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林原-経営破綻-同族経営の功罪

2019-04-08 00:01:05 | 林原-同族経営の功罪

 

 バイオ企業の林原(岡山市) http://www.hayashibara.co.jp/ の唐突ともいえる経営破綻から4年。林原の借入金総額は約1400億 円。中国地方の金融機関では中国銀行のほか山陰合同銀行,広島銀行,鳥取銀行が貸し付けており,合算で約500億円であった。林原の主力取引銀行の一つである中国銀行は,体力以上の無理な開発投資を継続したことが経営悪化の主因とした。

 当時のマスコミは概ね,経営破綻の要因は,無理な開発投資が業績悪化を招いたとし,経営破綻の背景・原因を次のように分析していた。「 林原は食品原料や医薬品の製品化を,基礎研究の段階から手掛けているため,長期にわたり開発投資が先行する事業構造になっている。このため金融機関からの 借り入れで資金調達を進めてきたが,景況悪化で保有する土地や有価証券の資産価値が劣化し,資産規模に対して債務が膨らむ状況に陥っていた。

 

 同社の元社長林原健氏が, 2015/8/26     日本経済新聞で, 倒産から4年,林原元社長が語る兄弟の「自立と絆」 http://www.nikkei.com/article/DGXMZO90410280R10C15A8000000/ -と題して現在の心境を語っている。記事によると,健氏は大学の名誉客員教授として教壇に立つほか,複数の企業で製品開発などのアドバイザー役を務めている。岡山を拠点にして,東京や各地を行き来する日々をすごしているという。

 健氏は,経営破たん原因の一つは,研究開発に没頭する自身(社長で兄の林原健氏)と経理担当を務めていた専務で弟の靖氏とのコミュニケーション不足にあったと語っている。また,同氏は弟の靖氏ついて,こう話している。「そのうち、私のところにやって来るかもしれない。そのときは会おうと思っている」とし,わだかまりと確執はいまのほぐれていないと告白している。

 この日経新聞の記事を読んで,手許の健氏著”『林原家 同族経営への警鐘』,靖氏著 『破綻──バイオ企業・林原の真実』を読み返し,同族経営のあり方,さらには我が身を振り返り「兄弟の絆」を考えてみた。

 

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 ┃┃ 林原の経営破綻に関する兄弟の見解の相違  
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バイオ企業の林原(岡山市) http://www.hayashibara.co.jp/ の唐突ともいえる経営破綻は,兄で社長の林原健氏と実弟で専務の林原靖氏の辞任で同族経営に終止符を打った。同社は専門商社,長瀬産業(東京都・資本金96億9900万円 ) http://www.nagase.co.jp/ をスポンサーに更生を進行。長瀬産業の完全子会社になり,2012年3月には更生手続き終結が決定した。主力事業である天然甘味料「トレハロース」をはじめとする食品素材,美白効果のある化粧品素材「AA2G」など,幅広い分野で事業を展開している。

 ⇒⇒ プレスリリース  2012/03/26 更生手続終結決定のお知らせ http://www.hayashibara.co.jp/press.php?id=370

>>>経営破綻の原因    兄・林原家が悪かった - 弟-銀行に潰された

 元社長林原健氏は,同族経営の内実を明らかにする単行本『林原家 同族経営への警鐘』を2014年に上梓。その冒頭で「多大なご迷惑をおかけしたことを、元社長として心よりおわびしたい」とし,「健氏は,“林原が倒産した原因は,経理部門を任せていた弟,林原靖と私の関係性にある。もっといえば,林原一族の特異性こそ倒産の真因が宿る」(p4)と自省の念をしめしている。

 林原家が悪かったとする兄・健氏に対し,弟で元専務の靖氏は,“世界的優良企業「林原」は,銀行に潰された”と訴えている。 著書『破綻──バイオ企業・林原の真実』で次のように書いている。林原は、食品甘味料や保存料などに使われる糖質・トレハロースの量産化に世界で初めて成功した会社である。1998年の秋以降、新製品のトレハロースを軸に快進撃の10年が始まり,「林原」の 業績はいたって堅調だった。売り上げは伸び、利益は確実に出ていた。ただし,グループ全体で1300億円超と巨額の借り入れが問題ではあったが,金利はきちんと支払い,直近の10年で350億円を返済していた。

