
大阪都構想の開票結果の賛否の分布。どの区も賛否が拮抗していてわずかな差しかない。データは大阪市役所のページ。 http://t.co/44hvQH6tgn pic.twitter.com/1siZ2XeUgY
— 谷謙二/TANI Kenji (@ktgis) 2015, 5月 17
埼玉大学教育学部の谷謙二氏のツイート。基礎データはこちら。
平成27年5月17日 執行 大阪市における特別区の設置についての投票の開票結果 確定
反対派が僅少差で勝った大阪「都」構想住民投票について、高齢者が悪い!というシルバーデモクラシー糾弾と言う言説がまかり通っているけれど、まるで非科学的だということは前回解説しました。
辛坊氏はこの中で高齢者のことを
「『手術失敗したら、死んじゃうもん!』ってところですね」
と酷いことを言っていますが、同時に
「生活保護者にとって大阪都構想の実現できめ細かい行政が実現することは不都合」
と生活保護受給者も槍玉にあげました。
辛坊治郎氏のデマ。都構想の敗因はシルバーデモクラシーではない。現役世代が白け投票しなかったこと。
うちからもリンクさせていただいている井上伸さんの名ブログより、大阪都構想を葬ったのは「シルバーデモクラシー」ではない=若い世代の人口は70歳以上の2倍以上多いから
と思ったら今度は、
古谷経衡 という今売出し中の保守評論家の「大阪都構想住民投票」で浮き彫りになった大阪の「南北格差問題」
というブログ記事が猛烈に読まれています。
筆者は大阪市の24区を賛成(青)と反対(赤)に分けたわかりやすい地図を冒頭に挙げてこう主張するのです。
・大阪市も大阪府も「南北格差」
大阪都構想の話に戻ると、大阪市北部が賛成、大阪市南部が反対という構図は、まさにこの「南北格差」を背景にしているだろう。すなわち、比較的所得水準が高く、都市の再開発も進んでいる「キタ」を中心とした大阪市北部と、高度成長時代の産業構造を転換することができず、成長から置き去りにされた、低所得地域が多い大阪市南部の格差である。
まあ、とにかく「大阪都構想住民投票否決ショック症候群」といいますか、雨後の竹の子のように次から次へと珍説、迷分析が出てきてモグラたたきみたいに叩くのも疲れるのですが、高齢者のところで次のように書いたことが、大阪市の低所得者叩き、24区の南北格差分析にも当てはまると思います。
それにグラフが与える印象もおかしい。
結局、全世代の全投票をあわせて賛成票より反対票が多かったというのがすべてなのに、20代から60代までずらっと賛成が多いと並べて、70代だけが反対の方が多いとやると、まるで5対1で賛成が多かったのに、70代以上だけの我がままで反対が通ってしまったみたいな誤った印象を与えてしまいます。
実際には各世代に相当割合の反対者がいたのです。それを全部累積したら反対の方が多かったのです。20代、30代、40代、50代、60代、70代の6人が集まって5人が賛成したのに、70代一人が反対したから反対が通ったというのとは違うのです。
同じように、この大阪南北格差問題についても、冒頭の画像でわかるようにこう言いたいですね。
どの区も賛否半々。どこに住んでいる人でも賛成の人と反対の人が同じくらいいたの!全体でも半々なんだから当たり前でしょ!
このことをさらにわかりやすく目に見えるようにしてくれたハフィンポストの記事があります。
大阪都構想、投票結果を分けたのは「南北分断」ではなかった?
