つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

聞コエマスカ?

2005-08-08 01:04:32 | 小説全般
さて、ようやく目標の四分の一まで来た第251回は、

タイトル:きみにしか聞こえない――CALLING YOU
著者:乙一
文庫名:角川スニーカー文庫

であります。

ふいに、短編好きの血が騒ぎ出して手にとってみました。
『ZOO』は好き嫌い半々といったとこでしたが、さて今回は?
例によって一つずつ感想を書いていきます。

CALLING YOU……主人公は携帯を持っていない女子高生。表面上の言葉で折り合いを付けていくことができないため、友達を作ることができず、学校で孤立している。彼女は寂しさを紛らわせるため、想像の携帯電話を作り上げてそれを愛するが――ある日、頭の中のそれが着信を知らせた。『わたし』の心理描写と想像の携帯電話のアイディアは上手いと思うが、全体的なストーリーはイマイチ。序盤で、先の展開もオチも読めてしまった。綺麗な話だとは思うが、それ以上ではない。

傷―KIZ/KIZS……親に付けられた痣を持ち、デリカシーのない者達に怒りを燃やす少年。人の痛みを知り、自らを傷つけることをいとわない少年。二人は同じ秘密を共有し、心を通わせていくが――。主人公の怒りと葛藤が非常に丁寧に描かれている。無神経な人々に挑みつつ、少しずつそれを理解していく主人公と、すべてを受け入れ、一人で滅びていこうとする少年の対比も上手い。単に、聖人君子のようなキャラクターによる救済を描いているわけではないところに好感が持てる良作。

華歌……列車事故により、今の病院に入れられた『私』。悪夢に襲われた朝、それまでに訪れたことのなかった裏庭の森に入り、巨大な樹を発見する。その根元には奇妙な植物が生えていた――。
大当たり
展開、複線、ラスト、すべて素晴らしいパーフェクトな短編。少なくとも、私の知る乙一作品(と言っても、本書と『ZOO』しか読んでないけど)の中ではダントツでトップ。詳しく書きたいのは山々だが、敢えて詳しい内容には触れず、凄い、の一言で済ませておこう。

綺麗な話が揃った短編集です。
ハッピーエンドが好きな人にはかなりオススメ。
面白かったので、次も探してみよっと。



――【つれづれナビ!】――
 ◆ 『乙一』のまとめページへ
 ◇ 『ライトノベル一覧表(その2)』へ
 ◆ 『つれづれ総合案内所』へ


最新の画像もっと見る