都の税収を分配する必要が出てくると思われる。しかし、東京都は人口一人当たりの財源額は全国平均と比較しても大きくないと、税収の分配に難色を示している。このような状況での大都市制度改革案の導入は、東京都の一人勝ちを助長しても、日本を牽引していくことにはならないと考えられる。
 更に、東京一極集中を推進していった場合に問題となるのは大地震などの震災、大規模なテロ及び有事の際に対する対応である。大都市制度改革案では、東京都が大都市経営を担い、人口集中のメリットを活かし、デメリットを最低限に抑えていくべきであるとしている。しかし、一極集中していた場合に大震災や大規模テロに対応する大規模な工事を何十年に亘り行うよりも、一極集中を解消して、リスクを分散していた方が、全体の危険性が低くなることも明らかであろう。

② 補完性の原理から考えると、一見、基礎自治体である特別区に多くの権限を移譲するのであるから、補完性の原理に適合しているように見える。しかし、先に「大都市事務」という範囲を、地域住民の意見に関係なく、東京都や特別区の政府関係者が決め、残った権限を市町村、特別区に配分するのでは、住民の意思を尊重しているとは言えないであろう。補完性の原理に基づけば、まず基礎的自治体の住民がより広域の自治体に任せるべきであると判断できるということが重要なのであって、東京都が住民の意向に関係なく「大都市事務」の範囲を決めることは、地域の特性を活かすことや住民参加の意向を阻害することにもなりかねないであろう。

③ NPM改革の観点から考えると、東京都が大都市経営のための予算を持ち続けるならば問題があると考えられる。すなわち、NPM改革には、中枢と実施部門の分離という考え方がある。中枢部門と実施部門を分離することによって、実施を民間に委ねる等、実施面の効率化を考えて、その結果を評価し、また中枢部門の企画を単体で評価出来るようにするのがNPM改革の考え方である。この考え方に基づけば、東京都が大都市経営を意識して企画をするまでならば良いが、そのための予算を持ち、決定権を持つのでは、NPM改革の考え方とは合致しないといえるだろう。従って、建設することで騒音、悪臭等の明らかな外部不経済が生じ、建設される地域にメリットが生じない空港、廃棄物処理施設、水源の確保のための予算は東京都に残すとしても、それ以外の部分の予算は基礎自治体に移譲し、道路の建設、共同溝の構築などは企画立案を東京都が大都市経営の観点から行ったとしても、実施は各自治体の判断で予算を使うようにしなければNPM改革の考え方に適合しないと考えられる。

④ なお、大都市制度改革案で提唱されている特別区区域の再編についてであるが、特別市構想の場合と同様に住民の意思を確認しないという民主的プロセスと区域の再編に積極的な主体がいないので実現性に問題があると考えられる。更に、特別区は他の基礎自治体と比較して、人口規模なら十分に大きいにも拘らず、専門性や需要を確保する必要性から、規模拡大が必要という考え方には妥当性がない。また、より一層効率的で効果的な行政運営の推進を図る上で、区域の再編は重要という考え方も、規模の経済以外に規模の拡大が効率化に繋がるなどという根拠は存在しないのだから、現場に権限を移譲してきめ細かなサービスを行っていくというNPM改革の考え方からみても根拠のない主張であると考えられる。

第1章 第3節 第4項 基礎自治体連合構想

2008年02月24日 | 論文:世田谷地域をより良い街にする方法
 基礎自治体連合構想は、平成19年12月に特別区制度調査会が提唱したもので、「都の区」制度を廃止する代わりに基礎自治体連合を創設し、「対等・協力」の相互関係を構築しながら、行政需要や財源の偏在を是正しようという構想である。

(1) 基礎自治体連合の仕組み
 基礎自治体連合構想では、都の区を廃止して、特別区を「東京○○市」と呼び、基礎自治体連合はすべて「東京○○市」で構成することを提唱している。この基礎連合自治体は、特別区間で協力して対応するべき事務分野があるとして創設されるものである。また、民主主義的正当性を持たせるために法律上の根拠となる憲章を住民の承認を得て作成することを決めている。更に、特別区が完全に独立してしまうと地方交付金の交付団体となる特別区が11にものぼることが予測されるために、基礎自治体連合内で財政不均衡を是正することとしている。詳しい内容は以下のとおり。

