磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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A005献血マニア

2005年08月01日 | 【小説】 レインボー...
I.衛星放送?

A005献血マニア





 太った中年の男が寝ころんでいた。
石井の前からいたようである。

「看護婦さん。献血は好きなんですけど、注射が苦手なんですよ。なんとかならんですか?」

「わかってますよ。松田さん。注射が苦手なのに、献血が趣味だなんて、かわった人ですねー」
 大笑いをしている看護婦さん。

「趣味なんですか? 献血が」
 石井は驚いた。

「そうです。いろんな景品をくれるんですよ。そりゃ、いろんな記念品をもらえます。回数が増えるごとに記念品も豪華になります」

「松田さん、あなたが言ったら、献血もパチンコ屋さんみたいね」

 看護婦さんはなれなれしく松田に話しかける。よほど常連なんだろうと石井は思った。
「パチンコは出血大サービスって書いてあるけど、献血はこっちが出血大サービスですよ」

「松田さんは、パチンコにも献血なさっているわけですね」
「うまいこというなー、看護婦さん。笑点なら、座布団三枚だね」

「あははは……。あの看護婦さん、献血しているとき、笑っていいんですか」
 きまじめな石井は、つい笑ってしまって不安になり、そう質問してしまった。

「あまり、動かないのなら、いいんじゃないですか」
「そうですか、あははは……」
 石井は、チューブを気にしながら笑った。

「私なんか、いつも看護婦さんが冗談を言うので、笑ってますよ」
 その男も血が採られている。

 石井の機械は止まったようだ。看護婦が来て針を抜き、消毒してくれる。そうして献血は終わった。

 石井は、腕に脱脂綿を当ててながら、受付のあるホールへと行く。
「ご協力ありがとうございます」
 受付の人にお礼を言われた。照れ臭い気がする。

「あのー、あの自動販売機から、好きなものを飲んでください。血液を採ったので、水分補給する必要があるんです」

「そうですか。わかりました。献血した後には、やはりトマトジュースがいいんですか」

「トマトジュース?」
 受付の女の人は困り顔であった。

「あの、それ。もしかしたら吸血鬼のお話ですか」
 そして笑いだしていた。

「あーあー、そこから、連想したのかもしれませんね」
 まずいことを言ってしまったものだ。吸血鬼は、人の血が飲めないとき、トマトジュースを飲むと漫画に書いてあった。それが脳裏にあったのだろう。



お知らせ

また、明日から『メリー!地蔵盆』をUpします。
いよいよ、地蔵盆に入ってゆきます。

『レインボー・ループ --魔法の粉--』は、
地蔵盆が終わりしだい始めます。

よろしくお願いいたします。






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