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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

「秘密保全法」はF35戦闘機導入のために作られるリーク防止法 中国漁船衝突ビデオ流出は二度となくなる

2011年10月08日 | 人権保障と平和


政府は、国の存立にかかわる重要情報を「特別秘密」に指定し、漏洩させた国家公務員らに懲役10年という厳罰を科す「秘密保全法」法制化の作業に着手しました。

どう名前をつけようが、これはこれまで何度も立案されては国民が廃案になんとか持ち込んできた、国家機密法とかスパイ防止法とか呼ばれる法律です。

野田政権は、来年の次期通常国会に、新法として法案提出をめざすとしています。


(航空自衛隊の次期戦闘機となるのが確実になった「秘密の塊」ロッキードのF35戦闘機)

 

 

今も国家公務員法の秘密漏洩罪など国家機密を守るための刑事規定はあります。この上、秘密指定の範囲や処罰対象を広げすぎると、国家による情報統制の恐れが出てきます。というか必ず広げすぎるに決まっています。公務員も厳罰をおそれ、メディアの取材に応じにくくなるでしょう。

つい最近判決のあった沖縄返還密約訴訟では、外務省による秘密文書の廃棄が明らかになっています。

「秘密保全法」=国家機密法は、報道機関の取材の自由・報道の自由を制約し、国民の知る権利を侵害する悪法です。

沖縄返還密約文書開示請求訴訟 原告ら逆転敗訴 外務省が文書を隠すか捨てるかしてしまった!

(裁判所は財務相と外務省が沖縄返還について日米で裏約束があったという密約文書を保持していたことを認めましたが、東京高裁はもう両省がそれを廃棄したので公開はできないと原告の請求を棄却したのです。官僚の情報隠蔽こそ犯罪として処罰する法律が必要です)

 


この法律では、政府の「情報保全に関する検討委員会」の下、有識者会議がまとめた報告書によると、特別秘密の対象とするのは、「国の安全」「外交」「公共の安全と秩序維持」の3分野の情報とされています。非常に抽象的ですね。

しかも、国が持っている情報だけではなく、民間企業や大学の情報も「特別秘密」に指定できるというのです。

また新法の別表に具体的事項を列挙しておき、これに該当する情報を、所管大臣が個別に特別秘密として指定するというのですが、ころころ替わる大臣が判断するのは実質的には不可能ですから、それぞれの省庁の官僚が決定することになります。

そうなれば、薬害エイズ事件で証拠隠滅を計った旧厚生省の役人のように、国民軽視・省益重視の官僚が国民の知る権利を犠牲にして保身を計ることは必至でしょう。

(薬害エイズ事件でも、危うく厚生省の責任を追及できる書類がすべて破棄される寸前でした)



つまり、官僚に操られた所管大臣が秘密の指定をすると言うことであれば、国家のあらゆる情報を秘密指定して、国民に必要な情報まで隠そうとしているのはもはや明らかではないですか?

たとえば、やらせシンポジウムを連発するような経産省が、原発の安全性について、なにを秘密にするか考えれば、この法律がどれだけ国民の利益を損なうかがよくわかると思います。

この法律も、原発推進のために、原発再稼働ができるかどうかの安全審査の真実を隠すために利用するつもりかもしれません。

保安院のやらせを産んだ原発推進利権 自民党・経産省・財界・マスメディア・自治体の癒着の構造

(自民党政権・経産省・保安院のプルサーマル推進のためのやらせシンポジウムも、自民党政権のままなら闇に葬られていたかもしれません)

 


ウィキリークスによって、この国の政治の暗部が暴かれたことも多数あることを見れば、この「リーク防止法」とも言うべき法律はむしろ時代に逆行しています。

今回の国家機密法法制化のきっかけは、海上保安官による尖閣諸島での中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突ビデオ流出とされています。

しかし、あのビデオが流出して何か国家の安全が脅かされたでしょうか?