① 基礎自治体連合は、事務配分、徴税、財政調整など具体的な「対等・協力」関係の内容を憲章に定める。
② 憲章は、基礎自治体(特別区=「東京○○市」)間で協議し、各議会の議決を経て、住民投票による承認を得て成立するとする。
③ 議会を置き、議員は「東京○○市」長が兼ねる。
④ 議会は条例制定権、予算議決権を有する。
⑤ 連合の長は「基礎自治体連合」の議員の中から選任する。
⑥ 必要に応じ外部の意見を聞くための第三者機関を置くことができる。
⑦ 東京都から引き継ぐ事務の内、「対等・協力」関係で処理する必要がある事務を処理する。
⑧ 「東京○○市」間の水平的な財政調整事務を処理する。共有税方式 (「基礎自治体連合」は憲章に定めるところにより、「基礎自治体連合」の条例に基づき、税制調整に必要な財源として一定の税目の一部または全部を「東京○○市」と共同徴収して、その税を「東京○○市」の共有税とする方式のこと)または分賦金方式(「基礎自治体連合」が、憲章に定めるところにより、「基礎自治体連合」の条例および予算に基づき、財政調整に必要な財源を各「東京○○市」に請求(賦課)する方式のこと) が考えられる。
⑨ 住民参加の仕組みをもつ。
⑩ 連合の議会における会議及び会議録の公開や公聴会・参考人制度を活用する。
⑪ 基礎自治体連合の事務的経費は、「東京○○市」が負担する。

     
(2) 基礎自治体連合構想の問題点
 基礎自治体連合構想は、憲章の策定や「東京○○市長」を構成員とする議会の創設及び住民参加の仕組みを作ることにより、民主主義的な正統性は保障されるように見える。また、基礎自治体連合内で財政不均衡是正の仕組みを設けることにより、地方交付金の交付団体となる自治体が生まれないので、財政的に弱い特別区や、地方交付金を出したくない総務省や国の同意も得やすいという利点もある。
 しかし、基礎自治体連合構想は、その実現性の点で問題があると考えられる。

① 事務配分の決定
 基礎自治体連合構想では、事務配分を住民の意向も確認しながら、事務配分を決定するとしている。しかし、その事務配分をどのように決定できるのかに大きな疑問がある。平成12年度の改革でも、東京都と特別区の事務配分を明確にするために、東京都と特別区は協議すると明文で決められているのである。それにもかかわらず、平成20年の現在においても、東京都と特別区の役割分担や説明責任は不明確なままとなっている。そのような状態で、基礎自治体連合を創設しようとした場合、特に基礎自治体連合に政令指定都市並みの権限を与えようと考えるならば、東京都からかなりの部分の権限を奪うことになることから、東京都からの強い抵抗を受けることが予測される。

② 実現にかかる膨大な時間
 前記のように、事務配分決定以外にも、基礎自治体連合の創設には、なお、膨大な時間がかかると思われる。すなわち、基礎自治体連合憲章は誰がどのように、どんな内容で創設するのか、財政調整をどのように行うのか等、決定に時間がかかる事項が非常に多い。特に、憲章の策定などは、効率性を重視して、特別区制度調査会などで草案を作ろうとすれば、住民の意見に関係のない案が作られてしまう危険があるが、各特別区で住民の意向を確認していけば、23もある主体の意見が簡単にまとまるとは思われない。
 
③ 新たな行政の二重性が生まれる危険性
  基礎自治体連合の事務権限が東京都及び「東京○○市」と重なり、行政の階層がより一層複雑になってしまう危険性がある。これは、前記の事務配分の問題でも触れたが、これらの事務配分、役割分担を明確に規定しきれなかった場合、各自団体の権限の範囲が複雑に絡み合い、非常に効率の悪い仕組みが構築されてしまう危険がある。また、特別区間の「行政の一体性」から脱却すべしとしながらも、基礎自治体連合の中で、特定分野の一体性を保とうとする点に、論理的一貫性が欠けていると考えられる。

④ 住民の賛同が得られにくい
 事務配分の決定、憲章や財政調整の仕組みなど、基礎自治体連合構想は、役所間の調整事項が非常に多い。この創設に住民参加を推進するべきであるという意見が出されているが、住民から見れば、住民の具体的なメリットはわかりにくく、役所内の権限争いにしか見えない部分も多い。このため、基礎自治体連合構想の中でも、住民が東京都への依存心を払拭し、23区間で培ってきた「互譲・協調」の精神と、自主・自立への確固たる決意が強く求められるとして、住民に呼びかけを行う形をとっている。このことは、とりもなおさず、基礎自治体連合構想が、それだけでは住民の賛同を得にくいものであることを策定者達自らが認めているものであると考えられる。

第1章 第3節 第5項 特別区完全独立案

2008年02月24日 | 論文:世田谷地域をより良い街にする方法
(1)特別区完全独立実施すべき理由
 以上のように様々な立場からの特別区制度改革案を検証してきたが、第2節第3項で述べたように、東京都だけを特別区制度の下に運営しなければならない、合理的な理由などないと考えられる。今まで、特別区制度が継続してきたのは、
① かつて特別区地域には東京市が存在し一体的な行政を行っていたという伝統
② 都区財政調整制度により、特別区から東京都に税収の一部が集められ、税収の低い特別区に予算が振り分けられていたので、特別区から預けられた税収により東京都の予算が増え、税収の低い特別区には東京都から予算が振り分けられた等、税収の高い一部の地域以外が、財政的な恩恵を被っていたという事実
③ 東京特別区地域は、東京都が一体的な行政水準を確保するべきであり、特別区に行政を任せることはできないという中央集権的な考え方

