日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

ダリ展へ 国立新美術館

2016-12-09 | 絵画



自らを天才と公言して人々を挑発するような奇行で
スキャンダラスな話題を振りまいたスペインの画家サルバドール・ダリ。

不釣り合いで唐突で現実離れした不可思議な絵。
そんな謎のなかにある「何か」が秘められているのを発見したかと思うと
曖昧なままカーテンを閉じられたような後味。
そしてダリのイメージは浮遊し、ぐにゃりとしてぼかされ、あるいは分散されていく。
夢のまた夢なのか…。

しかしダリの絵を追っていくと、いきなり奇想天外な絵を描いたわけではなく
印象派のような手法からモダニズムの時代を経て
しだいに黄金比など物理学的手法を用いて高い知性のもとに描かれているのがわかる。


「カダケス」 1923年

ダリがのちに住むことになったカダケスの町は
多大な影響を与えたモチーフで多くの作品の背景に描かれる。

「姿の見えない眠る人、馬、獅子」 1930年

基本的なモチーフで複数のイメージを重ね合わせた作品。
空の美しさと荒涼とした場所に澄んだ青の球体が神秘的。

「ポルト・リガトの聖母」 1950年

イタリアルネッサンス風の祭壇に妻のガラを聖母に描き
祭壇を一定に分離させた原子物理学の手法を用いて宗教的に描いた作品。

「<幻覚を与える闘牛士>のための習作」 1968~1970年

ダリは習作を何枚も描き15ヶ月かけて「幻覚を与える闘牛士」を仕上げたという。
ミロのヴィーナスが後方へと連続して永遠性を感じる作品。


今回は彼の画家としての生涯をたどるように
初期から晩年までの作品回顧展なので年代ごとに作品が展示されているが
それでも炸裂するようなダリの絵が少ない気がした。
あふれ出て、自分で収まりきれないほどのイメージを拡大したダリなのだから。

痛快に生きたダリの記憶は
屋根に卵が乗るスペインの「ダリ美術館」と「カダケスの家」に、
そして今私たちがこうして観賞できる絵の中に生きている。

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