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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

シリアへの米仏の軍事攻撃は国際法違反だ

2013年09月01日 | 人権保障と平和

イラク戦争は何のための犠牲だったのか

 

 

シリアのアサド政権が化学兵器を使用して多数の市民を殺害した疑惑が持ち上がっています。

アメリカの報告書によれば、その数、千四百人を超えるというのですから、このままにしておけないというのはわかります。

しかし、イラク戦争でも大量破壊兵器があるという口実で戦争を仕掛け、数十万人の市民が死亡し、数百万人が難民になったあげくに、大量破壊兵器はなかったということが判明しました。

今回の化学兵器の使用も政府側が使用したのか、反政府側なのかを国連の調査団が調べ始めたばかりです。この段階でシリア政府が使用したと決めつけるのがまず無理筋です。イラクでもIAEAの査察が済まないうちにイラク戦争が始まってしまったことを思い返すべきです。このまま、アメリカの武力攻撃が始まってしまうと、本当にシリア政府が化学兵器を使用したのかの証拠もうやむやに消滅してしまうでしょう。

イラク戦争開戦から10年 戦争は、破壊は、報復は、誰も幸せにしなかった


もし、シリア政府が化学兵器を使用したという確証が得られても、そもそも、米英仏だけにどうして制裁を加える権限が認められるのでしょうか。国連安保理決議もないままの私的制裁が合法化される根拠はありません。いや、国連安保理決議があったとしても、自衛権の行使でさえないこのような武力行使は国連憲章上合法とされる余地はありません。

シリア政府の化学兵器使用がはっきりした場合には、シリアに対する制裁は、経済制裁を軸に、国際社会が国連決議に則って一致協力して行うべきです。そして、シリアに化学兵器禁止条約への参加を求めて、化学兵器の全廃を促していくべきなのです。

逆にイラク戦争後のイラクの惨状を見れば、武力行使で得られる平和はないというべきです。シリアへの武力行使はイラクにはなかった大量破壊兵器=生物化学兵器がシリアから世界に拡散するという最悪の事態を招きかねません。

英国議会は政府の軍事攻撃に歯止めをかけました。アメリカのオバマ大統領も議会の事前承認を求めています。イラク戦争の「失敗」で米英もそれなりに慎重になっていると言えるでしょう。

しかし、もしオバマ政権がシリア攻撃を実行したなら、必ず、日本政府は賛同することを求められるでしょう。以上のように国際法違反のシリア攻撃に賛成すべきではありません。

そして、今問題になっている集団的自衛権の行使を認めることは、シリア攻撃のような武力行使をアメリカがして反撃を受けた場合に、日本も参戦することを意味することを肝に銘じるべきです。

 

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毎日新聞 2013年09月01日 19時52分(最終更新 09月01日 20時26分)

シリアへの軍事作戦に乗り出すため、米議会の承認を求める方針を明らかにするオバマ米大統領(右)=ホワイトハウスで2013年8月31日、AP
シリアへの軍事作戦に乗り出すため、米議会の承認を求める方針を明らかにするオバマ米大統領(右)=ホワイトハウスで2013年8月31日、AP

 【ワシントン白戸圭一】オバマ米大統領は31日午後(日本時間1日未明)、シリアのアサド政権による化 学兵器使用について声明を発表し「米国はシリア政権を標的に軍事行動を取るべきだと決断した」と明言した上で、軍事行動の事前承認を米議会に求める考えを 明らかにした。休会中の議会は9日に再開予定で、シリア攻撃は実施される場合でも9日以降となることが確実になった。

 米国の大統領が第二次大戦後、軍事行動前に議会に承認を求めるのは極めて異例。当初米国と合同で攻撃に 踏み切る姿勢を見せていた英国で29日、攻撃容認の動議が下院で否決されるなど国際社会で攻撃への反対論が拡大していることや、米国内のえん戦機運を踏ま え攻撃の正当性を高める狙いがあるとみられる。米議会では攻撃への反対・慎重論もあり、大統領の決断が承認されるかは不透明だ。

 オバマ大統領は ホワイトハウスで声明を読み上げ、アサド政権の化学兵器攻撃を「人間の尊厳に対する冒とくだ」と非難。「化学兵器使用は、使用を禁じた世界の取り組みをあ ざけり、イスラエル、ヨルダン、トルコ、レバノン、イラクなどシリア周辺の同盟・友好国を危険にさらしている。化学兵器が再び使われ、人々を傷つけるテロ 組織の手に渡る可能性が高まっている」と述べ、軍事行動の必要性を訴えた。

 その上で「行動を起こす時は、我々すべてが責任を持つべきだ」と、議会に承認を求める理由を説明。「私 には議会承認なしで軍事行動を始める権限があるが、議会承認によって国は強くなり、我々の行動も効果的になる」と述べ、議会承認が攻撃の正当性を高めると の認識を示した。

