沖縄に米軍基地が集中する現実が、またも悲劇をもたらした。

 沖縄県うるま市の女性会社員(20)が行方不明となった事件で、県警は死体遺棄の疑いで、元米海兵隊員で基地内で働く米国人の男(32)を容疑者として逮捕した。

 岸田文雄外相はケネディ駐日米大使を呼び、「遺憾だ」として抗議した。大使は「心からの悲しみ」を表明したという。

 詳細は捜査中だが、沖縄ではこれまでも米軍基地の存在に起因する事件が繰り返されてきた。

 翁長雄志(おながたけし)知事が「この怒りは持って行き場がない。痛恨の極みだ」と憤りを示したのも当然だ。

 普天間飛行場の辺野古移設をめぐる国と県との対立も続いている。今回の事件を受けて、緊張がさらに高まる可能性もある。

 政府内からは来月の沖縄県議選や夏の参院選への影響を懸念する声も聞かれる。だが求められているのは目先の選挙対策ではなく、基地の集中という元凶の解消だ。

 来週開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせて、安倍晋三首相とオバマ米大統領との会談も予定される。両首脳は事態の打開に踏み出してほしい。

 容疑者は現役米兵ではないが、米軍に雇用された「軍属」だ。日米地位協定で米兵に準ずる扱いが規定される。事件は公務外で起き日本側が身柄を拘束している。

 基地と県民生活が隣り合わせの現状がなければ、事件は起きていないだろう。基地ゆえの悲劇だ。

 大規模な基地反対運動につながった1995年の少女暴行事件をはじめとして、沖縄では米兵が関わる事件が後を絶たない。

 今年3月にも準強姦(ごうかん)容疑で米兵が逮捕されたばかりだ。

 米政府はそのたびに再発防止を口にしてきた。日本政府も「強い憤り」を表明してきたが、言葉だけに終わってはいないか。

 米軍はまず、米兵に限らず軍属も含めた管理の徹底と綱紀粛正を図るべきだ。日米両政府は、日米地位協定を含めて、あらゆる対策を検討しなければならない。

 だが米軍専用施設の7割以上が沖縄に集中する現状が続く限り、問題の根絶は望めないだろう。

 安倍首相は日米首脳会談で今回の事件も取り上げるという。

 沖縄では事件を受け、米軍への抗議行動が既に起きている。首相は沖縄の心に寄り添い、実効性のある対策を求めるべきだ。

 オバマ氏には、被害者と県民への謝罪とともに、基地集中の解消につながる判断を期待したい。