むしろ、国民が政治的判断をする情報を得ることができたはずです。あのような行為をさらに重罰で禁じるというのは国民の利益に反します。


(このビデオが流出したからと言って国家の外交・安全保障が害されるという事はありませんでした。国民の知る権利が全うされ、主権者たる我々が必要な情報を入手できたのです)

 


例えば警察庁による要人警備配備計画など真に守る必要がある秘密については、個別の対応をすべきで、「秘密保全法」のように網羅的な法制度は弊害しかありません。

むしろ、ほとんどの場合、国家秘密が明らかになることの弊害より、秘密裏に隠蔽されてしまう害悪の方がはるかに大きいのは明らかです。裁かれるべきはリークより、国民に公開されるべき情報の隠蔽・廃棄です。そちらの法制化の方が緊急でしょう。

密約と言うが核兵器が持ち込まれていることは政治家もマスコミも国民もみんな知っていた


この法案を持ち出すきっかけは、尖閣諸島のビデオ事件であると説明されていますが、私は急にこの話が出てきたので、「日本の次期戦闘機はやはりF35に決まっているのだな」と思いました。

次期戦闘機=FXを巡っては、ヨーロッパで開発された「ユーロファイター」、アメリカ製の「FA18」、それにアメリカなどが共同開発している「F35」が候補になっており、来月決定する予定です。

このうち、F35は実はまだ完成品がこの世に存在しない開発中の第五世代の高ステルス戦闘機で、自衛隊が次期戦闘機を導入する2016年度に間に合うかどうかも怪しいと言われています。

1機100億円以上します。高ステルス機能といい、ミリタリーファンにはたまらないでしょうが、日本には不要な戦闘機だと思います。



秘密保全との関係で言うと、敵のレーダーにとらえられにくい最新のステルス性が盛り込まれているF35は米国など9か国の開発で、技術に関して日本など外国に公開する機密情報は非常に少なく、日本企業が主導権をとる形でのライセンス国産は難しいことがネックになっています。

日本の防衛産業関係者には、F35が採用されれば、国内企業は最終的な組み立てしかできない「単なる下請け」になりかねない、との警戒感が強いのです。

しかし、F35を導入すると莫大な権益が得られる人たちがいるようです。



そこで、F35戦闘機を主に開発した米ロッキード・マーチン社が、日本の防衛産業にF35の製造技術を一定程度開示し、主要部品の製造やエンジン組み立てなどを認めることを防衛省に提案していると報道されました。

これ自体がF35導入を正当化するリークで、都合の良い情報だけリークする典型例です。

結局、「秘密保全法」はF35戦闘機導入のために一部技術を開示しても安全なように、日本政府が制定するようアメリカが要請したのだと思いますよ。

誰のための秘密保持なのか。

あらゆる意味で日本の国益に反する秘密保全法=国家機密法=リーク防止法には断固として反対すべきだと考えます。

 

 

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F35の主要部、国内企業も参加…米社提案

公開された戦闘機F-35のコックピット・デモ機(7日、東京・千代田区で)=池谷美帆撮影
 
戦闘機F35 “操縦席”公開

 航空自衛隊の次期戦闘機(FX)の機種選定で、有力候補とされているF35戦闘機を主に開発した米ロッキード・マーチン社が、日本の防衛産業に F35の製造技術を一定程度開示し、主要部品の製造やエンジン組み立てなどを認めることを防衛省に提案していたことが7日、わかった。

 共同開発に参加した米英など9か国以外に製造過程への参加を認めるのは初めて。同社関係者は「米政府が日本に対し、広範囲の技術開示を行うことを了承した」と説明している。

 F35はレーダーにとらえられにくい最新のステルス性が盛り込まれ、最先端の「第5世代機」に位置づけられているが、機密部分が多く国内産業が最 終的な組み立て以外は関与できないことが問題視されていた。一定の技術開示が認められたことで、選定でF35が有利になる可能性が出てきた。

 ロ社は7日、F35のタッチパネル式コックピットを公開、先進性をアピールした。

(2011年10月8日03時06分  読売新聞)