などが理由であったと考えられる。

 しかし、①の理由は単なる伝統主義で合理的な理由など存在せず、③の理由は中央政府の方が行政水準は高いという思い込みから来るもので、現場に権限を移譲し多様な行政ニーズに応えようという分権時代の考え方に適合しない。唯一残る理由が②の財政的な理由で、この問題を解決するために、様々な特別区制度改革案が出されているというのが現状であろう。そこで、都区財政調整制度の代わりに、特別区をいくつかに統合し、財政状況の不均衡をなくすというのが、特別市構想及び大都市制度改革案の考え方であり、基礎自治体を連合させて、その中で財政不均衡を是正しようというのが基礎自治体連合構想の考え方である。
 だが、特別区内の財政状況の不均衡を特別区の再編によって是正しようという考え方は、住民の意思を無視した補完性原理に反する考え方である。すなわち、財政不均衡をどのように正すかは、各特別区の自主的な判断に委ねられるべきなのであるから、特別区の統合を住民の意思に関係なく国や東京都が決定することは問題がある。つまり、東京都や国家が推進する特別区の合併は、国家のために個人があるという国家主義的な考え方から来る行動であり、個人の尊厳を守るという補完性の原理並びに地方自治の本旨である住民自治の考え方に適合しないのである。
 また、NPM改革の立場から言えば、各基礎自治体が、なるべく安い予算で、なるべく住民に納得のいく行政サービスを提供できるよう互いに切磋琢磨することが望ましいのであって、国家や広域自治体が財政の不均衡を是正することは望ましいとは考えられない。どんなに努力しても解消できないことが明白な差がある場合には、地方交付税などで、その差を解消することが公平性の観点から必要であると考えられるが、非常に近い距離に存在する各特別区間の差が、努力で解消できないほど大きなものであるとは考えがたい。
 更に、基礎自治体連合構想に関しては、各自治体が平等な関係を築くのは良いとしても、前記の通り、住民の賛同を得にくく、実現にも膨大な時間が掛かることとなる点に大きな問題がある。
 従って、特別区を全て普通の市として、一旦は完全に東京都から独立させ、その後、合併を行うのかEUのような連合を創設するかは各市の判断に任せることが適当であると考える。この際、東京都は特別区に対し、一般市町村が本来持っている全ての権限を返還し、都区財政調整制度も廃止することが必要であろう。

(2)特別区を完全独立させた場合の問題点とその対応
 特別区を完全に東京都から独立した場合、大都市全体の行政効率が悪くなってしまう危険があるという点と財政の不均衡により特別区地域間格差が生じるという問題が指摘されている。

① 生じる可能性のある大都市行政全体の不効率
 昭和56年特別区政調査会答申【「特例」市の構想について】では、特別区が完全に独立した場合の消防、上水道、下水道に関する不効率が発生する可能性が指摘されている。

(イ)消防
 東京消防庁は、特別区の存する区域は、住宅や事業所が密集して広大な市街地を構成しており、災害が発生した場合においては、被害が都市全域に広がる危険があるので、災害発生時には、一元的な命令・情報系等のもとで迅速かつ適切な対応がなされなければならない。各市に分割した場合には、総合的な仕組みや体制、高度な技術を維持することが難しい(東京消防庁「消防行政の概要 平成17年」)と述べ、同時に消防庁は、消防の広域化を推進しており、小規模本部では人員・機材不足が問題となるとして、平成18年消防審議会では管轄人口30万人を目指したいと述べている。

 このため、東京消防庁に確認したところ、消防の広域化を進めている現在、わざわざ消防の管轄を分割するような行動には賛同できない旨の回答があった。

(ロ)上水道
 特別区の区域において東京都は、これまでに水源の確保や供給施設のために膨大な資本を投入し、一貫した給水体制を組み立ててきている。このような給水体制を「特例」市個々の事業として分割して、管理することは能率の面から妥当とは言えない。東京大都市に敷設されている配水管、給水管、給水施設等の物理的な分離が難しい。(東京水道局「事業概要 平成17年」)としている。

(ハ)下水道
 下水道事業の処理体制は、地勢にしたがって一貫した施設の配置によって組み立てられてきている。このことから、下水道事業を「特例」市ごとに分割して管理することは、技術的に困難である。また、下水道事業は、広域的な観点から水質保全を図る必要があり、資本の効率性と利用者の負担の均衡など、経済的面からみても、東京において一元的に管理する方が効率的であり、東京大都市に敷設されている下水管、処理施設等の物理的な分離が難しい(東京下水道局「事業概要 平成17年」)、としている。

