つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

扉を開いた先には……

2005-05-11 18:26:05 | ホラー
さて、何だかんだ言ってホラー好きかも知れない第162回は、

タイトル:七つの怖い扉
著者:阿刀田高 宮部みゆき 高橋克彦 乃南アサ 鈴木光司 夢枕獏 小池真理子
文庫名:新潮文庫

であります。

七名の作家のホラー短編を収録したアンソロジーです。
私のような拾い読み人間にとって、こういう本は非常に有り難い。
例によって一つずつ作品を紹介していきます。

迷路(阿刀田高)……ある古井戸にまつわる話。怪奇でもスプラッタでもない。無論、よく解らないものが出てくるわけでもない。でも思わずきゃ~、となってしまう、ある意味ホラーの見本。現実を直視せず、すべてを自分の血筋と不思議な出来事で済ませてしまう主人公の歪み方が凄い。

布団部屋(宮部みゆき)……急死した姉に代わり、おゆうは兼子屋の奉公人となる。そこには奇妙な風習が――(以下略)。
非常に素直な話で、イマイチ面白くなかった。前半はちょっと怖いかな、と思わせるところはあったが、オチが悪い意味で予想通りだった。

母の死んだ家(高橋克彦)……作家の〈私〉と編集者の山崎は深い山道を歩いているうちに、とある別荘地にたどり着いた。そこは実は――(以下略)。
夢か現(うつつ)か定かでない後半が秀逸。私が母を呼んだのか、それとも母が私を呼んだのか?

夕がすみ(乃南アサ)……両親を事故でなくした従姉妹のかすみが〈私〉の家に来ることになった。〈私〉は素直に喜ぶが、大学生の兄は小さな従姉妹に心を開こうとしない。そしてある日――(以下略)。
布団部屋に輪をかけて素直過ぎる話。オチもまったくヒネリがない。

空に浮かぶ棺(鈴木光司)……『らせん』の外伝。正直、単独ではまったく面白くない。

安義橋の鬼、人をくらふ語(夢枕獏)……安義橋には鬼が出るという。ひょんなことから、源貞盛はそれを確かめにいくことになるが――(以下略)。
一押し。話の運びが非常に上手く、すらすらっと最後まで来て、おやっというラストを見せてくれる。ただし、ホラーではない。(笑)

康平の背中(小池真理子)……〈私〉がかつて愛した男、康平。彼には妻と気味の悪い子供が一人いた――。
どうにも説明しにくい作品。怖いことは怖いのだが、だから結局この息子は何だったの? と言いたくなる。もっとも、作品内で詳しく解説すると興ざめしてしまうのだろうが。

どちらかと言えば不作。
好きな作品が三つあったので、全く駄目というわけではありませんが、私的にはハズレの作品があまりにもハズレ過ぎて……。

しかし、ホラー短編を書くのは本当に難しい。
何と言っても、分量の関係からじわじわと怖がらせる手法が使いにくい。
唐突にブラックなオチを見せてしめるのが一つのテクニックとなっているだけに、読者がある程度それを予測しているのも辛い。
だからこそ書く醍醐味もあるのでしょうけど。


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