安倍首相が、本日2013年3月15日、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加を発表します。予想より二日ずれましたが、この日付はいつか日本国民にとって忘れられない痛恨の日となるかもしれません。
TPPの毒素条項=ISD条項 ラチェット規定 NVC条項 スナップバック条項。なのに安倍首相が3月13日に参加表明
このTPPへの交渉参加は、もともと民主党政権の菅直人首相が、突然言い出したことです。菅元首相は、2010年10月、臨時国会冒頭の所信表明演説で、「TPPへの参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指す」などと述べたのでした。
菅政権のTPP参加の動機は、普天間基地移設問題で対米関係にしくじった鳩山政権の轍を踏まず、米国への従順の意を示すことにありました。不安定な政権を維持するには、米国との軋轢を避けるしかないという判断だったのでしょう。それ以来、野田政権に至るまで、民主党はTPPに前のめりで来ました。
TPP参加表明を花道に玉砕解散する野田佳彦首相はアメリカ・財界・官僚盲従の戦後最悪の総理の一人だった
その民主党政権において、前原誠司氏は長く政策調査会長を務め、2012年10月からは国家戦略担当としてTPPの事前交渉を知る立場にありました。その前原氏が2013年3月11日の国会審議で、安倍首相への質問の中で、民主党政権下での日米事前協議を暴露しました。
「我々が最後まで交渉参加を表明できなかったのは、なぜかというと、米国の要求、事前協議の中身があまりにも不公平だった。トラック、乗用車については関税をすぐにはゼロにしない猶予期間を設けるべきだ、ということだった。日本の安全基準については米韓FTAと同じように枠を設けるべきだ、ということだった。」
「保険については、はじめはがん保険だけと思っていたら、学資保険の中身を変えることについても色々と言い出した。つまり中身について、事前交渉でこれをとにかく武装解除しなければ米国議会に通告しない、と。しかしこういう中身について我々は不公平であると、本来であれば、自動車の関税猶予なんてことは本交渉でやる話であって、我々は農産物を相殺して妥協しなかった」
そして、前原氏は安倍首相にこう迫りました。
「我々は交渉参加表明をしたいと模索したが、この条件ではあまりにも日本は不公平だということで、我々は非対称的だということで交渉参加表明をしなかった」
「これ、妥協してまさか交渉参加するなんてことはないですよね」
これに対して、安部首相は正面から答えず、あろうことか
「前原さんも民主党も政府として交渉に当たってきた。米国との交渉においては、中身においては、皆さんに守秘義務が課せられているはずです」
と前原氏を恫喝して口を閉ざさせようとしたのです。
もともと、前原氏自身が対米従属派で、2011年9月9日には、ワシントンで開かれた日米同盟に関するシンポジウムで講演し、自衛隊の国連平和維持活動(PKO)を拡充するため、他国の軍隊を防護できるよう武器使用基準を緩和すべきだとの考えを表明しました。また、集団的自衛権についても憲法解釈の見直しが必要だとの認識を示しました。さらに、前原氏は日本の防衛産業が戦闘機などの国際共同開発に参加できるよう「武器輸出三原則を見直さなければならない」と明言したのです。
言っていることは安倍政権と全く同じです。
そして、2011年10月ころから野田首相がTPP交渉参加にのめり込み始めたときに、反対派に対して「TPPおばけ」におびえていると揶揄したのも前原氏で、もともと彼は熱心なTPP推進派です。
そんな前原氏でさえ、安倍首相が、守秘義務がかかっているはずだとけん制してきたのに対して、
「本当に国益にかなうか、(首相が)見切り発車をしないために言った」
と反論したのです。安倍さんって前原さん以下だったんですねえ。
安倍首相がTPP参加の不利な条件に「後から入った人に議論を覆されたら困るというのはそれはそうだろう」
TPP参加の不利な条件は答弁拒否するのに、公的医療保険・食品の安全は大丈夫と空約束する安倍首相
そもそも民主党政権が参加しようが、安倍自民党が参加しようが、TPP自体の危険性に変わりはありません。民主党政権が参加しようとしたときには口を極めて罵倒しておきながら、安倍自民党が参加するとなると手のひらを返したように、安倍さんには考えがあるに違いないだとか、安倍さんの足を引っ張ってはならないだとか、あげくの果てに、安倍首相は最後にはTPPへの参加を拒否するはずだとか、安倍さんは参加して内側から崩壊させるのだとか妄想している保守の人々には呆れます。
他方、安倍首相は「アジア地域の成長を取り込む」とかわけのわからない謳い文句を掲げていますが、TPP交渉参加11カ国のうち、アジア4か国(ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム)の占めるGDP比率は3.4%に過ぎず、ASEAN10ヶ国のGDPに占める比率も4か国で31.4%と、TPPに参加しないインドネシア1国の38.5%にも及ばないのです。
経産省なんかがTPPに参加すると何兆円も得すると試算を出していますが、取らぬ狸の皮算用なんて数字の操作でどうにでもなりますからね。
メリットは少なく、リスクは極大なのに、安倍首相はTPP交渉に参加します。そして、参加した以上は脱退などできないのは百も承知で、日本をアメリカ企業に売るのです。
安倍首相がオバマ大統領にTPP交渉参加を約束し、国民皆保険・解雇規制など国民を守る制度を米国に売り渡す