 

 

秘密保全法、通常国会提出へ=漏えいに最高懲役10年検討

2011年10月7日3時6分 

 政府は6日、外交や治安などに関する国家機密を公務員が漏えいした場合の罰則強化を柱とする「秘密保全法案」(仮称)を来年1月召集の通常国会に提出す る方針を固めた。7日に「情報保全に関する検討委員会」(委員長・藤村修官房長官)を開き、法制化を急ぐ方針を確認する。機密情報の管理徹底や米国など関 係国との信頼確保が狙いだ。ただ、同法案は国民の知る権利や報道の自由、情報公開を制限しかねないだけに、与野党から異論が出る可能性もある。

 同法案は、(1)防衛など「国の安全」(2)外交(3)公共の安全・秩序の維持―の3分野を対象に、「国の存立に重要な情報」を新たに「特別秘密」と指定。特別秘密を取り扱う公務員が故意に漏えいした場合の罰則について、最高で懲役5年か10年とする方向だ。 

[時事通信社] 


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4 コメント

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法務省に文句言ったらどうですか (Unknown)
2011-10-09 11:25:00
民主党政権というより、そもそもこの法案を通して得するのは誰かといえば、不祥事を起こした官僚でしょう。その証拠に衝突事故をリークした保守の連中ですら、問題にしない。つまり政治家ですら法務省は怖いということ。弁護士もヘタレ。そもそも裁判所、検察、弁護士会、ずぶずぶなんじゃないですか。東大を頂点とする法務法曹界事態を改革しなきゃまともな先進国の法運営はできないでしょう。日本の法律って、よくよく見たら変すぎる。
返信する
法務省だけは (ray)
2011-10-09 11:58:04
国家一種試験を通った官僚より検事の方が偉いんです。
だから検察庁改革がまず大事ですね。

でも検察庁がこの法案の責任者とは言えないでしょう。

この法律で得するのはおっしゃるとおり官僚全般ですが、この法律を作ろうとしているのは法務省や検察ではなく、野田民主党政権ですから、政治主導とは名ばかりの現政権を批判せざるを得ません。
返信する
Unknown (cafe)
2011-10-09 15:12:35
 Unknownさんが仰るように、日本の法制、法令は、住民訴訟、国家賠償法訴訟、民法、刑法訴訟などを、本人訴訟として、いろいろとやってみて、政教分離違憲に住民訴訟三件、同違憲の民事訴訟、最高裁行政法租税などを、違反の判決としたが、何処と明確に言えないが、実際に法廷で審理してみて、確かに「よくよく見たら変だ」というのに、同意します。
 やはり、明治のヨーロッパから近代法制を導入し、その後に第二次大戦後の米国占領下という、特殊な歴史的経緯から、無理が生じたいたのではないでしょうか?
 憲法違反事件の判決、そして平成11年地方分権一括法に則る約400法律改訂も、全然、チンプンカンプンで人迷惑の為に、仕方が無いので国家賠償法に基づく、東京地裁行政部合議体の判決を出したら、住民訴訟の法的根拠と全く逆の判断となり、驚いた。
 司法試験を学ぶ人も、また教授する者も、大変だーとだんだん日本の法制、法理の特殊性を、感じ始めました。
返信する
Unknown (erstea)
2013-09-14 13:11:03
秘密保全法で、ケッシュ財団から受け取った技術は封印されるかもしれない。

ttp://sunshine849.blog.fc2.com/blog-entry-118.html

ttp://www.onpa.tv/2013/08/11/1893

現在起こっている、原発問題、経済問題、環境問題といった様々な問題を根本的に解決できる技術を政府はケッシュ財団から受け取っている。
しかし政府はそれをひたすら隠蔽して実用化しようとはせず、このままでは秘密保全法で死蔵封印されるだろう。
ケッシュ財団の技術を使うなら、このような問題は既に全て解決し、世界は平和へ向かうだろう。
返信する

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