大阪市を廃止して五つの特別区を設ける「大阪都構想」の賛否を問う住民投票(5月17日投開票)に向けて、賛成派・反対派双方が相手の主張に神経をとがらせている。

 住民投票までちょうど1か月となり、賛否の宣伝合戦だけでなく、互いのアピールの封じ込めにも躍起だ。

 「公平・中立性を欠き、賛成に誘導するものだ」

 都構想反対派の自民、公明、民主系、共産の市議会野党4会派は17日午後、大阪市に対し、都構想制度案に関する市主催の住民説明会の運営方法を見直すよう申し入れた。

 14日から毎日3か所ずつ開かれている説明会。橋下徹市長(大阪維新の会代表)も毎回出席し、多くの時間を都構想の狙いの説明にあてている。申し入れ後に記者会見した野党幹部は「橋下氏は自分の考えを市民に植え付けようとしている。(会場での)『僕の説明会だ』という発言が象徴している」と批判した。

 さらに、橋下氏が説明会で、次期市長選への出馬に言及したことにも、「制度案と何の関係もない。住民投票を(自らへの)人気投票に置き換えようとしている」と訴えた。

 一方、橋下氏は17日、報道陣に、「なぜ都構想を提案したのかが一番重要。何も問題はない」と述べ、野党の申し入れを意に介さない姿勢を見せた。

 その橋下氏が「中立性を欠く」と矛先を向けているのが、市内の約6割の世帯が加入する自治会組織「市地域振興会」(地振)。今月14日、各区の代表者が集まり、「住民サービスが低下する」などとして、都構想への反対を決めた。具体的にどう反対活動をしていくかは、各区の代表者に委ねられるという。

 橋下氏はこれに、「加入者には賛成の人もいる。非常に古いやり方」と即座に反応。地振が関わる盆踊りなどの行事には市の補助金が出ており、橋下氏は市幹部に、「政治的中立性」を補助金支出の条件に盛り込めないかどうかの検討を指示した。維新市議団幹部にも、「反対運動をやると、補助金が止まる可能性がある」と、地域の各団体に伝えるよう求めた。ただ市関係者によると、補助金対象の事業そのものに政治色がないなら、事業以外で団体が政治活動をしても口出しは難しい。橋下氏は17日、報道陣に、「慎重に検討を続ける」と述べるにとどめた。

 野党幹部の一人は、「補助金を人質に反対論を封じようとするとは、まさに独裁者。あと1か月、維新との攻防は間違いなく激しくなる」と語った。