世田谷経営改革クラブ

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地方議会のあるべき姿とは

2008年05月26日 | 私の考え
開かれた議会を目指す会「公開シンポジウム」が平成20年5月17日に開催されたので出席してきました。概要は以下のとおり。

第1部 講演「議員報酬と地方議員・地方議会のあり方」小林弘和・専修大学法学部教授

 地方自治が日本では画一的に決められていて、小さな町も横浜市も全て同じ基準で行われている。そうなると、実際には大きな較差があるにも拘わらず、同じ基準で行っている。
かつては、公共サービスは家の外の問題でインフラ整備を行うことが中心だったが、現在では、公共サービスが介護等、家の中に入る直接的なものにかわってきている。市民も自分の意見を聞いて欲しいという人が増え、役所も市民の意見を聞くようになってきており、議会の役割が考え直されている。議員の中には、議会ではなく、市民活動のまとめ役として活動しているものも増えている。議会は、それぞれ地方の違いに合わせた形態であるべき。議会は自分のことを自分で決めていて、市民に決めさせていない。市民に議会のことを決めさせれば、市民も、もっと興味を持つはずであるのに。

第2部 パネルディスカッション
地方議員はプロかボランティアか?

福島県矢祭町では、議会議員報酬日当制を採用した。そのことに基づき議論がされました。

大沢ゆたか(立川市議会議員)
菊地清文(福島県矢祭町会議員)
福島浩彦(前我孫子市長)
吉川ひろし(千葉県議会議員、代表)
宇田川潔(鳥取県・江府町の財政を考える会)
小林教授

吉川:議会そのものが、制度疲労をおこしている。議会改革は議員が選ばれる制度も考えるべきであろう。矢祭のような小さな町は日当制の方向にしていくべきであろうと考える。
議員の仕事は、議会としての総意、議決権を持つことであろう。予算チェックや法律のチェックは外部の力を導入するべきではないか。その上で、議員報酬を考えるべきであろう。

福島:昨年の1月まで我孫子市長をやっていましたが、三期で卒業させてもらいました。
私は市民自治を中心に置き、直接民主制を土台、間接民主制を代替物として補完的にするべきと考えている。市民は直接参加したいと考えた市民の意見を議会や首長が取り入れることが大事であろう。ただし、直接参加した市民と市民全体の意見が異なる場合があるだろうから、首長や議会も市民全体の利益に役立つためにするべきであると、説明責任を果たす必要がある。これまで、市民参加を促進してきたのは、首長をはじめとする行政であるが、今後は議会にこそ市民が直接参加する必要がある。例えば、委員会の議決は議員がするとしても、議論には傍聴する市民が議論に参加できるようにするべきではないか。栗山町等などは、議会から市民に説明する制度を作り始めている。
 議員は、普通の市民がなれなければいけないと考える。議員になった後には、勉強して貰えなければならないが。その為には、行政がもっとわかりやすくしなければならない。条例案、予算案をもっとわかりやすくしなければならない。

市民自治と議会のあり方をまとめると
1. 市民自治の視点
◎ 市民自治(住民自治)の土台は直接民主制。現実的にすべて直接民主制でやるのは困難なので、間接民主制で代替しつつ、間接民主制と直接民主制を並立させる。
◎ 日常的な市民の直接参加が不可欠。参加市民長・議会との緊張関係があってこそ、長・議会は「全市民の利益」に立脚する⇔「首長の利益」「議会の利益」「役所の利益」
◎ セーフティーネットとして常設型の住民投票条例

2. どんな議会と議員であって欲しいか(基礎自治体を中心に)
素人かプロかというより、普通の市民が議員を勤めるのが本当の姿。
そのためには、行政(条例・予算など)を分かり易く変える必要がある。
固い政党政治(完全な政党系列化)ではなく、政党は政策を通して影響力を発揮する。
・ 政党は地域政策のシンクタンクとして機能
・ 議員は政党と多様な関係(公認・推薦・緩やかな連携)を結び、会派は政党横断も会派拘束はできるだけ避け、集団・系列化した意思による論争ではなく、議員一人ひとりの理性と良心に従った議論をする。

3. 議会の役割はなにか
2元代表制の自治体の議会に「与党」「野党」はない。従って「政党・与党協議」もない。
議会と首長がすべてオープンな場で議論することが大切。
個々の議員が執行部に要望し、それを受けた首長提案に賛否を表明するだけの議会or 政策や方針を議員同士が討論し、「議会としての意思」をまとめ自治体をリードする議会
* 後者には議員同士の自由討論が不可欠。後者になれば議会の力は高まる。
* 議会は決定者としての責任を市民に対して持つ

4. 求められる改革派議会
◎ 各党相乗り首長選挙
 議会の談合で首長をつくり、その首長と議会の談合で自治体を運営(擬似議院内閣制)→市民が首長を選ぶ権利(憲法上の権利)の形骸化、自治体運営から疎外される市民
◎ 改革派首長とは
 議会ではなく直接市民の支持を基盤にして(=市民から直接意見を聞き、直接説明責任を果たして)、時代に対応できなくなった行財政システムを思い切って改革する。
談合を求める議会からは「議会軽視」と批判される。
◎ 今、市民に基盤を持つ議会(市民から直接意見を聞き、直接説明責任を果たす議会)の登場が求められる。その時、はじめて主権在民の2元代表制が機能する。