② 大都市行政の不効率の指摘に対する対応
 このように、消防、上下水道において大都市行政の効率性と分割した場合の不効率性が指摘されているが、これらの指摘は決して厳密なものではなく、追加的予算がいくら掛かる等の計算は未だなされていない。

(イ)消防
 消防に関して、消防の広域化が必要であったとしても、それを選択するのは地域住民であるはずであって、住民の意思を無視して消防サービスを一元的に提供しなければいけない理由はないであろう。
 具体的には、東京都の三多摩地区の市町村では、東京消防庁と自由委託契約を結んで消防活動を委託しているという事実がある。それならば、特別区が独立した場合も、地域住民が、東京消防庁に三多摩地区と同様に委託するのか、消防団の活動を活発化するなどして、東京消防庁とは契約せずに、独自消防の道を模索するかを選択するべきであろう。

(ロ)上水道
 上水道に関しては、水源確保ということもあり、ほとんどの市で都道府県が係わっており、都道府県が水を卸し、市がその水を供給するという形を採る場合が多い。つまり、事業主体の権限の所在は市であっても、事業主体の切り分けは可能となっているのだから、東京都だけが切り分けられないということはないはずである。東京都水道局に確認したところ、各特別区が分離して、新たに配管、浄水場を作ると非効率であるということを述べただけであって、現在の水道局を分離した場合に追加的予算がいくら掛かるかという試算まではしていない。

(ハ)下水道
 下水道に関しては各市でやるのが普通であるが、この分離をするか否かは住民が判断するべきことであると考えられる。下水道も分離した場合の試算などは一切しておらず、配管等を新たにやり直したら、予算が追加的に掛かると言っているに過ぎない。

 つまり、消防でも、上下水道でも、必要があれば、必要な部分で、各特別区は委託契約を結ぶことができるのであり、契約相手をうまく選び、関係団体と協定を結べば、東京都一体で行うよりも、より効率的、民主的な区分けが可能となると考えられる。

 なお、特別区制度調査会では、消防、上下水道の事務を移管した場合、特別区の職員は現在の約36.5%増、歳出規模も14.6%増加するとしているが、権限を東京都から特別区に移したことによって不効率が発生するとは限らないという考え方もある。具体的に、清掃事務を例に挙げると、清掃事務では移管前(平成11年)の8790人からアウトソーシングを進め、スリム化を進めることで、移管後(平成15年)8408人へと382人職員が減少、平成18年に出した3ヵ年経営改革プランでは本庁職員8%、清掃工場職員の9%の削減を目標としているが、事業移管後は、各特別区の独自の事業展開によりサービスは向上しているという事実がある。

 このように東京都から特別区に事務を移管した場合でも、予算の削減、サービスの向上が期待できる場合もあるのであるから、消防、上下水道の職員、予算を移管し、独自方式を模索するべきであると考えられる。

③ 財政不均衡が生じた場合に生じる可能性のある問題点と対応
 特別区を完全に分離し、都区財政調整制度を廃止し、東京都から特別区に権限移譲を行うと、特別区地域間に格差が広がることを心配する意見が存在する。すなわち、都心の税収の高い特別区地域だけに公共工事や高い行政サービスが提供され、税収の低い地域は地方交付金交付団体となり、国に負担を掛けた上、東京の他の富裕地区から取り残されるのではないかという不安である。
しかし、特別区地域間の格差は、特別区地域の合併や税収の多い区域が税収の少ない区域で道路や鉄道整備等の公共工事を行うことである程度は解消されると考えられる。
 なぜなら、税収の多い区域は、昼間人口が多い地域であるために、自分の区域に通勤する人々の交通等を確保しなければ、その地域の長期的発展は期待できないからである。
 すなわち、例えば千代田地域が高い税収を自分の地域のみに投資し、夜間人口のためだけの施設を建設し続けたとしても、同地域の発展は、そこにある企業及び昼間人口の状況に掛かっているのであるから、昼間人口の意向を無視した公共工事は、昼間人口の流入を頭打ちにして、千代田地域の発展は打ち止めとなるであろう。それは、千代田地域でオフィス環境を整える努力のみをした場合も同様で、オフィス環境が充実しても、同地域への流入が困難であれば、同地域の今以上の発展はないであろう。また、同地域が減税等を行い住民の増加を図った場合、本当に住民の増加があるならば、減税しても、流入人口分の税収の増加が予測されるのであるから、税収はトータルでは減ることがなく、区域外の交通整備の予算は残されることになるであろう。
 従って、完全分割する場合でも、税収の多い区域が税収の少ない区域で道路整備等を行うための財政援助や共同工事ができる制度を整備し、広域自治体が明確な大都市経営の計画を提示することができれば、特別区地域間格差は、大きくならないと考えられる。