つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

未来が見えてしまいます

2006-05-16 23:50:14 | ミステリ
さて、何も知らずに二冊目から買ってしまった第532回は、

タイトル:予知夢
著者:東野圭吾
文庫名:文春文庫

であります。

ちょっと変わった物理学者・湯川が謎を解明するガリレオシリーズの第二弾です。
なーんも考えずに買ってきたので、第一弾があることに気づいたのは読み終わった後でした。(爆)
連作短編なので、一つずつ感想を書いていきます。

『夢視る ゆめみる』……坂木信彦は小学生の時からずっと、運命の恋人と出会うことを信じていた。彼女の名はレミ。その名が現実に存在する少女と一致した時、彼は――。
オカルトチックな罠の仕掛け方が上手い。偶然の一致、狂言、思い込み、でも片は付けられるが、ちゃんとミステリ的謎解きでまとめているのも良し。読者の想像の範疇を超えた過去の裏話が出てくるのがちょっと引っかかるが、これは作品の性質上仕方のないことか。それにしても草薙さん、ちょっと鈍感過ぎやしないか?

『霊視る みえる』……細谷忠夫は悩んでいた。友人の小杉が見初めた女性・長井清美といい仲になってしまったのだ。事情を話す決意をして小杉の家に向かうが、彼は不在で、別の友人が留守番役をしていた。なし崩し的に泊まることになった忠夫は、レースのカーテン越しに、ここに来る筈のない清美の姿を見るが――。
オカルトの臭いは薄く、情報もそれなりに多いので、普通のミステリに近い。だけど湯川先生、情報不足の状態で、「人殺しをしてでも守りたい相手だ。愛する女に決まっている(ネタバレなので反転)」と言い切っちゃうのはいかがなもんでしょう? 私から見ると、事件よりも貴方の方がオカルトです。(笑)

『騒霊ぐ さわぐ』……失踪した夫の行き先に心当たりがある、と依頼人は言った。姉の友人ということで無下にもできず、草薙は湯川にその話を伝えてみるが――。
イマイチ……。依頼者の夫が失踪した日と、彼が訪ねたと思われる人物が亡くなった日が一致している時点で、謎も何もあったものではない。タイトルになっているポルターガイスト現象についても、特に新しい解釈はない。

『絞殺る しめる』……貸した金を回収しに行く、と言って出て行った男が、翌日死体となって発見された。前日、娘が奇怪な現象を目撃していたのだが、それは何かの符丁だったのか――?
かなり凝ったトリックが出てくる。各人の行動自体は想像つくが、方法となると……すいません、全く解りませんでした。序盤で人間味もくそもない台詞を吐いておいて、最後に非常に人間くさい台詞を吐く湯川がいい。

『予知る しる』……菅原は焦っていた。妻と後輩の三人で食事している最中に、愛人から電話がかかってきたのである。彼女は、今すぐ関係を明かさないと自殺する、と迫るが――。
解りやすいミステリ……と思っていたら、予想外のオチにびっくり。そうきたか、と言った感じで、本書のラストに相応しい作品になっている。事件後の湯川の台詞を聞いてみたいものだ。(笑)

『夢視る ゆめみる』と『予知る しる』はかなり面白かったのですが、他の三つはイマイチでした。出来が悪いと言うより、単純に好みの問題で。(爆)
『容疑者Xの献身』よりは好きだけど、オススメかと言われると……微妙です。
湯川&草薙コンビの会話は楽しいんだけどなぁ……。