(テレビ朝newsより)
2001~10年に起きた9事件で、9件の強姦(ごうかん)致傷罪、3件の強盗罪、1件の窃盗罪に問われた被告人の裁判員裁判の判決公判が12月5日、静岡地裁沼津支部でありました。
この裁判の結果は、検察側の求刑60年に対して判決は懲役50年というもので、私も新聞の見出しを見たとき、一瞬目を疑いました。
日本の有期懲役の限界は通常20年(法定加重しても30年)です。なぜ求刑が60年、判決が50年という結果が生じたのか。
アメリカの一部の州では、たとえば何度も何度も賄賂をもらった収賄罪の事実が発覚して判決を下されると、一つ一つの犯罪にそれぞれ量刑がつき、それが足し算されて懲役何百年という判決が下ることがあります。
しかし、日本の刑法では刑の併合という制度があります。一度に判決を受ける場合、最も重い罪の長期刑の1・5倍を上限として、刑が「併合」されるのです。たとえば、窃盗罪なら懲役10年以下が法定刑ですので、何度罪を重ねても一度に判決を受ける場合には懲役15年が限界です。
ところが、この例外として、複数の事件で発生日が確定判決日をまたぐ場合、刑法の規定で前の事件の罪と後の事件の罪の量刑を併合することはできません。被告人は2009年3月に別の窃盗事件で有罪判決が確定しており、これ以前とこれ以後の罪を併合することは法律上出来ないのです。
(同じ静岡地裁沼津支部で行われた裁判員模擬裁判の様子 読売新聞市民が市民裁く難しさより)
そこで、裁判長は、2009年3月以前の7件の罪について懲役24年(求刑懲役30年)を、以後の6件の罪について懲役26年(求刑懲役30年)をそれぞれ言い渡した結果、求刑60年に対して懲役50年となりました。
現在の無期懲役刑は終身刑ではありませんので、一生刑務所に入っているということはなく、20年前後刑務所にいると仮出獄が認められます。強盗致傷罪は5年以上無期懲役が法定刑ですが、検察が無期懲役を求刑しなかったことで、かえって無期懲役より長い懲役になったともいえるでしょう。
判決で裁判長は「女性の人格を無視し凶暴極まりない。確定裁判の前後を通じて重大犯罪を繰り返した経過、事件の態様などから再犯の可能性は否定できず、徹底した矯正が望まれることを考慮すると、いずれの事件群も懲役20年を下回るべきではない」と述べたということです。
(日本弁護士連合会編 国際化時代の女性の人権)
私は厳罰化には基本的には反対ですが、日本の性犯罪に対する量刑は軽すぎると思っています。
法定刑ひとつをとってみても、同じく被害者の反抗を抑圧する強度の暴行・脅迫を手段として行う罪である強姦罪と強盗罪を比べると、強姦罪は3年以上の有期懲役ですが、強盗罪は5年以上の有期懲役で、強盗罪の方が重いのです!
これでは女性の性的自由・人格権より物の方を大事にする法制度と言わざるを得ません。
強姦は、女性の人格を殺すのに等しいことが日本では理解されていないと言うことだと思います。だから、たとえば官僚が性的暴力を軽々しく例えに使うことができるのでしょう。
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(小林美佳著 性犯罪被害にあうということ)
今回の裁判に関わられ、記者会見に臨まれた裁判員のお一人は「6日間という長い期間だった。時間もかかり、件数も多く、聞くことは苦痛だった」と振り返ったそうです。
窃盗罪と強盗罪にも被害者がおられますし、まして強姦致傷罪は9人の女性が被害者で、加害の実態と被害者の方々の思いを受け止めるのは大変だったでしょう。
本当にお疲れ様でしたとしか言いようがありません。
日本では性犯罪についてもっと厳しい認識を持つべきですが、社会を根本的に変えるのは刑罰ではありません。男女が尊重し合う教育と文化をこつこつと育んでいくしかないのだと思います。
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強姦罪より強盗罪が重いことは受け入れがたいです。どちらの刑罰が不当なのかは判断しかねますが