つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

いちおうラノベかな

2012-02-25 15:17:48 | 小説全般
さて、雑誌のダ・ヴィンチって読んだことないんだけどの第987回は、

タイトル:吉野北高校図書委員会
著者:山本渚
出版社:メディアファクトリー MF文庫ダ・ヴィンチ(初版:'08)

であります。

MF文庫と言うとラノベの印象なんだけど、あとにダ・ヴィンチとつくとどこに分類していいやら迷いました。
本書に限って言うならラノベっぽいのですが、内容は恋愛小説っぽい(あくまで「っぽい」)ものなので、「小説全般」に分類。

で、ストーリーはと言うと、

『徳島県徳島市の吉野北高校に通う川本かずらは、校舎とは別館になっている図書室に滑り込んだ。
今日は自らが所属する図書委員の臨時委員会があるからだ。
委員会までには時間があるけれど、もうすでに委員長の岸本一――通称ワンちゃんに、同じクラスの藤枝高広、後輩の上森あゆみが来ていた。

かずらは、他の委員が揃うのを待つ間、いつものメンバーと雑談しながら他の委員を待つ間、かわいい後輩のあゆみのほんとうにかわいい姿に感じ入ったりしていた。
けれど、そこには少々複雑な気持ちも混ざっていた。

同じ図書委員で気の合う男友達でもある武市大地とあゆみは付き合っているのだった。
「どうせ大学に行くときに別れるのならば彼女なんて作らない」――そんなふうに言っていた大地があゆみと付き合っていることを告げられたときはびっくりした。
……したけど、大地の説明を聞いて腑に落ちた気がしたけれど、その実、かなり動揺していた。

大地とは気が合って、本の趣味や価値観、考え方が似ていて、ちょっと特別な男友達だった。
でも大地とあゆみがうまくいって欲しいと言う気持ちもまた本音だった。

そんなかずらに、藤枝は「かずらは大地のことが好きなんだろう」と言ってくる。
けれど、かずらは大地への気持ちは恋愛感情ではないと答える。あゆみのような強い感情ではないからだ。

それに納得したように引き下がった藤枝は、かずらのことが好きだった。
一年生のとき、ほとんど不登校だった藤枝はワンちゃんと知り合い、その縁で図書室に顔を出したとき、ちょうどワックスがけをする日で、かずらに半強制的に手伝わされたことがきっかけで、図書室に入り浸るようになり、二年生になったときに図書委員にもなった。

居心地のいい場所をくれたかずらを好きな藤枝は、大地への気持ちに蓋をしてしまうようなかずらの態度にもどかしさを感じていた。
その反面、自分の気持ちを知って欲しいと言う欲望もあり、またそれを知ったときのかずらの態度が容易に想像できてしまうがために好きだと言うことができてないでいた。

そんな中、大地があゆみと別れると言いだし――それは大地の考えすぎの単なる誤解だったのだが、その顛末を聞いたかずらの態度に、藤枝はとうとう……』

う~ん、数回程度じゃ要約の感覚を取り戻すのはまだまだってとこだなぁ。

それはさておき。
本書の第一印象は、「まぁ、かわいらしいお話だこと」ってな具合でしょうか。(もちろん、いい意味ではない)
ストーリーは図書委員をやっている高校生たちの恋愛を絡めた感情の機微を描いた作品、と言ったところで、第3回ダ・ヴィンチ文学賞編集長特別賞を受賞した表題作に、あゆみを主人公にした書き下ろし「あおぞら」の中編2作が収録されている。

とにかくキャラ全部がいい子ちゃんすぎて、リアリティに欠けている。
山本文緒の「恋愛中毒」みたいにドロドロしたのとは真逆で、嫉妬や独占欲と言った高校生であろうと持っていて当然な感情の表現というものがほとんど、ない。
あえてそれに該当すると言えば藤枝だろうが、このキャラもそこまで強い印象を与えるものではなく、リアリティのなさを補うまでにはいってない。

と言うか、かわいくてかずらに「素敵女子」と評されるあゆみを筆頭に、メインで登場する図書委員のキャラが全員「いるかよ、こんなヤツ」ってな具合。

ストーリーの構成は、かずら視点から藤枝視点へ移行しながらストーリーを展開する表題作と、あゆみ視点の書き下ろしだが、ともに奇を衒うような展開もなく、いい子ちゃんたちのいい子ちゃんな感情の起伏を日常の中で表現しているだけで、これと言った盛り上がりがあるわけではなく、至って平板にストーリーは進んでいく。
まぁ、ごくありふれた日常を描いていくのは難しく、それを描けている点は評価できるが、いかんせんキャラがこれじゃぁねぇ……。

その割にはAmazonのレビューの評価っていいんだよなぁ。
さわやか、とか、切ない、とか――すんませんが、いったいどこからそういう評価が出たのか教えてもらいたいです。
(単に私がひねくれているだけだろ、と言うツッコミはなしの方向で(笑))

と言うわけで、総評としていいところがあまりにも少ないので、落第にせざるを得ないだろうなぁ。



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