アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

争点は「消費増税延期」ではなく「軍事費削減」

2016年06月02日 | 政治・選挙

    

 安倍首相は1日の記者会見で、「新しい判断」なる二枚舌で「消費税増税再延期」を公式に表明しました。メディアは一斉に「再延期」の是非を論じ、街頭インタビューでも市民にその賛否を問いました。社会保障か消費税増税か…。そして参院選(7月10日投票)ではこの問題を含む「アベノミクス」の評価が争点になるとしています。

 こうした議論は、まったく的外れだと言わねばなりません。

 介護や保育・子育てなどの福祉予算、給付型奨学金などの教育予算の拡充。そして消費税増税の中止。それはいずれも庶民の切実な要求であると同時に、日本の経済や社会にとっても必要不可欠です。二者択一ではなく両方=消費税増税は中止し、同時に福祉・教育は拡充する。そういう議論がなぜなされないのでしょうか。

 「財源がない」といいます。市民もそう思わされています。しかし、それは事実ではありません。財源はあります。ただ、安倍自公政権もメディアも、それは「聖域」にして手を付けようとしていないだけです。

 その財源とは、今年度予算でついに5兆円を突破した巨額の「防衛予算」すなわち軍事費にほかなりません。

 日本は今や、アメリカ、中国、ロシア、イギリスに次ぐ世界第5位の軍事大国です。

 「平和憲法を持つ日本は、核保有国のフランス、インドを抜いて、590億ドル(2013年ー引用者)、世界五位の軍事大国である」(西川潤氏『新・世界経済入門』岩波新書)
 「これは日本がアメリカから絶えず一時代前の兵器を購入し、軍備を更新していること、また、自衛隊の維持コストが高いことの二つの理由による」(同)

 例えば、日本(防衛省)が昨年度と今年度でアメリカから購入(契約)した兵器は次の通りです。(共同配信記事より)
 ●固定翼哨戒機P1(南西諸島、島しょ防衛用)ー20機…3504億円
 ●ステルス戦闘機F35ー6機…1032億円
 ●MV22オスプレイー5機…516億円
 ●水陸両用車AAV7ー30両…203億円
 ●KC46A給油機ー3機…624億円

 兵器だけではありません。
 安倍政権は辺野古新基地建設を含む「在日米軍再編事業」として1472億円(2015年度)。さらに、市民の反対が強い宮古島への自衛隊配備のために用地取得費や敷地造成費として108億円(16年度)を計上したのに続き、来年度概算要求では「石垣市の陸上自衛隊配備計画に100億円」(5月31日付琉球新報)を盛り込む方針です。

 金額的にも膨大で、また何よりも平和に逆行するこうした巨額の軍事費になぜ手を付けないのか、なぜ議論の俎上にすらのぼらないのか。
 それは安倍自公政権はもちろん、すべてのメディアが、軍事費の根源である対米従属の日米軍事同盟(日米安保体制)を支持・擁護しているからにほかなりません。

 さらに見過ごすことができないのは、軍事費を「聖域」にしているのは安倍自公政権やメディアだけではないことです。本来、政権党に対抗する政策を提示すべき「野党」からも、軍事費削減の声はまったく聞こえてきません。

 政党の政策からいえば「軍事費削減」を主張してしかるべき日本共産党も、日米安保に賛成の民進党などと「共闘」し「野党共闘のためなら何でもする」(志位和夫委員長)との方針から軍事費削減を掲げることができなくなっています。

 戦争法によって日米軍事同盟の危険性がますます顕著になり、平和のためにも市民生活のためにも、「軍事費を削って福祉・教育へ」という要求・主張がいまほど切実で重要なときはありません。にもかかわらずそれを主張する政治勢力がない。ここに現在の日本の最大の問題があります。

 参院選の争点、そして日本の政治の最大の課題は、「軍事費を削って福祉・教育へ」回すこと。その庶民の声・要求をどれだけ広げることができるかではないでしょうか。


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