路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

商店街の顔役

2007-12-31 | 『ちび太・ミロ』

学生街でもあるその街は、生活に便利な商店が立ち並ぶ。

リヤカー部隊も有名だ。昔から、漁師や商人は守り神や招き猫代わりに猫を大事にしたというが、

この街にも大事にされている猫達がいる。

兄弟猫の『ちび太』と『ミロ』だ。

『ちび太』は白の入ったキジトラ、『ミロ』はシャムの血が混じっているのか目が青い。

薬局と居酒屋の間に餌場を作って貰い、好きな時に来てご飯を食べては、遊びに行く。

リヤカー部隊の店長さんの計らいで、野菜箱に座布団を敷いたベッドまで持っている。

飼い主に飽きられたそこら辺の飼い猫より、遥かに幸せそうだ。

薬局のお姉さん、パチンコ屋のバイト君、リヤカー部隊のおばちゃん達に見守られ、

元気に街をパトロールしている「商店街の顔役」といったところだろう。



久しぶりに買い物に来た時、『ミロ』と再会した。

子猫の時にすれ違っただけなので私が近付くと逃げるが、

自転車に乗ってやって来たおばちゃんの足元を離れようとしない。

この辺では有名な猫おばさんの様だ。

自宅には三匹の猫が居て、時々自転車に猫を乗せて商店街へとやって来るらしい。



「良い引き取り手がいたら良いんやけど…、でも責任持って飼ってくれる人じゃないとね。」

そもそも、野良猫……差し上げたいんだか、差し上げたくないんだか、親心は複雑である。



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三匹の侍

2007-12-30 | 『太郎・アコ・しま次郎』

煙草屋のシャッターの隙間から、黒い影が動いた。

黒猫のタンゴの様に赤いリボンならぬ赤い首輪をしている。

これはチャンス!とばかりに近付いた。

黒いのの後ろから、少し小振りなキジトラが付いてくる。

ラッキーだと思ったのもつかの間、店の裏庭へと逃げ込んでフェンス越しにこっちを伺っている。

カメラを向けると、窓が開いた。

家の女主人が出てきた。

愛猫を撮影しているのが判ると猫達をフェンスの中から裏の公園の方へ誘導してくれた。



黒いのが『アコ』、向かいのマンションの子供達に時々パンを貰っていたらしいが、

冬に寒くなって自販機の裏で暖まっていたのを彼女に保護された。人馴れしているので

おとなしく背中を撫でさせてはくれるが、子猫の時の栄養事情が悪く一時は病気で大変だったそうだ。

キジトラは『しま次郎』、これまた冬の日に自販機の裏で暖を取っていたのを

『アコ』が連れて来たそうだ。自分と素性の似た奴をほっては置けなかったといった所か…。


雄猫というのは、人間と同様に父猫に限らず師と決めた雄猫に付いて猫生を学ぶらしい。

どうやらキジトラの師は黒いのみたいだ。


ふと、後ろで可愛い声がした。

茶トラの大きな雄猫が姿を表した。三匹目だ。

「あれが一番の古株『太郎』…新入りが気に入らんのか、あんまり家に居着かん。性格は良いのに、ヤキモチかねぇ…」

三匹とも、飼い猫なのに今まで出会ったどの野良猫よりも警戒心が強く寄っては来ない。

女主人と話す私を囲う様に遠巻きに見ている…まるで用心棒。



女主人は三匹の侍を従えた姫君に見えた。

荒野(野良)の三匹が辿り着いた先は、煙草屋の城だったのかもしれない。



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宇宙人

2007-12-30 | 『宇宙人』

「早起きは三文の徳」と言うが、私は「早起きして猫に会う」が正解だと思う。

朝日を浴びた猫達は、本当に美しいからだ。



近所の書店の開店の時間にはまだ早い。

少し散歩でもして時間を潰そうと歩いていたら、

築十五年位のマンションの広い駐車場に雌ライオン…いや、アビシニアンを発見。

血統書付きの外国猫はすっきりとした体型で小顔、雄か雌かもわかりにくい。

雌ライオンにも見えるこの猫は、やはり雄だった。

青地に小さな白い水玉模様の首輪が見える。

飼い猫は人馴れしているので、初対面でも近付き易い。


「写真、撮っても良い?」猫に聞いてみた。

猫はゆっくり近付き、タイヤ止めのブロックに前足を掛けてポーズを取った。

次は車の下の日陰へ移動し、くつろぐ。不思議な猫だ。

血統書付きの高価な飼い猫なら、部屋から出してはもらえなさそうなのに、

飼われていても外出許可のある猫の様に外に居る。

しかも、そこら辺の野良猫以上に痩せている。

撮影のお礼にキャットフードを出すと、風に飛ばされそうな位細い体で近付いて来る。

嬉しいのか、鼻炎なのか、鼻息が荒い。

それにしたって、折角の端整な顔立ちが台無しだろう。

フガフガ言いながら動く姿は、猫でなく『宇宙人』みたいだった。



マンションの駐車場で、世界征服を企んでいたのかもしれない。



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帰る家

2007-12-29 | 『髭男爵』

街へ出る為、バス停へと急いでいた。

ポツンと建った理容室の裏には、お店の四倍程の舗装されていない駐車場が見える。


白と灰色の背中が見えた。

時間は無いが見慣れないタイプの猫だったので、ちょっと挨拶だけでも…と思い、近づいた。

「ご馳走するから、おいでよ。」

始めはかなり警戒ぎみだったが、

バックにいつも持っているキャットフードを見せると近くまで来てくれた。


白地に灰色のおかめ顔、口髭の様に鼻の辺りに模様がある雄猫『髭男爵』だ。

