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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

竹中平蔵の子分木村剛被告人らに整理回収機構が50億円請求 小泉構造改革の罪

2011年08月24日 | 法律と裁判・事件


今回は司法試験受験生の会社法の勉強になる話です。


某府知事は(京都府知事、ごめんなさい)はこのSFCGの顧問弁護士でしょっちゅう大阪簡易裁判所で取り立て訴訟やってましたなあ(僕は大阪府知事。今、謙虚に振り返る時、感謝の気持ちで一杯です。)。

彼が公務員制度「改革」の参考にした、彼の知っている「民間」なんて、引退された島田紳助さんに誘われたテレビと商工ローンくらいのものです。

ちなみに島田紳助さん事件については、昨晩ツイッターで散々つぶやいたので、そちらをご覧ください(ブログ右にバナーがあります)。



 

さて、2010年9月に経営破綻した「日本振興銀行」の元役員木村剛元会長ら元役員7人らが、商工ローン大手の「SFCG」から回収の見込みの低い多額の債権を買い取り銀行に損害を与えたとして、整理回収機構が、50億円の損害賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。

日本振興銀行の開業は2004年4月。中小企業への無担保融資を看板に掲げましたが、融資は伸びず、2006年度まで経常利益は赤字を続けました。業績が上向いたのは、サブプライム問題をきっかけに資金繰りに困った商工ローンの債権を安く買い取れるようになった2007年後半からです。

しかし、もともと「腎臓売れ」と債務者に迫ってきたような業界ですから、法令違反が次々に発覚。2010年6月には、金融庁の検査を妨害したとして、銀行法違反(検査忌避)の疑いで警視庁の家宅捜索、逮捕、起訴されるにいたっていました。


今回は会社法429条1項「取締役の第三者に対する責任」の追及です。

整理回収機構によりますと、木村元会長らは、平成20年の10月と11月、商工ローン大手の「SFCG」から回収の見込みの低い債権を買い取り、銀行に合わせておよそ150億円の損害を与えたとして、このうち50億円の損害賠償を求められています。整理回収機構によりますと、買い取った債権は、銀行から借り入れができない商工ローンの債務者に対するもので、債務不履行になるリスクが高かったということです。

「SFCG」は、おととし4月に破産手続きの開始決定を受けており、整理回収機構では、7人が当時「SFCG」の資金繰りが苦しくなっていたことを極めて容易に認識できたのに、注意を怠ったとしています。

まさに「経営判断の原則」の論点。

整理回収機構側は、8月23日、記者会見を開き、「金融機関の役員として、当時『SFCG』が危険だと知らなかったでは済まされない。なぜそうなったのか、裁判の過程で明らかにしたい」としています。一方、整理回収機構は、去年5月から11月にかけて、木村元会長が、近親者の所有する日本振興銀行の株を買い取って1億6000万円余りを支払うなどし、銀行に損害を与えたとして、木村元会長に対し支払いを求める訴えも東京地方裁判所に起こしました。


 

日本振興銀行とはなんだったのか振り返ってみましょう。

日本振興銀行の経営を主導してきたのは、小泉政権下で竹中平蔵金融担当相のブレーンとして金融庁顧問も務めた木村剛氏です。木村氏は2004年9月に筆頭株主、翌年1月に社長就任。同年6月に会長に転じましたが、行政処分を受ける直前の今年5月、会長を退任しました。

 

日本振興銀行は金利の「空白地帯」を開拓するとして、5~15%の金利を設定しました(銀行業界のサラ金)。しかし、銀行や信用金庫の中小企業向け貸出金利の相場が2~5%です。もともと薄利の中小企業が、5~15%の金利を支払って、事業を継続できるはずがありません。

また、高金利を支払わなければたちいかないような中小企業に既存の銀行が貸し出すのは困難です。金融庁の厳格な検査で「要管理」以下とされる蓋然性が高いからです。もともと、この「厳格な査定」(いかに恣意的だったかは後述)をルール化したのが木村氏です。

唯一貸し出せるのは、ルールを適用されない“木村銀行”こと日本振興銀行だったのです。

これは、木村氏が小泉・竹中ラインの圧力を使って、金融庁と密約あってできたことなのだと疑われても仕方ないのです。

 

そもそも、日本振興銀行の開業は、予備免許の申請からわずか8カ月後でした。審査をしていないとも思える、異常ともいえる速さです。なぜこんなことが可能になったのでしょうか。

それを可能にしたのが金融庁が2002年10月に発表した「金融再生プログラム」、いわゆる「竹中プラン」です。そのなかで、「中小企業の資金ニーズに応えられるだけの経営能力と行動力を具備した新しい貸し手の参入については、銀行免許認可の迅速化を積極的に検討する」という一文が盛り込まれました。

この竹中プランを作ったプロジェクトチームの主要メンバーこそが金融コンサルタントの木村氏です。日本振興銀行とは、その木村氏が東京青年会議所の例会に呼ばれて「いまなら銀行をすぐに作れる」と発言し、動き出した計画でなのです。


