二月から三月にかけてあちらこちらから鶯の初音を聞いたというニュースが
南の地から北の地へと巡り来て、ここ仙台の町でも春の訪れを知らせる爽やかな
初音が届いたとテレビ、ラジオで知った。
♪うめのこえだでうぐいすが~♪と思わず小さく口遊んでしまった。
いっぺんに春到来と浮かれた。自分の耳で直接鳴き声を聞けたらならば、
より一層強く春を感じることができたであろうに。
春の鳥と言えば、誰しも一番に鶯とこたえるであろう。
うぐいすと母・・・あの日の母のことを忘れることができない。
あの日以来うぐいすは私にとり特別な鳥となった。
母が記憶を徐々に失っていく日々の中、八月の暑い日に
園の裏手の林の中からうぐいすの鳴き声が母の部屋に聞えて来た。
私は「なんとまぁ、季節外れのこと」と思いました。
母はペッドに座り、晴れ渡った八月の青い空を眩しそうに見ながら、
「春が来たのね」と感慨深げに小声で言った。
ちいさく痩せてまぁるくなった背中が淋しく見えた。
薄れゆく記憶の中でも「うぐいすは春の鳥」だと母の頭の中はまだ刻み込まれて
いるのだと知った時、なんだか泣けてきた。
ベッドに一緒に座り、うぐいすの鳴き声を二声、みこえ聞いた。
でも、私にはうぐいすの泣き声と聞えた。
毎年うぐいすの初音の便りを聞くと春の訪れの歓びと共に、母のあの後姿を
切なく思い出さずにはいられないのである。来年も・・・・
うぐいすの鳴くやちひさき口開けて 蕪村
南の地から北の地へと巡り来て、ここ仙台の町でも春の訪れを知らせる爽やかな
初音が届いたとテレビ、ラジオで知った。
♪うめのこえだでうぐいすが~♪と思わず小さく口遊んでしまった。
いっぺんに春到来と浮かれた。自分の耳で直接鳴き声を聞けたらならば、
より一層強く春を感じることができたであろうに。
春の鳥と言えば、誰しも一番に鶯とこたえるであろう。
うぐいすと母・・・あの日の母のことを忘れることができない。
あの日以来うぐいすは私にとり特別な鳥となった。
母が記憶を徐々に失っていく日々の中、八月の暑い日に
園の裏手の林の中からうぐいすの鳴き声が母の部屋に聞えて来た。
私は「なんとまぁ、季節外れのこと」と思いました。
母はペッドに座り、晴れ渡った八月の青い空を眩しそうに見ながら、
「春が来たのね」と感慨深げに小声で言った。
ちいさく痩せてまぁるくなった背中が淋しく見えた。
薄れゆく記憶の中でも「うぐいすは春の鳥」だと母の頭の中はまだ刻み込まれて
いるのだと知った時、なんだか泣けてきた。
ベッドに一緒に座り、うぐいすの鳴き声を二声、みこえ聞いた。
でも、私にはうぐいすの泣き声と聞えた。
毎年うぐいすの初音の便りを聞くと春の訪れの歓びと共に、母のあの後姿を
切なく思い出さずにはいられないのである。来年も・・・・
うぐいすの鳴くやちひさき口開けて 蕪村