飼い主がいないので本名が判らない。出会った記念に少し写真を撮らせてもらう。

その時、背後に視線を感じた。飼い主かもしれない。

「そろそろいかなきゃ。遅れるし、じゃぁ、またね。」

独り言の様に声を掛けて立ち上がると、背後の視線の主が見えた。

理容室からちょっと歩いた所の川沿いで良く見掛けるホームレスのおじさんだった。

私と猫のやりとりをいつから見ていたのかはわからない。

笑うでもなく、怒るでもなく、ただこっちを見ていた。



ふと目を落とすと、猫の首には「自由の国アメリカ」の星条旗柄の派手な首輪が付いていた。


  帰る家のある猫と、帰る家のない人。


『髭男爵』は砂利だらけの駐車場を、足音も立てずに帰って行った。



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君の名は…

2007-12-28 | 『ジュリー』

川沿いの道は犬の散歩をする人が多い。

可愛らしいおばあちゃんがあまり動かない小型犬を連れて知人と立ち話をする姿が見える。

近づいてみると、リードの先には犬ではなく、猫。

それも、大きなチンチラ猫だった。

この辺り(外)ではあまり見ない血統書付きの立派な奴だ。名前は『ジュリー』。

飼い主のおばあちゃんが話し込んでいる間、遊ばせてもらっていると……

まるで手加減無しの問答無用。猫パンチに猫キック…強烈で、こっちが泣きそうになっても、

何故かおばあちゃんに気付かれる前に止める強者だった。



団地の一階のベランダにネットを付けて逃げない様に飼っているが、

猫がそのネットをハンモック代わりに寝ている姿を見て、ベランダのすぐ横の道を通る人が笑う。

私もその一人で、良くネットにモップがひっかっかた様な姿で、

猫が丸まっているのを目撃した事がある。



ハンモックのモップを4~5日見掛けなかった。

偶然、買い物に出てきたおばあちゃんに会ったので、

猫の事を聞くと『ジュリー』は肝臓が悪く入院中と言う。

鬼の霍乱か。

たとえ、猫パンチと猫キックをしこたまお見舞いされてもやはり心配だ。


ずっと気になっていたら、久々にリード付きのお散歩の姿が見えた。

また猫と遊ばせてもらっていると、通りすがりの人が猫の名前をおばあちゃんに聞いた。


「リョウスケよ。」とおばあちゃんは平然と答えた。


名前なんて何でも良いから、長生きしてね、おばあちゃんも。猫も。



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やり手の親友

2007-12-28 | 『リー』

大きい。小型犬がびっくりして逃げ出しそうだ。

でも、体の割に顔が小さくて飼い猫特有のあどけない表情に思わず騙されそうになる

トリッキーな雌猫『リーちゃん』だ。

『ミーディ』の住む薬屋の二軒先のお宅、手入れが行き届いた庭付きの一軒家が彼女の家。

今日は塀の上、昨日は出窓の屋根の上。

冬の寒い日には飼い主さんの車の中…と、その時々の一番心地よい場所へ移動している。

私が通ると、挨拶を欠かさない礼儀正しいお嬢さんでもある。

お互いに時間が許せば、近くの公園のベンチに座って、じっと黙って隣に居てくれる。

まるで、昔からの親友の様だ。


猫と並んで座っていると、通る人が笑う。

子供達が立ち止まって、こっちを見ている。

猫に触りたいのだ。

なかなか通り過ぎてはくれない。こういう時の子供達は、

頑なな迄に自分の要求を満たそうとする。まるで、欲のモンスターだ。

嫌な空気を読んだのか、ベンチを降りて、子供達から遠ざかる様に

道を挟んだ歯科医院の駐車場へと避難する猫。

子供達も負けずに追い掛けて行く。

『リーちゃん』は露骨に嫌な顔をして、子供達に背を向け家へ帰ろうとしたが、

急に立ち止まり道の真ん中に「もう、どうにでもしろ」と言わんばかりにゴロンと横になった。

暫くされるがままに子供達に撫でられた後、気が済んだ子供達を後目に

「やれやれ」と言った感じの不機嫌な顔で家に帰って行った。



子供達の扱いは、彼女の方がきっと上だ。



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薬屋の看板猫

2007-12-27 | 『ミーディ』

昔からある薬屋の軒先に、三毛猫の背中が見える。

近づいてみると、右目が黒い膜で覆われ、その目は見えていない様子だ。

しかし、煉瓦塀の上に移動する身のこなしは、

良く聞こえる耳とバランスを保つヒゲがあれば大丈夫なのか、

あまり見えていなくても普通の猫と変わらない。綺麗な猫だ。

まるで自分が一番綺麗に見える場所を知っている様に煉瓦塀の上に座っている。

三毛猫と言えば、代表的な日本猫だが、煉瓦塀と古い家屋の壁が良く似合う。

そこだけ知らない外国の風景みたいで不思議な感覚を憶える。


片目が不自由なので、勝手に『ジャック』と呼んでいたが、

良く考えると三毛猫は大体が雌なので『ジャック』は失礼か…。

店の前にある自動販売機の補充に出てきた女店主が『ミーディ』と呼んだ。

お洒落で以外な名前にびっくりした。

猫と遊ぶ私に、子猫の時に痩せてボロボロの姿でやって来て、

餌をあげたら居着いたので、ずっと飼っている…と話してくれた。


「片目やけど、綺麗な猫やろ。独りじゃ可哀想やけんね…」

と笑顔で話す女店主は、

少し足が不自由な様子で、足を引きずりながら歩きにくそうに店内へ戻って行った。



「足が悪いけど、心の綺麗な人やろ。独りじゃ可哀想やけんね…」

 猫が、こっちを見ていた。



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