ブリットの休日

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浅田次郎『鉄道員』あらすじと感想

2014年11月16日 | 小説・雑誌

 第117回の直木賞を受賞した、浅田次郎の大ベストセラー『鉄道員(ぽっぽや)』を読む。

それまで短編集というのも知らなかったけど、まさかこんな話だとは驚いた。

これはまさかのファンタジーである。

“ぽっぽや”といえば、実際に映画は見てないんだけど、予告編などで雪が降り積もるホームに立つ、健さんのイメージが焼き付いているが、読後のイメージとかなり違っている。

健さんが出てる作品と思って読むと、いい意味で裏切られるだろう。

それにまさか彼がファンタジー作品に出てるとは思ってもいなかったので、今猛烈に映画も見てみたい。

 日に3本しか走らない北海道幌舞線の終着駅になる幌舞駅で、長年駅長を務めた乙松は定年を迎えようとしていた。国鉄時代を共に過ごし、今は美寄中央駅の駅長となった仙次は、一昨年妻を亡くした乙松と一緒に新年を迎えるために、最終便で幌舞駅へとやってきていた。

乙松は仙次の定年後の身の振り方を持ちかけるが、頑なに遠慮するばかり。

やがて二人は昔話に酒を酌み交わし、いつしか眠ってしまうが、真夜中仙次は人の気配を感じ目を覚ます。

「駅長さん」という声にひかれて起き上がると、出札口に赤いマフラーを巻いた女の子が一人立っていた・・・。

 短編8作品からなる本書、テーマ性といい、過去にさかのぼって想いを馳せるところといい、先に読んだ「降霊会の夜」とほとんど同じ感じだったが、より読みやすくそして遥かに情に溢れ、短編ということでより洗練された強烈な印象を残す。

読者それぞれの、過去に抱えるデリケートな部分が見透かされるように、泣きのツボを的確に突いてくるシチュエーションを作り出す上手さ。

そしてそれぞれの主人公に訪れる奇跡は、泣きたくなるほどの切なさと温もりを感じさせ、何度も読み返してしまう中毒性を生む。

 あとがきで北上次郎氏が、“本書はリトマス試験紙のような作品集だ。”

といっている。

8作品どれも面白いんだけど、特に「鉄道員」「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」はやはり印象的で、この4作品について、それぞれ支持する読者がいて、女性は「ラブ・レター」派で、男性は「鉄道員」派と、それぞれの派があり、日々激論が繰り広げられているらしい(笑)

そんな中、私は断然「うらぼんえ」だなあ。

奇跡も作りすぎの所がなく、主人公の窮地にさっそうと現れる痛快さと、希望という光が差し当てられるラストも素敵だ。

結構切ないまんまで終わっちゃうパターンが多いんだよねえ。

よし、次は「椿山課長の七日間」いっちゃおうかなあ。

ただこの作品も既に映画化されていて、観てはないけど主人公が西田敏行ということだけ知ってるので、読んでる時に彼にイメージが固定されなけりゃあいいけど、心配だ・・・。


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4 コメント

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健さん (anupam)
2014-11-18 12:16:50
逝っちゃったね、しんみり
健さん・・・ (フシ)
2014-11-18 20:29:35
anupamさん こんばんは。
今日夕方ごろ聞いてびっくりしました。
なんだかため息が出ちゃいます・・・。
そしてこのタイミングでこの記事を書いたのも、
なんだか不思議な感じがします。
ご冥福をお祈りします。
駅長さん (かすみ)
2014-11-28 23:46:26
こんばんは。^-^

鉄道員(ぽっぽや)は、随分前にテレビで放映されたのを観ました。内容はフシさんが記事に書かれているそのままの映画だったような気がします。本は、読んでないのに主人公のイメージが高倉健さんそのものではないかと、まさに高倉駅長さんでしたね。
しみじみとして、温かみを感じる作品でした。

遅くなりましたが
高倉健さんの、ご冥福をお祈りします。
映画が見たい・・・ (フシ)
2014-11-29 20:51:39
かすみさん☆こんばんは♪
どうしても映画が見たくて、久しぶりにTSUTAYAに行ってきました。
店内には健さんコーナーなるものが出来てて、
そこへいったんですが、「鉄道員」のDVDはたった2本しかなくて、
当然全部貸出されてて借りれませんでした。
もうちょっと入荷してください、TSUTAYAさん(^^;)
文庫本では、この「鉄道員」は30ページぐらいしかないんですよ。
だからだいぶふくらまして作られていると思います。
どうしてTVでやってくれないんでしょうかねえ、まったっく。

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