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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

原子力規制委の原発事故放射性物質拡散シミュレーションでわかる防災計画の困難と原発廃炉計画の必要性

2012年10月27日 | 原発ゼロ社会を目指して

 

 原子力規制委員会は2012年10月24日、各地の原発で放射性物質を放出する事故があった場合の拡散シミュレーションの結果を初めて公表しました。シミュレーションは、原発周辺の自治体が地域防災計画を策定する際の参考とな るよう、規制庁と原子力安全基盤機構が、16原発と福島第1原発に対して実施したもので、同日開かれた第7回会合で報告されました。

 このうち、全国で唯一稼働中の関西電力大飯原発、東電が再稼働を狙う柏崎刈羽と福島第2、中部電力浜岡の4原発では、たった1週間で積算被ばく量が100ミリシーベルトを超える!範囲が、原発から30キロを超えることがわかったのです。とりわけ柏崎刈羽では、40キロ離れた新潟県魚沼市にまで及ぶことがわかりました。


 シミュレーションは、福島第1原発1~3号機の推定総放出量と同じ量の放射性物質が放出された場合と、同じ推定総放出量に、福島第1原発1~3号機の合計出力に対する各原発にあるすべての原子炉の総出力に応じて増減させた場合の2通りで実施しました。

 総出力比を乗じた場合、上記4つの原発では、一週間で被ばく線量が100ミリシーベルトを超える地域が原発から30キロ圏外に広がったのです。この積算線量は、国際原子力機関(IAEA)が定めている住民の避難基準です。規制委は新しい原子力災害対策指針の素案で、重点区域を30キロ圏とする考えを示していますが、これでは極めて不十分なことがわかったわけです。

 実際には、現実の福島第一の事故でも、30キロ以上離れた福島県飯舘村がひどい放射能汚染に見舞われていることは周知の事実です。

 そもそも、今回の予測は、山や谷などの地形を考慮していないし、大ざっぱな気象条件を基にはじき出した目安にすぎません。風向き、風速などが1週間一定で、地形も平たんという「あり得ない想定」を置いています。現実に全国の原発で事故が起きれば、季節により、また事故後の風の向きや強さ、爆発の規模によっては放射性物質が予想よりさらに遠くへ、まるで予測と異なる方角へ飛び散る恐れが大いにあるわけです。

 もし、その日、台風が来ていたら。。。。。30キロ圏内に収まるという予想の原発だってどうなるかわかりませんし、収まったからと言って30キロ圏内の人は避難しなければいけないわけですし、IAEAの避難基準外の地域にいる人のところに放射性物質が飛んでこないわけでもありません。福島原発事故でも200キロ離れた東京まで放射性物質は飛びました。それが1週間で100ミリシーベルトにならないだけです。


 規制委は、原発再稼働の必須要件として、重点区域の自治体が2013年3月までに実効性のある防災計画を作ることを求めています。ところが、仮に避難は原発から半径30キロでいいとして線引きしても、21道府県の135市町村が対象となり、その人口はおよそ480万人に上るのです。その数、200万人の福島の人口の倍を優に超えます。

 たとえば、日本原子力発電東海第二を抱える茨城県では、最多の93万人が対象となります。中電浜岡のある静岡県では、東海道新幹線や東名高速道路という日本経済の大動脈が走っています。中国電力島根が立地する島根県では県庁がある松江市が含まれるのです。


 そんな場所にある原発で事故が起こったら、避難経路や輸送手段、避難所は確保できるのか、被ばく医療体制は整えられるのか。

 今回の規制の防災計画策定は原発周辺で防災対策を重点的に進める区域を決める参考にするものだというのに、予防的に避難などを開始するための判断基準の具体的内容など、先送りされている項目が目立ちます。つまり、原子力規制委員会が公表した放射能の拡散予測から、実は、自治体の地域防災計画作りが実はほぼ不可能であることがわかります。

 次の原発事故に、日本はもう耐えられません。地震、津波、火山の噴火など天災が目白押しの災害大国日本に、本来原発は無理な技術でした。大飯原発はすぐに停止するべきですし、他の原発の再稼働なんてとんでもありません。

 停止中の原発でも事故の可能性はありますから、原発事故防災計画はこのまま策定するとともに、本気で全国の原発廃炉計画を立てるべきなのです。

 

 

これでもまだ原発を推進しようとする人たちこそ放射脳。

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毎日新聞 2012年10月25日 地方版

 原子力規制委員 会が24日発表した、全国各地の各原発事故を想定した放射性物質拡散シミュレーション。嘉田由紀子知事が「ようやく出した」と言及した国のデータだが、県 が昨年、全国に先立って実施した独自の拡散予測とは前提が大きく異なる。県は“別建て”の試算として、地域防災計画や原子力安全協定の早期締結に生かす方 針だ。【姜弘修、加藤明子】