 靖氏によると,裏で歩調を合わせた主力取引銀行2行が,銀行借入残高報告の数字が違うことを問いただしてきたことを発端に,“破綻劇”の幕が開いた。「林原」は会社更生法の適用を受け,入札にかけられ,700億円で競り落とされた。弁済率93%の倒産であった。
  「資産もあり,赤字もなく,利息も払い続け,債務も減少していた会社が,なぜ、会社更生法の適用を受けなければならないのか!?」とし,次のように言い切っている。
 ―わたしはいま,はっきりと確信している。破綻劇の幕を開けてしまったのはメインの中国銀行と,サブの住友信託銀行だと。彼らの一連の対応が大きな誘因であった。


              。+゜☆゜+。Y⌒Y⌒Y。+゜☆゜+ 兄弟の確執 。Y⌒Y⌒Y。+゜☆゜+。Y⌒Y⌒Y+
   

 林原兄弟の母の英子さんは経営破綻の翌年にが亡くなった。その時,英子さんは会社から資金を受け取っていたが,それ貸付金などの形となっていたため,13億円以上という莫大な借金となっていることが,判明した。

 この母親の借金に関連して,林原健氏は著書『林原家 同族経営への警鐘』(p94~p95)で,実弟で元専務の靖氏に対する,縁切り宣告ともいえる弟への叱責を次ぎのように綴っている。

>>>確執 兄の叱責  「今後一切,おまえと仕事をすることはない。会うこともない」
  母が亡くなったとき、誰から聞いたのかは知らないが、弟が病院に駆け付けた。私は彼を手招きして,二人きりであることを確認すると,こう言った。
「おまえが会社にしたことは許してもいいと思っている。社長として私が至らなかった面も大きいからだ。けれど,おまえが母さんを借金まみれにしたことだけは許すわけにいかない。母さんの葬式も,一部の親族に限定した家族葬にしようと思っている。親戚の前に顔を出したらやり玉に挙げられるから,おまえは来ないほうがいいだろう。いいか,今後一切,おまえと仕事をすることはない。会うこともない」 (p94~p95

>>>確執 弟の反論

 兄の叱責,そして縁切り宣告に対して,弟の林原健氏は,自らのブログ “「号外・「林原家」について” http://blogs.yahoo.co.jp/gra_yasushi/32719847.html で,次のように反論している。

・母親英子が死去した時に「借金まみれ」であったことを,あたかも,私が「盗んだ」ごとくにとり得る表現があるが,しかし、債務のみが多く残った理由は理由は明快であり,以下の通り。

 1. 母親はかって上場前の中国銀行株式を70数万株保有していたが(直近時価では14~15億円),わたしは極めてはやい段階で「母や兄と相談」して,将来の相続対策もかねて上場前一株50円で数年かけて兄の妻と子供3人,私の妻と子供2人に譲渡した。母はあえて自分の資産の大部分を7人に引き継いだので所有株式はなくなった。

2. 亡父一郎死去時の母の相続税の借入金に対する利息が50年に亘って計上され,直近死亡時の債務13億円のうちのほとんどが利息相当部分である。ちなみにこの利息の直近10年間の金額は「未払金」として概ね明快に記載されている。

3. もちろん「気前の良いおばあちゃん」として孫・子はもちろんのこと親戚や知人まで,幅広くお小遣いを弾んでいた事も沢山ある。

4. 生前に不動産も所有していたが,ほとんど売却してすべて会社からの借入金返済にあてている。

5.背景に70年以上に亘って献身的に夫や長男を支えた母親にはやがて相当額の退職金が支払われ,債務の一部は返済できるし、あるいは、亡父の時のように来る相続時に被相続人が多大の税金を支払わないようにしたいという意識は私にはもちろんあった。
       

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 >>>林原に関するブログ記事一覧

 「林原の経営破綻」から,同族経営のあり方を考える ・1(確執 その1) 2014-06-26

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林原家 同族経営への警鐘

私は棺桶の中まで、真実を持っていくつもりだった

 「これから『同族企業の雄』として持ち上げられた林原の実態をさらけ出す。日本企業は同族企業の割合が世界の中でも飛び抜けて高い。その一角を占めた私たちの失態をぜひ教訓にしてもらいたい。それが今の私にできる最後の責務だと思う。
 さあ見ていただこう。これが株式会社林原、そして林原家の真実である」(まえがきより)。

 父、林原一郎との対立、末弟との絶対的上下関係、早世したもう一人の弟との約束。林原家に深く埋め込まれた、破綻に向かう必然のストーリー。

日経BP社

 

破綻──バイオ企業・林原の真実


著者は、2011年2月2日に会社更生法の適用を申請したバイオ企業の雄であった「林原」の元専務林原靖氏です。

半沢直樹もたじろぐ-銀行の悪行???。

 

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