セーラの独り言2

お年寄りの独り言・・・・

随筆の玉手箱

2015-11-25 | 日記
 ペーブメントに舞い散った枯葉の上を踏みしめ歩いている。
そのかさこそと乾いた音は晩秋から初冬への序奏。
この季節の灯ともし頃はなんとなく心もとなくうらさびしい思いにとらわれる。
私はいつものようにピアノのお稽古を終えて、ふと外を見るとすでに薄暗く
なっていた。ショパンのプレリュード二曲。間違ってばっかり。上達しない。
春を過ぎる頃には家の前を通る人が「あの曲はショパンの曲だったのね」と
分かってもらえるように弾きたいと思って、根気よくお稽古をしている。
一日のなすべきことを終えた夜分には昨日の続きの本を読もう。
今、読んでいるのは大橋しずこさんの随筆。
彼女は「暮らしの手帖」の初代社長であり、編集者でもあったが、
「すてきなあなたに」という随筆を長く掲載されていた。
残念なことに素敵な随筆の玉手箱を残されて2013年、93歳で亡くなられた。
彼女の文章はとてもわかりやすく、気どらず、飾り立てることもなく、素直で
濃やかな愛情溢れる心で物事を見る何気ないその内容に深い感銘を覚える。
暮らしに根付いた眼差しで毎日の生活を何気なく散りばめ描いた出来事を
「あら、私と同じだわ」と私にそっと気付かせてくれる。
高ぶらず、奢らず、品性のある御一生でありましたことでしょう。
今、この年になって読み返してみると、昔は読み取ることが出来なかったことが、
沢山あることに気付いた。再読してよかった!そう、つくづく思う。
冬至が過ぎると日脚がほんの少しずつ伸びてくる。
本格的な冬が来る前に、私はもう春の訪れを日脚の伸びと共に待っている。
そして、もう一つ春を心待ちにするのは、来春のNHKの朝ドラはしずこさんが
モデルなのだ。「とと姉ちゃん」。早く来ないかな、春!

歯の治療に行き始めました

2015-11-16 | 日記
 二年前に一応歯の治療を終えていました。
ところが、三週間ほど前にその時の詰め物が取れてしまい、
すぐに歯の治療に行かねばと思っておりました。
今もはっきり覚えているのですが、小さい頃に行った医院はとても陰気な感じで、
麻酔なしにいきなり歯を抜かれました。
その時の恐怖がトラウマとなり、今でも歯の治療がいやでいやでたまりません。
たぶん、そのせいなのでしょう、大人になってからも疼いたり、腫れたり、痛くても
我慢に我慢をして、とうとう、それらに耐えられずになってから必死の決心をして
歯科医院の前に立つのが常であった。
今回も、今日は予約をしなければと思いつつも受話器に手がのびない。
明日こそはきっと、と思いながらも予約しなかったことにほっと胸をなでおろして
いる弱虫な私です。
明けて再び今日こそは予約をと思いながらも思いきり悪く決心がつけられずに、
ただただ時間が過ぎていくばかり。しなければ、したくないのせめぎ合い。
そして、とうとう心を決めて予約の電話を入れた。
「明日はいかがでしょうか」との優しい声が電話の向うから聞えてきた。
明日は何も予定はないのに、「明後日はどうでしょうか」と一日延ばしの私。
ここにまで来てもまだジタバタしている私。
こうしてしぶしぶ治療を受け始めました。
両手をしっかりと握りしめ治療台に座る。
その様子を見て、「大丈夫ですよ、そんなに緊張しないでリラックスしてください」と
優しく声をかける先生と衛生士。
こうなったらもう「まな板の上のこい」だ。きちんと治療してもらい、今後2、3年は
医院を訪ねることがないようにしていただこうと、健気に決心をしている私である。
治療台の前の磨かれた窓の外には、青空のもと色づきの進んだ木々の美しさが
ほんの束の間だけ私をほっとさせてくれている。

秋日和の日々

2015-11-09 | 日記
 11月に入ってからずっと秋晴れのいい日が続いている。
色の少ない季節が来る前に植物たちは今年最後のお色直しに忙しい。
 澄みきった青空のもと、メタセコイアの木々の葉が少しずつ茶色をおびて来た。
やがて、その細い葉が音もなくすべて散り終ると、並木の根元には茶色の絨毯が
長く敷きつめられる。
思えば、昨年、こんな色のコートがあったら着てみたい、素敵だろう、
パリのマダムみたいにみえるかも、なんて思いを巡らしながら歩いたっけ。
今年もきっとそう思いながら柔らかな絨毯を踏みしめながら歩く日が間もなくだ。
 樹齢400年以上の大銀杏も黄葉が日増しに進んでいる。
12月に入るとその大樹の下は一面の黄金色。日に照り映えなんとも美しい。
 どうたん躑躅が真っ赤になった。
春には可愛らしい釣鐘型の白い小さな花を咲かせる。
それは清純な乙女の恋のよう。
秋には燃え盛る火のように真っ赤になる。まるで、命を燃やすかのように。
それは激しく身を焼く大人の愛のよう。
 芝生もところどころ黄ばんできた。たんぽぽが一輪咲いていた。
雀たちが忙しげにぴょんぴょんはねながら何かを啄んでいる。
常緑樹の松は変わることなく美しい緑を保ち、私の心を癒してくれる。
こんな美しい見事な色合いの風景の中に身をとけこませてのそぞろ歩きは、
私の幸せなひと時。
陽の光は数えきれないほどの葉の一枚一枚にくまなく優しく照り注いでいる。
散りゆく葉は与えられた役割を終えて静かに土に戻って行く。
葉の役割の労をいたわっているかのような陽の光。
植物または動物にもその一生に課せられ役割があるとするなら、人間である私に
課せられた役割とは何なのだろう。何だったのであろうかと、ひらひら散りゆく
葉っぱに問うてみたい気持ちである。