5月17日に大阪府で行われた、都構想をめぐる住民投票。賛成69万4844票、反対70万5585票と僅差で反対が上回り、都構想を提案した橋下徹大阪市長は、任期限りでの政界引退を発表した。
この結果を区ごとに分類すると、北は賛成多数、南は反対多数に分かれている。
さきほどの色調では判別が難しかった方はどうぞー。青:賛成多数、黄:反対多数 pic.twitter.com/wOPcXj6dKE
— 2087A/W 中村敦則 (@GazyaKieph) 2015, 5月 17
こうした現状を、評論家の古谷経衡さんは、大阪市内の南北格差が影響を及ぼしたと自身の「Yahoo! 個人」やTwitterに投稿している。
大阪都構想の区別選挙結果を観るとキタは概ね賛成、ミナミは反対と綺麗に二分化している。この両者の地域は、語るも何も同地を歩いてみれば一目瞭然だ。高度成長時代から取り残された密集住宅が残るミナミと、タワーマンションの再開発が進むキタ。大阪都構想云々以前から、大阪の住民は分断されている
— 古谷経衡 (@aniotahosyu) 2015, 5月 17
しかし、そうした「南北分断」とする見方に疑問を呈する意見もある。国立環境研究所研究員の五味馨さんは、いずれの区も投票結果は拮抗していたことを可視化し、南北分断が問題ではない、とTwitterに投稿している。
【修正】大阪都構想・区毎の結果が如何に拮抗していたかをグラデーションで表現しました。(左の図で城東区と旭区の色が逆だったので直しました) https://t.co/DyYoIdoRpN pic.twitter.com/UDb3YyddH9
— 五味馨 (@keigomi29) 2015, 5月 18
どちらが多数かで塗るとあたかも大阪市が南北に分断されたかのような印象を受けますが、実際はどの区でもほぼ半々に割れています。仮に大阪市民の間にこの問題を巡って分断があったとしても南北にではありません。https://t.co/DyYoIdoRpN
— 五味馨 (@keigomi29) 2015, 5月 18
引用以上ですが、橋下維新のパネルに関してもわかったこととして、一見わかりやすいグラフや解説に騙されちゃいけないですね。
フジテレビと橋下市長に見る「詐欺にパネルは使いよう」 気を付けよう、ハシモトトオルとフジサンケイ。
テレビでこんな画面を見たら、そりゃあ、大阪市の南北格差が住民投票の成否を分けた!と思うのは無理もありません。
読売テレビ。
新聞ではこうです。
産経新聞 地域差くっきり 大阪湾岸・南部で反対多数、市中心部では賛成が上回る
ネットだとこれとかこれとか。
しかし、その内実は、こんなだったりするわけです。
どこにでもいろんな意見の人がいる。当たり前じゃないですか。
最近、安易な統計とかデータ分析とかが流行りすぎじゃないですか?
物事、100かゼロじゃないんです。真ん中あたりに真実があります。目で見てわかりやすすぎる結論は眉に唾をつけて見る癖が必要です。
それにしてもこうやって、大阪市を世代や地域で分断して
1 賛成派が惜しくも負けた。橋下市長が政治家を辞めてしまう。
2 本当は賛成派が正しかった
3 反対という誤った判断をさせたのは年寄りや貧乏人のエゴだ
という何重にも間違った決めつけをして得する人って誰なんですか。
大阪市出身の小田実さん(作家。9条の会呼びかけ人)は、あの激しい気性でありながら、
「人間みなちょぼちょぼやん!?」
という名言を残しました。
憎しみと報復の連鎖はもうやめましょうよ。
(やん!?は私の創作かも 笑)
追伸
古谷氏のかなり長い記事(コラムというよりもはやポエム)の中には、大阪南部の方々が読んだら噴飯ものの箇所がいっぱいです。
実際、「キタ」を中心とする大阪市北部を歩くと、「最後の一等地」と呼ばれた「梅田北ヤード(旧梅田貨物駅)」が大胆に再開発され、東京・新宿の超高層ビル群と引けを取らぬ圧巻の現代都市の景観が形成されている。淀川の対岸、西中島方面から梅田を望むと、全面ガラス張りのキラキラと煌く梅田スカイビル(北区大淀)が太陽光に反射して、その壮観たるや圧巻である。本当に大阪は大都会であるなあ、としみじみ実感するのだ。