 ■想定の違い

 今回の国の試算は県が提供を求めている緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)ではなく、別の手法を使用。放射性物質の放出量は県の想定より大きい。

 県の予測を担当した琵琶湖環境科学研究センターの山中直・環境監視部門長によると、風向き、風速などが1週間一定で、地形も平たんという「あり得ない想定」を置き、現実の地形や気象を前提とした県とは大きく異なる。確率は低いが起こり得る一部の風向きも除外されている。

 そもそも試算する線量の指標が県とは別物で「同じミリシーベルト(m〓)でも単純比較はできない」(山中氏)。国の方は放射性物質が飛散する方向よりも「どこまで到達するか」に着目した方が良いという。

 ■琵琶湖

 国が出した図A、B=右面参照=を眺めると、国の拡散予測でも琵琶湖汚染の可能性が示されているように 見える。ただ、影響の度合いが数値で示されておらず、これだけで琵琶湖への影響を推し量るのは難しいという。琵琶湖への影響は放射性物質の水面への降下 と、河川などからの流入の双方を考慮する必要があり、同センターが昨年度行った拡散予測と同様、独自モデルを応用して琵琶湖への影響予測を進めており、そ の結果が待たれるところだ。

 ■安全協定

 県は現在、関西電力など事業者側と原子力安全協定の締結を急ぐが、関西電力は今月17日、原発の立地自 治体と隣接していないことを理由に、長浜市を協定対象から除外する協定案を示した。今回の国の拡散予測は、県や長浜市が「被害と行政区域は関係ない」と反 発するさなかに示され、嘉田知事は「大気はつながっており、行政で区切る不合理さを関電にも自覚してもらいたい。国も責任を持って事業者を指導してほし い」と語った。

 
  [2012/10/25] マイナビニュース

原子力規制委員会の2012年度の第7回会議が24日、原子力規制委員会庁舎で開かれた。同会議では、全国16の原発で事故が起きた場合を想定した放射性物質の拡散シミュレーションの試算結果が公表された。

拡散シミュレーションは、道府県が、地域防災計画を策定するにあたり、防災対策を重点的に充実するべき地域の決定の参考とすべき情報を得るため (※)に、原子力発電所の事故により放出される放射性物質の量、放出継続時間などを仮定し、周辺地域における放射性物質の拡散の仕方を推定するもの。

※今般の福島事故を踏まえ、原子力安全委員会報告(2012年3月)では、防災対策を重点的に充実するべき地域の目安(原子力施設から8~10km)を見直し、概ね30kmとすることとしている。

原子力規制委員会では、「シミュレーション上の限界があるので、あくまでも目安として参考にすべきデータであることに留意が必要である」としている。

拡散シミュレーションマップは以下の通りとなっている。緑の線で結ばれている四角の点が、方位別のめやす線量を超える距離となっている。

東通

女川

福島第二

東海第二

柏崎刈羽

浜岡

志賀

敦賀

美浜

大飯

高浜

島根

伊方

玄海

川内


コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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あれ? (常駐人)
2012-10-27 23:21:40
初のコメ削除か。。。

ブログ内容に関係なかったからでしょうか?
それとも、表現が気に食わなかったのでしょうか?

昨日"放射脳"などの言葉を用いることの必要性について他の記事のコメに書きましたが
ご納得いただけなかったでしょうか?

売り言葉に買い言葉では、ドッジボールになってしまうと思います。
それでは、宮武さんの真意が伝わりにくくなるはず。
せっかく原発で良いことを書いているのですから、悪口を言い合うのではなくて
それこそ、今日僕に言ってくれたように"冷静に"対処なさったほうが良いと思いますが、いかがでしょうか?

[反・宮武]を生み出すよりも、[親・宮武]又は[中立者]を増やしたほうが良いと思います。


では、、、
ブログ内容にも触れておきますね。

> 大飯原発はすぐに停止するべきですし、他の原発の再稼働なんてとんでもありません。

僕も家の近くに浜岡原発がありますので、廃止は賛成ですが、今すぐですか?
確かに、震災はある日突然やってきます。
もしかしたら、明日にも来るかもしれません。
ですが、"大震災&中国との摩擦"で経済が疲弊している状態で、さらに原発廃止コスト5兆円はきつくないですか?

自分としては、東北復興がさらに遅れることになるのが申し訳なく思うところです…
返信する
今度起きたら、次はない (安打製造屋)
2012-10-28 15:03:38
もし今度、原発事故が起こったら、日本は死の国になるだけではなく、諸外国に多大な迷惑がかかるのが解っていないのか?この国の「専門家」と呼ばれている方々は地震大国日本に原発を再稼働して、自らの破滅の道を歩みたいのか?危険を無くす事が専門家の仕事ではないのか?
返信する

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