つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

最近では稀

2006-06-18 00:38:47 | 小説全般
さて、我ながらよく読んだなぁの第565回は、

タイトル:ダンボールハウスガール
著者:萱野葵
出版社:角川文庫

であります。

しがないOLだった主人公の杏は、爪に火をともすようにして200万を貯めたことをきっかけに、仕事を辞めて悠々自適の生活を送る……はずだった。
泥棒に入られて、200万の通帳を盗まれ、すでに全額引き下ろされていたから。
残金は財布の中に入っていた8万。

これでしばらくはカプセルホテルなどで暮らしていたが当然泊まるにも生活するにも金はかかる。
仕事を辞めた杏に収入はなく、ホテルにもいられなくなってからは通っていた大学で、新宿中央公園を経て新宿西口にダンボールの家を作り、そこで暮らすようになった。
ファーストフードなどの余り物で空腹を癒し、大学のシャワールームで学生が残していったシャンプーなどを使い、ダンボールの家で眠る生活。

そのうち、ダイヤルQ2や家庭教師のバイトをしながら稼ぐようになるが、財布を落として電車賃のない不幸な女を演出して金をせしめたり、自動販売機が壊れたふりをして入れてもいない金を詐取する。
家庭教師の生徒から胃薬を睡眠薬と称して売り飛ばしたりとしたたかに、そして再び金を貯め、いつの間にか盗まれた200万が貯まっていた……。

いやぁ、ほんとうにここ最近では稀な駄作だったなぁ(笑)
文章は三人称だが、ストーリーの中心、と言うよりは完全に杏ひとりの行動や心理描写なのだが、この主人公がとにかく胸くそが悪いくらいだったので、読むのに苦労した苦労した。

以前、第501回で井上荒野を読んだときもかなりきつかったけど、あれはまだ読もうと思えた。
が、これはマジで2、30ページ読んでからやめようと思ったからなぁ。
200ページもない短い話でホントよかったよ。

まぁ、個人的にはよく読んだと褒めてくれと言いたいくらいの出来だったが、客観的に見てもただ単に、守銭奴でひねくれ者の杏がやむなく陥った宿無し生活をだらだらと続けているだけで、展開に起伏もなければ盛り上がりもない。
ラストの退廃的なオチの付け方はなかなか印象的でよかったが、それ以外に見るべきところは皆無、と言っていいだろう。

また、裏表紙にはサバイバル・ストーリーとあるが、これのどこがサバイバルなのか私には理解できない。
はっきり言って、200万盗まれたが8万残っているにも関わらず、何もせずに堕落していっただけの主人公に同情する気はさらさらない。


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