作家の江上剛氏も社外取締役になっていますが、こんな銀行の客寄せパンダとして利用され、今回も整理回収機構に50億円も請求された被告の一人です。これぞ「名目的取締役」の責任の論点ですね>司法試験受験生

日本振興銀行と木村氏の不透明な関係を巡っては、2005年に木村氏の妻が代表取締役となっている会社に約1億7千万円を融資したこと、その際、融資が可能になるように内規を変更したうえ、他の融資と比べて極めて低い3%の金利で貸し出していたことも判明しています。

そして、これぞ小泉改革の本質です。考えているのは自分たちの利益のみ。



竹中プランは景気回復に何ら寄与しなかったばかりか、デフレ不況下に強引に不良債権処理を進め、かつ緊縮財政を断行したため、国内需要を根こそぎ破壊してしまい、地方の商店街をシャッター通りに変えてしまいました。

また、不良債権処理を進めるにあたり、金融庁の資産査定が行われましたが、その査定がどれだけ不適切であったのか、2004年以降のメガバンクの決算を見れば、火を見るより明らかでしょう。

たとえば、竹中氏率いる金融庁に追いつめられ、東京三菱銀行に実質吸収され「消失」したUFJ銀行は巨額の貸倒引当金戻り益を計上しました。正常債権を不良債権に落とすことを目的とするかのような資産査定によって必要のない引当金を積まされたことが明らかになったわけです。

また、そんな銀行「救済」のために、なぜ公的資金=税金を投入する必要があったのでしょうか。

 

小泉さんが現れればいまだに写メをする人がたくさんいます。

竹中さんもいまだに経済評論をしています(大学でも教えているでしょう)。

しかし、恣意的な裁量行政によって弱者を切り捨て、一国の経済をここまで破壊した竹中氏が社会的制裁を受けずにいられるのが信じられません。その子分として片棒を担いだのが木村氏だけが民事・刑事の責任を追及されているのは、まさにトカゲの尻尾切りではないでしょうか。

 

そして、この二人のやりたい放題を許した小泉政権は史上最低の内閣だったのです。

小泉内閣は、プルトニウム入り燃料を使うプルサーマル原発を推進した張本人です(与謝野馨「原発事故は神様の仕業」 中曽根・小泉・安倍自民党原発推進議員人脈 地下式原発議連のお笑い)。

小泉純一郎、竹中平蔵という人たちの責任を追及できるようになったとき、日本の政治は一皮剥けたと言えるのではないでしょうか。


 

 

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振興銀元役員7人を提訴=50億円賠償求める-整理回収機構

 商工ローン大手SFCG(旧商工ファンド、破産手続き中)から、額面相当の価値がないことが明らかな債権を大量に買い取るなどし、日本振興銀行(民事再生手続き中)に損害を与えたとして、同行の債権譲渡先である整理回収機構は23日、木村剛元会長(49)=銀行法違反罪で起訴、公判前整理手続き中=ら同行元役員7人に対し、50億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
 他に訴えられたのは、社外取締役だった小畠晴喜元社長(作家名・江上剛)や平将明衆院議員ら。
 同機構は訴状で、SFCGから買い取った債権について、「ノンバンクのSFCGから高利で借りざるを得ない債務者への債権であり、不履行となるリスクが高く、額面通りの価値がないのは明らかだ」とした。(時事通信 2011/08/23-20:24)

 


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1 コメント

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強引すぎるのでは? (へいほ)
2011-10-16 05:45:49
日本振興銀行の事件を元に、原発関連の批判まで行い、小泉改革の全否定を行うという論法は、弁護士らしからぬ議論の展開ではないでしょうか?

金融に話を戻すと、法改正なしに、個人向けの消費者金融業界は壊滅に追い込まれてしまいました。
20%以上の金利では成り立っていた業界が、15%にすると成り立たない。

>もともと薄利の中小企業が、5~15%の金利を支払って、事業を継続できるはずがありません。
商工ローンの強引な取りたてによるものかも知れませんが、これ以上の金利を支払っても借りて商売を継続していた事業者がいるのも事実です。
一般の銀行が、「厳格な査定のために、貸せない」マーケットに日本振興銀行が乗り込んだとすれば、一人勝ちになるはずではないでしょうか?
逆に、ひとりしか貸し手がいないにも関わらず、成功できないとすれば、マーケット(客がいるという意味ではなく、商売として成り立つちいう意味でのマーケット)がなかったと考えられ、5~15%で借りようとする顧客に貸し手はいけないという厳格な査定は正しかったということでは?

5%~15%が高いという感覚は、この15年程度のものです。
20年程前には、住宅ローンの金利が8~10%ということもありました。
一般企業でもそれに近い水準で銀行から資金を借りていました。
社会全体としては、10%を超える金利は高いという社会環境であることは事実ですが、業界や、伸びている最中の企業にとっては、支払えない金利ではないかと思います。
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