さて、いい世の中になったよなぁの第990回は、
タイトル:オオカミさんと7人の仲間たち
著者:沖田雅
出版社:アスキーメディアワークス 電撃文庫(初版'06)
であります。
最近はこっちじゃやってないアニメもネット配信で1週間無料とか、そんなので見れたりするのでいい世の中になったよなぁと思う今日この頃……。
本書も2010年にアニメ化されていて、確か無料配信されていたので見てました。
なら原作は……と言うことで、遅まきながら1巻を借りてみましたが、ストーリーは、
『大神涼子はとある場所でひとりの男と対峙していた――と言うより、ほぼ一方的に殴り倒していた。
それでもめげない男は……涼子の逆鱗に触れる一言により昏倒させられてしまう。
と、そこへ今度はひとりの少女が現れ、昏倒した男を叩き起こす。
少女は自らを赤井林檎と名乗り、さらに御伽学園学生相互扶助協会――通称御伽銀行からの「お願い」を聞いてもらうために男を殴り倒した……もとい、男の元を訪れたと告げる。
御伽学園学生相互扶助協会――通称御伽銀行とは、御伽学園にある組織で学生の依頼を受けて依頼を完遂するとともに、依頼した学生に「貸し」を作って、必要に応じてそれを返してもらう、と言う組織だった。
涼子が男を殴り倒した……訪れたのも男のストーカー被害をやめてもらうための依頼を受けていたためだった。
にこにこと男に証拠を突きつけつつ、ストーキングをやめるように迫る林檎。
往生際の悪い男とのやりとりに紆余曲折はあったものの、男にストーキングをやめるよう納得させたふたり。
日が改まったある日、涼子が帰宅途中、不意に声が聞こえて立ち止まる。
振り返ってみても誰もいず、空耳かと思っていると今度ははっきりと「大神涼子さん、好きです」との声が。
けれど姿は見えず、どうやら隠れている模様。
それに苛々として出てこいと怒鳴ると、案外あっさり出てくる告白の主。
告白の主は、森野亮士、御伽学園1年F組で涼子と同じクラスの男子だった。
とは言え、クラスメイトのことなどほとんど覚えていない涼子。当然亮士のことも同じクラスだと言われるまで知らなかった。
――が、まがりなりにも告白された身。どこに惚れられたのか気にはなって聞いてみると出てくるのは「凛々しい」とか「野性味溢れる」とか「男らしい」とか、およそ女性を褒めるにはほど遠い言葉ばかり。
聞いていられないとばかりに途中退場した涼子は、翌日、教室の中に亮士を見つけ、友人でもある林檎に亮士のことを尋ねる。
林檎のほうは亮士のことは知っていて、周囲に溶け込む才能から御伽銀行に勧誘しようと考えていた人物だった。
涼子が告白されたことも聞いた林檎は、本格的に亮士を勧誘しようと御伽銀行の部室に呼び出しをかける。
――のだが、そこで亮士の致命的な弱点、対人恐怖症と視線恐怖症によってヘタレてしまうことが発覚。
逆に人がいなければとても男らしい面を見せる亮士を引き込みたい林檎だったが、涼子のほうはヘタレっぷりに反対の立場。
けれど、先日殴り倒してストーキングをやめさせたはずの男が涼子に仕返しをしに来たときの亮士の対応を見て、亮士は御伽銀行に正式に入ることになり……』
と、序盤はこんな感じ。
まずは最初に一言。
短編連作ならそれらしく書け
ストーリーは、まず上記の序盤から亮士が御伽銀行に入って初めての依頼をこなす話。
それから竜宮グループと言うあらゆる性産業に進出している複合企業の社長令嬢、竜宮乙姫に狙われる浦島太郎の話。
御伽学園ボクシング部所属で学生チャンピオンでもある白馬王子が涼子を狙う話。
……の3つで構成されている。
ストーリーそのものは各キャラの名前からもわかるとおり、童話から題材を取ってそれをアレンジし、コメディ仕立てにしたもので、御伽銀行のキャラや各話に出てくる脇キャラも古今東西の童話から持ってきている。
