![]() | 就活エリートの迷走 (ちくま新書) |
| 豊田義博 | |
| 筑摩書房 |
前回のメルマガで、放送大学の「読み書きワークショップ」という面接授業
に参加したことをお伝えしました。その授業の中で、新書を1冊選択し、そ
の書評を書くというワークを実施したのですが、今回はそこで書いた書評を
紹介します。
>>>>>就活「勝ち組」の中に潜む「負け組」>>>>>
93.6%、これは厚生労働省より発表された今年の大学生の就職内定率である。
昨年より2.6ポイント改善したものの、統計を取り始めた1999年以降では三
番目に悪い数字である。「新卒無業」の学生は依然として多く、「新卒無業
−なぜ彼らは就職しないのか」(東洋経済新報社、2002年)等、卒業したの
に就職できない大学生をテーマとした書籍は多い。
しかし、本書の取り扱う就職問題はそれらとは少し異なる。厳しい就職戦線
を切り抜け、優秀な評価で有名企業に就職した「勝ち組」の若者たち=就活
エリートが、実は会社で不適応を起こしているというのだ。本書では就活エ
リートが会社で起こしている問題に焦点を当て、現在の日本の「就活」の課
題を明らかにしている。
第1章と2章では、新人の8割が「使えない」状況にあるという就活エリート
の迷走の状況と、それに至った経緯を概説している。続く3〜5章では、その
ような状況となった原因について、学生側、企業側双方の側面から分析し、
「やりたいこと探し」というキーワードから問題の核心を説明している。就
職活動時に「自己分析」というパッケージシステムによって形成される「や
りたいこと=自己のアイデンティティー」があまりにも強固なため、入社後
実際に行う仕事とのギャップを埋められないことが、就活エリート迷走の一
因となっているというのだ。
私は大学で、学生のキャリア教育や4年生の就職支援を日々行っている。
「内定取得」に向けた過度な就活力強化が、逆に就業力を下げる結果となっ
ているという本書の指摘は、大学生のキャリア教育を考える上できわめて示
唆に富むものであり、日頃の仕事を見直すよいきっかけとなった。
しかし、昨今の就活の状況生み出した背景には、本書の著者の勤務するリク
ルート社自体が大きな責任を持っていることも事実である。この歪んでしま
った就活というシステム是正のため、今後リクルート社自体がどう社会に貢
献していくのかを、本書に求めるのは望蜀の注文であろうか。
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中々堅めな語り口でまとまっているでしょ!
でも850文字と、いつもの書評よりちょっと短めですので若干補足します。
コガが本書を読んでいて関心を持った箇所は、「新型うつ」に関する記述で
す。少し前にNHKスペシャルの「職場を襲う "新型うつ"(2012年4月29日放
映)」という番組でも、この病気を取り上げており、深刻な社会問題になり
つつあると、認識していたところでした。
従来の「うつ」は、与えられた仕事を完遂できなかったり、職場に適応でき
なかったりした時、その責任を過度に自分に押し付けてしまう自責の念が
「うつ」の原因となっていました。しかし「新型うつ」は「仕事を押し付け
る会社や上司」に責任を転嫁する=他罰的な点に特徴があるそうです。その
ため、一旦職場を離れると気分はよくなり、「うつ」で休職している最中に
もかかわらず、飲み会に参加したり、海外旅行に出かけたりという行動にで
る場合もあるそうです。そうした新型うつの症状が、本書でテーマとしてい
る「就活エリート」にも散見されるそうです。
「病気ではなく、単なるサボリではないか?」と思われるかも知れませんが、
「新型うつ」はれっきとした病気です。治療にはカウンセリング等が有効と
されているようですが、「うつ」の原因を自分以外のところにおいているた
め、完治しにくいそうです。そして新型うつで休職した場合、休職者の業務
を他の職場のメンバーがカバーすることになるため、労働時間の増加等が発
生し、前述のコラムでシバタ氏が指摘しているように、職場全体のモラル低
下につながる危険性を孕んでいます。職場のマネジャーは今まで経験したこ
とのない新しいマネジメントの課題に直面しているのです。
これらの課題に対処するためには企業や職場のマネジャーには何が必要なの
か?大学は「使える」若者を育成するために、どう変革していく必要がある
のか?
本書の示す問題は、単に就活のシステムを変えるだけでは解決しない深刻な
ものであることは確かなようです。
〈文責 コガ〉
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