 国連安保理については「完全にまひしている」と述べ、安保理決議がなくても独自の判断で攻撃に踏み切る考えを改めて説明した。

 大統領は声明に先立ち、共和党のベイナー下院議長や民主党のリード上院院内総務ら議会幹部に軍事攻撃の 決断を伝え、議会承認を求める方針への同意を得た。政権側は31日、上院の与野党幹部に電話で理解を求めたほか、1日には下院議員を集めてシリア情勢につ いて説明する。上院は3日に外交委員会を開いて審議を始める予定だが下院は予定通り9日に再開する。

 

 

英、シリア軍事介入を断念 下院が議案否決
首相が意向

2013/8/30 11:42 日本経済新聞
 【ロンドン=上杉素直】英下院は29日、英国がシリア軍事介入に参加する前提となる政府提出議案を反対多数で否決した。キャメロン英首相 は「政府は議会の意思に従って行動する」と語り、軍事介入を断念する意向を示した。最大の同盟国である英国の離脱は米国にとって痛手だが、米政府は同日、 議会にシリアのアサド政権による化学兵器使用の根拠を提示。軍事介入に踏み切る方針を崩していない。

 英下院は政府が提示した英軍のシリア軍事介入を認める議案を賛成272、反対285で否決した。

 英政府は国連が週明けにもまとめるシリア現地調査の報告内容を見極め、再度の議決を経てから軍事介入を最終判断する意向を示していた。アサ ド政権による化学兵器使用の明確な根拠を求める与野党の慎重論に配慮した二段構えの戦略を取った。その入り口でつまずいたことは英政府にとって大きな誤算 だ。

 キャメロン英首相は「英国民の意見を反映する英議会が軍事行動を望まないことがはっきりした」と下院の決定を尊重する考えを表明。首相は議会の承認が無ければ、軍事介入に乗り出さない方針を強調してきた。議会が方針を変えない限り、英国のシリア軍事介入は困難になった。

 英国の直近の世論調査では半数がシリアへのミサイル攻撃に反対している。英政府にとって、世論の反対を乗り越えるのは容易ではない状況だ。

 英議会では野党労働党が「軍事介入を認めるには説得力ある証拠が必要」(ミリバンド党首)と現時点での軍事介入の承認に強く反対。政府が 29日に示した証拠が、アサド政権による化学兵器使用を断定するには説得力が足りないとの見方も議員の間で多かった。イラク戦争に参加したブレア政権の判 断が近年、国内で非難を浴びている経緯もあり、与党内にも軍事介入に慎重論が残る。

 シリアでの化学兵器使用疑惑に端を発した国際社会の動きは、英国が国連や主要国との調整役を務め、米仏との軍事介入に向けた先導役を果たし てきた。シリア攻撃の有志連合の一角を占めると目されてきた英国の離脱で、内戦状態のシリア情勢が混迷を深める可能性がある。2015年に総選挙を控える キャメロン英首相は国内での指導力低下が避けられない。


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4 コメント

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こちらの情報は (太平)
2013-09-02 10:19:59
「平和の風」MLでの投稿には、「反政府側の発表で、誤って化学兵器を爆破させた」とあります。こちらの情報の真偽を検討していただきたい。
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国益のため (N.O.)
2013-09-03 03:10:36
米国とフランスは、ここで一時的にどんな嘘をついても中東を制圧するのが国益だと考えているのではないですか。
福島の事故で、原子力発電は危険すぎるとわかったのでは。
また、景気を刺激する効果もあります。
中東諸国はキリスト教圏ではないので、犠牲にしても恥ずかしさを感じなければならない相手だとは思っていないのではないですか。
返信する
Unknown (kei)
2013-09-05 17:12:07
国連決議に則っては勿論のこと、安倍首相が本気で「戦後レジームからの脱却」を望むのならば、アメリカ追随は止めて、独自外交で尽力するべきです。
日本との関係が良好なトルコを始め、シリア近隣諸国との連携を固めてから方向性を決めるのが一国の首相のやるべきことなのではないでしょうか。
今の調子では近隣諸国を巻き込んで泥沼になる可能性が高いアメリカのシリア攻撃に対して何の思慮も窺えません。
国の運命をこんなに簡単に他国に預けるようでは首相の資格は有りません。


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Unknown (化け鯨)
2013-09-06 02:50:26
日本人は恩義に対して非常に忠実な民族です。日本の平和はアメリカ人や他国の民族の血で築かれているといっても過言ではありません。
これほどの大国で自衛権すらないことがおかしいのではないかと思います。アメリカに恩を売らせないためにも日本がアメリカの犬にならないためにも確固たる自衛力が必要だと思います。

今回のシリアはでっち上げなのでしょうか。真実なのでしょうか。それすらも私たちは知りえないのです。強いものが正義となり歴史となる。やはり、世界を変えるのは日本しかないのではないでしょうか。

なんだか、言ってることがめちゃくちゃですね。
ごめんなさい。
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