キャラは個性や特技がはっきりしていてわかりやすいし、ストーリーも奇を衒うようなこともなく、コメディとしてすんなり読めるものになっている。
ラノベとしては読みやすく、各ストーリーに破綻はない。
元ネタも童話なので馴染みやすく、誰にでもわかると言う意味ではパロディとしてもいいほうだろう。
ストーリー、キャラともに無難な点数をつけられる――のだが、書き方に一貫性がないのが気に入らない。
まずは最初の話で亮士が御伽銀行に入って初めての依頼をこなす話だが、ここまでに副題がついている章がいくつもある。
けれど、次の浦島太郎と竜宮乙姫の話、白馬王子の話には最初に副題があるだけ。
ある程度の章ごとに副題をつけるならつける、つけないならつけないではっきりせんかい、と言いたくなる。
ついでに序盤、涼子が天の声(いわゆる著者)に反応する場面があるが、これも最初だけでそれっきり。
こういう天の声に反応する書き方は好きではないけれど、それをさておいても、そういう書き方をするならする、しないならしないでこれもまたはっきりせんかいと……。
ラノベとしてはせっかく悪くないと思えるのに、どうも書き方にアラがあるのは前シリーズの「先輩とぼく」のときと同じ。
「先輩とぼく」も6冊出ていると言うのに、書き方に進歩が見られないと言うのは何だかなぁ。
(文体が違うとは言え、結局ムラっ気があるのに変わりはない)
アニメにもなるくらいだから、それなりに人気のあるシリーズなのだろうが、いろいろ気にかかる点があるのは残念。
まぁ、そういうわけで総評として良品と言えるはずもなく、かといってラノベとして落第にするほどストーリーとかが悪いわけでもないので、及第というところに落ち着くわけで。
なんかこう、これはいいぜ! って言いたくなるようなラノベってないもんかねぇ。
――【つれづれナビ!】――
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タイトル:オオカミさんと7人の仲間たち
著者:沖田雅
出版社:アスキーメディアワークス 電撃文庫(初版'06)
であります。
最近はこっちじゃやってないアニメもネット配信で1週間無料とか、そんなので見れたりするのでいい世の中になったよなぁと思う今日この頃……。
本書も2010年にアニメ化されていて、確か無料配信されていたので見てました。
なら原作は……と言うことで、遅まきながら1巻を借りてみましたが、ストーリーは、
『大神涼子はとある場所でひとりの男と対峙していた――と言うより、ほぼ一方的に殴り倒していた。
それでもめげない男は……涼子の逆鱗に触れる一言により昏倒させられてしまう。
と、そこへ今度はひとりの少女が現れ、昏倒した男を叩き起こす。
少女は自らを赤井林檎と名乗り、さらに御伽学園学生相互扶助協会――通称御伽銀行からの「お願い」を聞いてもらうために男を殴り倒した……もとい、男の元を訪れたと告げる。
御伽学園学生相互扶助協会――通称御伽銀行とは、御伽学園にある組織で学生の依頼を受けて依頼を完遂するとともに、依頼した学生に「貸し」を作って、必要に応じてそれを返してもらう、と言う組織だった。
涼子が男を殴り倒した……訪れたのも男のストーカー被害をやめてもらうための依頼を受けていたためだった。
にこにこと男に証拠を突きつけつつ、ストーキングをやめるように迫る林檎。
往生際の悪い男とのやりとりに紆余曲折はあったものの、男にストーキングをやめるよう納得させたふたり。
日が改まったある日、涼子が帰宅途中、不意に声が聞こえて立ち止まる。
振り返ってみても誰もいず、空耳かと思っていると今度ははっきりと「大神涼子さん、好きです」との声が。
けれど姿は見えず、どうやら隠れている模様。
それに苛々として出てこいと怒鳴ると、案外あっさり出てくる告白の主。