そこにあるのは正しく「近未来都市」である。景観的に言えば、新宿よりも遥かに「未来」を感じさせる街並みが梅田にはある。更に梅田に隣接する、福島や曽根崎、堂島は完全に東京の大手町や丸の内と変わらない、寧ろ東京を凌駕する程の超近代的オフィス街に変貌している。縦横無尽に張り巡らされる巨大な梅田の地下街と相まって、一瞬、ここが大阪なのか東京なのか、迷うほどだ。
尤も大阪市北部にも「十三(じゅうそう)」や「淡路」「上新庄」等に代表される雑多な下町風情は残されているものの、全般的に大阪市北部は、富裕層向けのタワーマンションが次々と乱立し、またアパレルテナントやカフェ、商業施設やホテルが集積している。この地域は「道頓堀」「くいだおれ」でイメージされる大阪とは全く異なる表情をみせるのだ。
一方、「ミナミ」を中心とする大阪市南部を歩くと、そこは途端に「昭和にタイムスリップした」かに思える風景に出くわす。例えば西成区や大正区、住之江区、浪速区を歩くと、文字が判読できないほど日に焼けた商店の看板、車一台がようやく通れるか通れないかという位の一方通行の路地、猫の額ほどの庭先にこれでもかと並べられている鉢植、「ユビキタス社会」とは無縁の新聞自販機、僅かなスペースの軒先で惣菜を売る個人商店と、今にも電線に接触しそうな位、密集して建てられている木造住宅や2階建ての文化住宅(賃貸長屋)…。同じ日本なのに、同じ空を観ているのに、この街を歩いている時に観る青空は、いつもどことなく曇っていて、しかも低いような気がするのだ。
とてつもないミスリードちゅうか、文学と言うか、西成区・大正区などの描写もどうかと思うが、大阪市南部から心斎橋も難波も全部捨象して書いてるバイアスが凄くない?(笑)。
「キタ」と呼ばれる大阪・梅田周辺(写真上)と「ミナミ」と呼ばれる難波周辺(同下)
日本経済新聞 大阪の繁華街「キタ」「ミナミ」、名前の由来は…
さすがに人の記事の訂正記事みたいなのばかり書いてるの、嫌ですw
よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!
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大阪都構想が日本を破壊する (文春新書 1020) |
藤井聡 | |
文藝春秋 |
ご存知、橋下徹大阪市長の天敵、藤井聡京大教授による大阪市解体反対の最新刊。
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どうなる大阪: 「都」になれない都構想 |
平松邦夫 | |
せせらぎ出版 |
これもご存じ、橋下維新の会の宿敵、平松邦夫前大阪市長による大阪市解体反対の最新刊。
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橋下徹 改革者か壊し屋か―大阪都構想のゆくえ (中公新書ラクレ) |
吉富有治 | |
中央公論新社 |
大谷昭宏事務所所属の気鋭のジャーナリストによる橋下ウォッチング最新刊。
そもそも橋下信者っていうのは、誰かを自分より劣った存在として見たり、蔑視、差別したりすることで自分のチンケなプライドを保とうとする傾向が例外なく見受けられるわけですが、それって、蔑視する根拠がホントかどうかなんてどうでもいいんですよね、差別さえできれば。「素材」が与えられさえすれば満足してしまうわけです(今回は辛坊からエサを与えられたってこと)。実際、コメント見てても記事の内容の妥当性を論じた上で、年寄り攻撃してる人間っていないんですよ。記事なんて無視して差別撒き散らして去っていく人間ばかりじゃないですか。もうね、慰安婦のときも生活保護のときも同じこと感じましたけど、それが今度は大阪都バージョンになっただけのこと。
