アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「衆院補選共闘」の失態ー民進、共産は責任を明確に

2016年10月27日 | 野党共闘

      

 23日投開票された東京10区、福岡6区の衆院補選における「野党共闘」(民進、共産、自由、社民)は、ただ敗北しただけではなく、本来の政党間共闘、あるいは市民(団体)との協力・共同において、きわめて大きな汚点を残しました。

 「野党共闘」の失態を白日の下にさらしたのは、20日に東京・池袋駅前で行われた鈴木庸介(民進党公認)陣営の街頭演説会でした。共産、自由、社民が党首級、民進も代表代行が顔をそろえた投票日直前の一大イベントに、なんと鈴木候補本人の姿がなかったのです。民進党が出席させなかったからです。

 鈴木候補の支援組織で当日の演説会を企画した市民団体(「TeNネットワーク2016」)は翌21日、この問題で民進党の蓮舫代表に抗議文を送りました。

 「くりかえしの要請にも関わらず、鈴木ようすけ候補は参加されませんでした。…私たち市民の『候補者に来てほしい』という当たり前の要望に応えていただけなかった事に対し、貴党のお考えをぜひお聞かせ頂きたいと考えます」「このような状況では、野党統一も、市民と野党の共同も、今後どのようになっていくのか、大きな危惧を持たざる(を得ない)」(26日付しんぶん「赤旗」より)

 「赤旗」によれば、この抗議文に対し25日夜現在、民進党からの「回答」はありません。

 民進党のこの驚くべき行動の背後には、支持母体である「連合」の存在があります。

 「演説会を企画した市民団体は、候補者不在について「民進の責任者が『連合の顔を立てるため候補者を行かせることができない』と言った」と明かした。連合の神津里季生会長は同日(20日ー引用者)の記者会見で、福岡6区の演説会に民進候補が出席したことを問題視。連合はこの日、東京10区の候補者事務所からスタッフ十数人を引き揚げさせた。野党共闘に慎重な立場のためだ」(24日付朝日新聞)

 さらに驚くべきは、この連合の横暴の背景に、「民進党と連合幹部の間では『密約』が交わされていた」(24日付中国新聞=共同)という事実があることです。

 「2補選告示を控えた10月4日、蓮舫代表と野田佳彦幹事長、連合の神津里季生会長、逢見直人事務局長との4者会談で野党共闘の原則を確認した。①共産の候補取り下げ②政策協定は結ばない③推薦は受けない④表立った場所で共産と選挙活動はしないーといずれも『共産隠し』に徹する内容」(同)

 徹底した連合の反共主義です。民進党は連合とのこの「密約」通りに、鈴木氏を共産党と同席する「表立った場所」に立たせなかったのです。

 民進党は、連合との「密約」の存在も含め、市民団体の抗議文に対し直ちに回答し、今回の「共闘」をめぐる事実経過と自党の責任を明確にしなければなりません。

 一方、共産党の小池晃書記局長は24日の記者会見で、「5日の4野党書記局長・幹事長会談では、民進党から同党公認候補者への一本化と『勝利のためにできる限り協力してほしい』という申し出があり、日本共産党は自らの公認候補を降ろすという対応をとった」(25日付しんぶん「赤旗」)という事実を明らかにするとともに、20日の演説会の件や民進党候補が「安保法制の廃止」を語らなかったことなどをあげ、民進党に対し「速やかに4党書記局長・幹事長会談を開き、この間の経過について率直で真剣な検討を行うよう」(同)求めました。

 民進党に重大な責任があることは述べてきた通りですが、共産党はどうでしょうか。「率直で真剣な検討」を行う必要があるのは民進党だけでしょうか。

 政策協定も結ばず、一方的に公認候補を降ろさせるという民進党と連合の「密約」は市民・有権者を愚弄する言語道断の横暴ですが、その「密約」に基づいた民進党の要求に異論をはさまず唯々諾々と応じたのは共産党ではなかったのでしょうか。

 共産党の志位和夫委員長は、補選投票日前日(22日)の全国革新懇で、こう述べました。

 「本来のあり方を言えば、選挙協力というものは相互的なものだと思います。お互いの候補者を推薦、応援しあうーそうした相互的なものが選挙協力の本来のあり方だと思います。私たちは、総選挙においては、相互協力、相互支援の共闘がどうしても必要だと考えています。そうでなくては本当の力は出ません。相手に勝てません。総選挙では、日本共産党の候補者を一方的に降ろすということは、まったく考えていないということを、ここではっきりと申し上げておきたいと思います」(24日付しんぶん「赤旗」)

 まったく正論です。であれば、この言明に照らしても、衆院補選で民進党に言われるまま、「候補者を一方的に降ろ」したことは誤りだったのではないでしょうか。誤りだったと認めて支持者・有権者に謝罪すべきではありませんか。誤りは誤りと認めてこそ、誤りを糧とする弁証法的前進が可能なのではないでしょうか。
 今回の「野党共闘」で責任が問われているのは民進党だけではありません。


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