告白の主は、森野亮士、御伽学園1年F組で涼子と同じクラスの男子だった。
とは言え、クラスメイトのことなどほとんど覚えていない涼子。当然亮士のことも同じクラスだと言われるまで知らなかった。
――が、まがりなりにも告白された身。どこに惚れられたのか気にはなって聞いてみると出てくるのは「凛々しい」とか「野性味溢れる」とか「男らしい」とか、およそ女性を褒めるにはほど遠い言葉ばかり。
聞いていられないとばかりに途中退場した涼子は、翌日、教室の中に亮士を見つけ、友人でもある林檎に亮士のことを尋ねる。
林檎のほうは亮士のことは知っていて、周囲に溶け込む才能から御伽銀行に勧誘しようと考えていた人物だった。
涼子が告白されたことも聞いた林檎は、本格的に亮士を勧誘しようと御伽銀行の部室に呼び出しをかける。
――のだが、そこで亮士の致命的な弱点、対人恐怖症と視線恐怖症によってヘタレてしまうことが発覚。
逆に人がいなければとても男らしい面を見せる亮士を引き込みたい林檎だったが、涼子のほうはヘタレっぷりに反対の立場。
けれど、先日殴り倒してストーキングをやめさせたはずの男が涼子に仕返しをしに来たときの亮士の対応を見て、亮士は御伽銀行に正式に入ることになり……』
と、序盤はこんな感じ。
まずは最初に一言。
短編連作ならそれらしく書け
ストーリーは、まず上記の序盤から亮士が御伽銀行に入って初めての依頼をこなす話。
それから竜宮グループと言うあらゆる性産業に進出している複合企業の社長令嬢、竜宮乙姫に狙われる浦島太郎の話。
御伽学園ボクシング部所属で学生チャンピオンでもある白馬王子が涼子を狙う話。
……の3つで構成されている。
ストーリーそのものは各キャラの名前からもわかるとおり、童話から題材を取ってそれをアレンジし、コメディ仕立てにしたもので、御伽銀行のキャラや各話に出てくる脇キャラも古今東西の童話から持ってきている。
キャラは個性や特技がはっきりしていてわかりやすいし、ストーリーも奇を衒うようなこともなく、コメディとしてすんなり読めるものになっている。
ラノベとしては読みやすく、各ストーリーに破綻はない。
元ネタも童話なので馴染みやすく、誰にでもわかると言う意味ではパロディとしてもいいほうだろう。
ストーリー、キャラともに無難な点数をつけられる――のだが、書き方に一貫性がないのが気に入らない。
まずは最初の話で亮士が御伽銀行に入って初めての依頼をこなす話だが、ここまでに副題がついている章がいくつもある。
けれど、次の浦島太郎と竜宮乙姫の話、白馬王子の話には最初に副題があるだけ。
ある程度の章ごとに副題をつけるならつける、つけないならつけないではっきりせんかい、と言いたくなる。
ついでに序盤、涼子が天の声(いわゆる著者)に反応する場面があるが、これも最初だけでそれっきり。
こういう天の声に反応する書き方は好きではないけれど、それをさておいても、そういう書き方をするならする、しないならしないでこれもまたはっきりせんかいと……。
ラノベとしてはせっかく悪くないと思えるのに、どうも書き方にアラがあるのは前シリーズの「先輩とぼく」のときと同じ。
「先輩とぼく」も6冊出ていると言うのに、書き方に進歩が見られないと言うのは何だかなぁ。
(文体が違うとは言え、結局ムラっ気があるのに変わりはない)
アニメにもなるくらいだから、それなりに人気のあるシリーズなのだろうが、いろいろ気にかかる点があるのは残念。
まぁ、そういうわけで総評として良品と言えるはずもなく、かといってラノベとして落第にするほどストーリーとかが悪いわけでもないので、及第というところに落ち着くわけで。
なんかこう、これはいいぜ! って言いたくなるようなラノベってないもんかねぇ。
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