ちなみにこの古谷某ですが、「保守」+「論客」+「若手」をウリにしてるだけで、他の人より何か秀でた能力がウリなわけではないですから。まあでも「若手論客」というのはその質はともかく何だか「新鮮味」が感じられてマスコミも重宝したがるのでしょう。ついでにいうと、この南北格差説って、辛坊が差別デマ吐きまくったのと同じ番組内でこれまた辛坊が唱えてたヤツなんですけどね笑
しかし統計学をやっていない人の分析なんてそんなものですよ。
先生だって法律学は専門でも、それ以外の分析は記事をみる限り相当偏っていると思いますよ(笑)。
別に皮肉でもなんでもなくて、人が出来る事は限りがあるって事です(私も含めて)。
一番大切な事は、あれだけ批判を受けていた市長が提案した、あれだけ中身がスカスカな特別区設置案に大阪市民の半分近くが賛成したという事実です。
既存の政治家が民意を汲み取れていない事の証左です(先生が支持されているであろう共産党も含めて)。
政令市を中心とした大都市制度に大きな欠陥があり、それに大きな不満を持っている市民。
例え維新がなくなっても、根本的な問題を解決しない限り同じような事態が大阪に生じる事は間違いないですね。
先生におかれましては批判だけではなく、もっと前向きな議論の記事を期待しております。
(先生は政治問題よりも実務に即した記事の方が向いていると思いますよ)
○「二重行政の解消で年間4000億!」のウソがバレた時点で「ハイ終了!」ってならなきゃオカシイんですよ。
○民主党のマニフェストだって端からおかしかったんですけどね。なのにやっちゃったんですよね。で、ブーブーでしょ。
○だから私、「大阪市廃止」が通る事を密かに期待もしてたんですよ。結果、道頓堀川に「独裁者」が浮いていたりして。
○でもray 先生はそのような「枕詞」を置いて話す事を潔しとはされないだろうなって思ってます。
○これ、買い被りって事はないでしょうね。
○「政治学徒」さんの推測は「色眼鏡」じゃないかな。
反対した市民の中には、「住所が変わるから」という理由の方がいました。賛成の市民は「今変えられなかったら二度と変えられない。」という方がいました。
住所を変えない方法を考えれば賛成なんでしょうか。「北区と淀川区で新しい行政単位とするが、住所は変えない」ということもできたでしょう。
橋下氏は当初、「実現するまで何度でもやる」と言っていましたね。「一回きり」という脅しをマスコミも後押ししていましたから、騙されても仕方ないですね。
二重行政の解消というとき、必ずあげられるのが「大学」です。市立大と府立大があるのは無駄というのなら、そもそも大阪に公立大が必要かどうか、ちゃんと議論したんですかね。今回成立したとして、大学に関して言えばどうすることが「二重行政の解消」だったのでしょう。「名前を一つにする」「どちらかを廃止する」。府立大は橋下知事のときに理系だけにされました。松下知事になってから、教育学部の創設が提案されました。思い付きで決められて振り回される。橋下政治はこの一言で言い表せると思います。
行政のトップが、思い付きをそのまま実施したらいろんな問題が起きるでしょう。思い付きが悪いのではなく、そこから検討を十分に加えて実施にこぎつけなければいけません。
市民も、ちょっと目新しいことを言われたらすぐに飛びつくということではなく、良し悪しを見極める努力をしなければ。
大阪はオレオレ詐欺、特殊詐欺の天国でしたね。
両方の視点を持つこと。
具体的な数字を分析すること。
反対意見を一旦頭に入れてから自分の意見を組み立てること。
特に、マスコミなど、表現媒体で生きる人間には必須の条件だと思うのですが、受け手がそれを望んでいないのでしょうか。
自分もその方が楽な時もあって、流されていることも有るかもしれないと思いました。
気を付けていきたいです。
橋下市長に二重行政認定されてしまったあべのハルカス近辺に住んでいるのですが、
地元民の感覚として天王寺より南はぶっちゃけ田舎。
こんなイメージがあるのでまあ古谷さんが言ってることも感覚だけで言うとあながち間違いでも無い気がします。
ただ今回の結果を南北格差、世代間格差に落とし込まれるのは嫌ですね。
ただ単に橋下という詐欺師が大阪市を分断した、それだけです。