小林:市民との関係について、日当制導入を求めた宇田川さんがいらっしゃっているので、説明をお願いします。

宇田川:今回の日当制導入を請求した経緯をお話します。私達の町は平成の大合併から外れ、過疎化が進む小さな町です。町の財政規模は総額約29億円です。町の財政健全化を求めて活動を行ってきた。

吉川:議員の仕事とは、そもそもどのようなものであるのか?費用対効果として。

菊地:市民を代表して表決するのが1つ、市民の声を反映することが1つ。市民をリードするのが1つ

大沢:市民の声を反映するのに、たいていの場合は、散々、自分で行政に要請してうまくいかない場合が多いので、それを工夫する必要がある。行政活動のチェックがもう1つ。国会や他の議員、官僚への陳情なども大事な活動(後期高齢者医療制度、障害者自立支援法等)

吉川:ハイデルベルグでは、議場さえなく、コスタリカでは市民が普通に参加することができる。

福島:私が言う市民とは利権を求める人も含めた全ての人達。議員の定数や報酬は、本来は市民が決定するべきものである。我孫子市の自治基本条例案では、必ず市民の声を反映しなければいけないとしたので、否決されてしまった。全て市民の見ている場所で議論をしようとしたので、否決されることも珍しくはないが。そこで、大沢さんに質問なんですが、市長は常勤なのに、議員は法的な位置付けでは非常勤特別職というのがプロとして活動するならおかしいのではないか?

大沢:議員は4年毎に選挙を受けるのであるから、不安定な仕事である。

吉川:確かに非常勤のままではおかしいが、現実を反映していないのではないか。

大沢:議員として活動するならば、生活は保障しなければならないのではないか。

小林:議会の定員、報酬は市民が自分で決めるべきであると私も考える。首謀者である菊地さんが選挙では最下位となったのは、評価されないということではないか?

菊地:確かに、日当制を主張して選挙では苦戦しました。しかし、報酬が下がっても、新人議員がトップ3で当選していた。そういう意味では、改革は評価されたと考えている。

質問:立川市民です。菊地さんに質問。日当制に反対した人の意見の代表例を教えて下さい。

菊地:報酬は民主主義の対価であるという意見があった。

福島:現在の議会は、意思決定ではなく、議会で陳情をしているだけになっている。
 スウェーデン議会では、議会民主制を取っているが、市民と同じに働かなければ議員はできないと考えている。自治体が選択できるということが重要


質問:1市民が定数・報酬を決定すれば良いというが、それを実現するための方法は?首長がやるしかないのか?議員や市民の立場では出来ることはないのか?現状においては、地方議会が活動していない以上、廃止してしまえという声が一番多いと思うが。また、市民参加を推進するべきと言っても、議員同士の自由討論さえ、ほとんどない状況では、市民参加に辿り着く方法はあるのか?
2プロとして報酬を得る議員に必要な能力は?

福島:市民が議員定数・報酬を決定する方法は、自治体ごとで決めれば良いと思うが、議会のあり方を市民が直接請求で行ったのも方法の1つ。住民が直接請求しても、日本の制度では、議会で討論されるだけの制度で、住民投票には繋がっていない点に問題がある。住民が直接請求すれば、住民投票まで要求できるように制度を改革するべきである。

小林:日本の地方議会は規模が欧米に比較して大き過ぎる。だから、議員を欧米のように無報酬のボランティアにすることは困難であり、議員ボランティアの市民参加では判りやすくすることさえも難しい。だから、プロとして議員が活動するために幅広い知識が必要となってくる。福祉・環境等の特殊な活動している議員は、他のことは知らないから扱い易いと役所から思われることが多い。ただし、市民感覚を持つことは重要である。幅広い知識と市民感覚、それが「プロ」としての能力であろう。

前田駒沢大学教授:お金持ちじゃなくても選挙に出られるようにするために、報酬は生まれた。だから、日当制やボランティア化は難しいのではないか。歳費を貰うことに不満が多いのは、働いていない、費用対効果が低いと考えられているからではないか。

小林:現在の法律では、画一的に自治体を同じ待遇で縛っている。そこに最大の問題がある。

小林:最後にまとめを

菊地:私は日当制ということで参加させて貰った。今後の議会を考える上で、休日議会、夜間議会も視野に入れるべきであろう。

大沢:議員はどんな人でもなれるようにするべきだと思う。そういう意味では、一期目では何も判らないことが多いだろう。その上で勉強を続けゼネラリストになる必要があるだろう。

吉川:今の制度では供託金や会社の関係で、誰でも議員になれる制度になっていない。首長と議会が二元代表性になるかを考える必要がある。アメリカ、バークレーでは、議会がシティーマネージャーを全米から探して連れてきているという例もある。

福島:地方議会は比例代表性にするというのも方法であるが、政党政治化してしまうので、市民が参加しにくくなる危険があるのではと心配である。議会の力をつけるということが重要であるが、本来の役割を果たすことが必要であろう。議会事務局は、近隣自治体が協同でプロを育てるべきではないか。

小林:議会で発言しない議員が実力者と言われる制度はおかしい。議員自身はアンケートによると、監査役に過ぎないと考えている議員が多いが、市民は重役による意思決定だと考えている。そこに大きな問題がある。