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テンポラリースタッフがパーマネントに?

2013年07月08日 | 社会・経済

テンプスタッフといえば日本の人材派遣会社の名前だが、テンポラリースタッフtemporary staffというと一般名詞で「臨時社員」である。英語ではtemporary staffの他、freelanceだとかcontractualあるいは短縮してtempsと呼ばれるが、名称はどうあれpermanent staff(employee)正社員・常勤社員の反対語であることに変わりはない。グーグルファイナンスを見ていたら、Temporary jobs becoming a permanent fixtureという記事が出ていた。タイトルの意味は「臨時社員が恒久的な常連になる」という意味だ。景気が良くなると、臨時社員から常勤社員になるというのが、過去のケースであった。しかし現在では景気が少々良くなっても、臨時社員から常勤社員への転換は進まない、臨時社員はパーマネントに臨時社員、という意味でちょっとひねったタイトルである。これはアメリカの話だが、日本も同じ軌跡上にある、と考えて良いだろう。

なぜ日米が同じ軌跡上にあるかというと、日米の企業は雇用について同じプレッシャーを感じているからである。アソシエイティドプレスが5月に37名のエコノミストに調査をかけたところでは、3/4の企業がテンポラリースタッフを増やすのが長期的なトレンドだと考えている。現在の米国は緩やかな景気と雇用の回復過程にあると考えられるが、正社員は増えずに臨時社員が増える傾向は続いている。スタッフィング・インダストリー・アナリストの調査によると、従業員1千名以上の会社では臨時社員の割合を2012年の16%から18%に引き上げようと考えている。前回のリセッションで失われた職の内1割が臨時社員のものだったが、リセッション後増えた職の2割は臨時採用である。

企業が正社員の雇用に慎重なのは、経済見通しが不透明だからだけではない。臨時雇用が低コストで、企業の競争力維持には必要なものだ、と経営陣が考えているからである。今の大企業は米国内あるいは日本国内の競争相手とだけ戦っている訳ではない。競争相手は世界中にいる。だがら米国の企業行動はダイレクトに日本企業の経営方針に影響を与える。

少し敷衍して考えると、仮にアベノミクスが成功して、消費と企業活動が活発化して、デフレが収まり、設備投資が上を向き始めるとしても、正社員の雇用がどんどん増えるとは予想し難い。雇用が増えても臨時社員の雇用拡大が大きな部分を占め、過去モデルで推定するほど、勤労者層全体の可処分所得は増えないのではないだろうか?

良し悪しは別としてこれが近未来の雇用の姿だ。不都合かもしれないがそれが真実であり、そこを見据えた政策が議論されなければならないだろう。

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