つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

いつのまに担当?

2007-01-14 19:16:06 | ファンタジー(現世界)
さて、まぁ図書館で借りられるからいいかの第775回は、

タイトル:いぬかみっ!
著者:有沢まみず
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H15)

であります。

得意分野……というわけではないが、相棒がこの手の作品はなかなか読めないタチなので、結局私が読むことになるのね……。
まぁ、そうは言ってももともとファンタジーメインのはずだったので、カテゴリのトップから下げるわけにもいかないので、なるべく(図書館で借りられるうちは)、読んでおこう、とね。

と言うわけで、これまたいかにもなライトノベルで、書名のリンクからAmazonで表紙絵を見ると、かなり納得できるだろう。
物語としては短編連作で、主人公の犬神使い、川平啓太とその犬神でヒロインのようこを中心としたコメディ。
本書は4編の短編+αとなっているので、例の如く各話ごとに。

「Step1 ボーイ・ミーツ・ドッグ」
犬神使いの本家の血筋である川平啓太は、しかし13歳の儀式のとき、ひとりの犬神にも認められず、犬神使いとしては除名されている身だった。
そこで当主である啓太の婆さんからの呼び出しがあり、実は13歳のときには半人前だったために、啓太と契約できなかった犬神がおり、啓太が望むなら契約可能と告げる。

不遇を託っていた啓太は詳しい話も聞かず、その犬神のもとへ飛んでいく。
古ぼけた廃寺で待っていたのは、ようこと名乗る美少女。主人に従順な犬神に、いろんな妄想を逞しくする啓太だったが、ようこは……。

「Step2 蛇女哀歌」
ようこにさんざんおちょくられ、いじられつつも結局、犬神と犬神使いとしてアパートで一緒に暮らすようになった啓太は、婆さんの犬神である「はけ」から、婆さんの斡旋で犬神使いとしての仕事をすることになる。

その依頼主……大迫と名乗った男には、それまで弄んだ女の怨念が凝り固まった生霊が取り憑いていた。
その手の生霊が苦手な啓太は、この依頼は受けないようにしようとしたが、あろうことかようこは生霊に啓太に取り憑いたほうがいいとアドバイスし……。

「Step3 温泉と猫と仏像と」
婆さんの斡旋で、ある温泉旅館で出没する妖怪を退治するため、当の旅館にようことともに訪れていた。
そこでようこはある視線を感じつつも、啓太と妖怪の出没を待っていた。

視線とともに感じる気配と、出没する妖怪らしき影……そのうちのひとつは、あろうことかある寺の住職の恩を返すために、その寺で祭られていた仏像を探す猫又で、渡り猫の留吉と言う妖怪だったが……。

「Step4 象さん」
ようこのいたずらで、4度目のストリーキング容疑で留置場行きとなった啓太は、そこで内閣官房直属の特命霊的捜査官の仮名史郎という男に、ある事件の解決に協力するよう依頼される。

その事件とは、もてないストリーキング男が恨みを抱えて死んだため、異常なまでにカップルを憎み、その挙げ句、カップルの男だけの衣服をすべて消し去ってしまう、と言うものだった。
ようことともに、カップルを装い、敵との戦いに備えるが……。

「Short Break ようこの一日」
+αのショートショートで、朝起きてからのようこの1日と、Step3で登場した留吉を含めた宴会がようこの一人称で綴られるおまけ話。


いかにもな萌え系のコメディだが、もし、私が公募の下読みとかだったら、これはきっと通すだろうな、と思う。
もっとも、デビュー作は違うので、どうかはわからないが、これは確かに「売れる」作品であろう。

コメディとしてのテンポはよく、ストーリー展開の流れがよいので読みやすい。
短編なので、1話を読む時間も短くてすみ、気軽に読むにはちょうどいい。

また、いじられ役で、犬神と犬神使いの立場が逆転した啓太、おちょくったりいじったりしつつも啓太が好きなようこのキャラも個性があり、魅力的である。
特に、ようこのキャラは啓太をいじるキャラと、甘える場面とのギャップが際立っており、絵柄と相俟って確実に人気の出るキャラに仕上がっている。

その他、ようこによってストリーキングをさせられ留置場入りを繰り返すネタや、話の最後に「P.S」として語られる短い後日談など、コメディ要素は十分でくすっと笑うことで出来るネタも揃っている。

文章も、意外に白いほどではなく、適度にテンポを損なわない程度に分量があるのはいいが、やはり文章の甘さはある。
随所に説明不足、展開の変化の甘さなどがあり、こうしたところは難点。
構成にもやや甘さがあり、「Step3」などはかなり悪い。

売れる要素は十二分に備わっており、シリーズが11巻まで出ているほど人気があるのはわかるのだが、文章、展開に甘さがあるのはマイナス。
コメディとしてのおもしろさはあるので、こうしたところがしっかりすればいいのだが……2巻以降改善されてるのか……な……?

ともあれ、いいところも悪いところも見受けられるので、総評としては及第と言ったところか。



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