さて、TPPへ日本が交渉参加を表明すると、米国議会が参加を認めるかどうか審査します。7月までに結論が出るといわれていますが、そうなったとしても日本が交渉のテーブルに就けるのは夏休み明けの9月からで、交渉終了の直前です。
しかも、日本が交渉参加を正式表明した場合でも、参加国と認められるまでの3カ月以上、政府は協定条文の素案や、これまでの交渉経過を閲覧できないのだそうです。この点、シンガポールで開かれた3月の交渉で、米国の交渉担当者は、
「日本が交渉参加を表明しても、事前に交渉のテキストを見ることはできないし、確定した項目に修正や文言の変更は認められず、新たな提案もできない」
と述べた、ということです。
また、安倍首相が無理難題を受け入れて交渉に参加しても、ルール作りにはほとんど加われない上に、日本が交渉入りしても加盟国が合意した項目は再協議することはない、と参加国で決められているのです。日本は決められたルールは受け入れるしかないのですが、何が決められているか書かれている、その見せてもらえないというテキストは数千ページに及ぶといわれ、日本の交渉参加はサインするだけになるのです。
そうまでして、どうして日本を危険にさらすのか。
平成の不平等通商条約、それがTPPです。日本は、黒船が来航して大砲で脅されて不平等条約を結ばされた百数十年前から全く進歩していなかったようです。
これでも安倍総理は愛国?全く呆れました。
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TPP 米、車・保険で譲歩要求
2013年3月12日 朝刊 東京新聞
民主党の前原誠司衆院議員は十一日の衆院予算委員会で、環太平洋連携協定(TPP)の事前協議で、米側が自動車の安全審査の除外やかんぽ生命の学 資保険の内容変更などを交渉参加入りの条件として民主党政権当時の日本政府に要求していたと明らかにした。安倍晋三首相は近く交渉参加表明する意向だが、 米側は安倍政権にも同様の要求をしている可能性が高い。
前原氏は、米政府が野田政権当時の日本政府に、TPPの事前協議で(1)米国が輸入乗用車に2・5%、トラックに25%を課している関税撤廃に猶 予期間を設ける(2)米国の安全基準を満たした車は日本の安全審査なしとする輸入枠を米韓自由貿易協定(FTA)と同様に設ける(3)かんぽ生命の学資保 険の内容変更-を要求したと説明した。
前原氏は、これらの要求について「米政府が、これらを武装解除しなければ(日本がTPP交渉に参加するために必要な)米議会への通告をしない、と 言っていた」と指摘。「われわれは、あまりに日本に不公平だったので妥協しなかった。安倍政権は妥協して交渉参加表明することはないですね」と譲歩しない よう迫った。
首相は「交渉していることをいちいち外に出していたら交渉にならない」と明確には答えず、「守るべき国益は守っていきたい」と述べるにとどめた。
首相は、事前交渉の内容について「(当時の政府関係者として)守秘義務がかかっているはずだ」と前原氏をけん制したが、前原氏は「本当に国益にかなうか、(首相が)見切り発車をしないために言った」と反論した。
前原氏は野田政権で民主党政調会長を務め、昨年十月から衆院解散までの三カ月間は、TPP交渉問題を担当する国家戦略担当相だった。
衆院予算委では民主党の玉木雄一郎氏が、首相がオバマ米大統領との日米首脳会談で確認した日米共同声明で自動車や保険部門が懸念事項として明示さ れたことを追及。「譲歩を具体的に行わなければ交渉参加できないのではないかと言われているが、門前払いを約束したものになっていないか」と指摘した。
TPP協定素案 7月まで閲覧できず
2013年3月13日 07時06分
環太平洋連携協定(TPP)をめぐり、日本が交渉参加を近く正式表明した場合でも、参加国と認められるまでの三カ月以上、政府は協定条文の素案や、これまでの交渉経過を閲覧できないことが分かった。複数の交渉関係筋が十二日、明らかにした。
オバマ米政権が「年内妥結」を目指し各国が交渉を進展させる中で、日本が交渉の詳細情報を得られるのは、最速でも三カ月以上たった七月ごろ。正確な情報を 得るのが遅れ、日本が不利な状況で交渉を迫られるのは確実で、貿易や投資、各国共通の規制のルール作りに日本側の主張を反映させる余地がますます限られて くる。
交渉筋によると、正式に参加国と認められた段階で閲覧できるのは、各国がこれまでに協議して決めた協定の素案や、各国の提案、説明資料、交渉に関わるEメールなどで、数千ページにのぼる。参加国以外には公表しない取り決めになっている。
日本政府は協議対象となる輸入品にかける税金(関税)の撤廃や削減、食品の安全基準のルール作りなど二十一分野で関係省庁が個別に情報収集しているが、交 渉の正確な内容を入手できていない。ある交渉担当者は、日本側の関心分野の多くは「参加国となって文書を見られるまで、正式には内容が分からないところが ある」と述べた。
日本が参加国と認められるには、各国の承認が必要で、米国の例では議会の承認を得るために最低九十日は必要な仕組みになっている。安倍晋三首相が近く参加表明した場合でも、五月に南米ペルーで開く第十七回交渉会合に、日本は傍聴者(オブザーバー)としても参加できない。
シンガポールで十三日まで開催中のTPP第十六回交渉会合で情報収集する日本の非政府組織(NGO)アジア太平洋資料センターはじめ、米国、ニュージーラ ンドの市民団体によると、米国の交渉担当官は会合で「日本には正式な参加国になる前に一切の素案や交渉経緯を見せられない」と各国交渉官に念押しした。さ らに、「日本には一切の議論の蒸し返しは許さず、協定素案の字句の訂正も許さない」と述べた。
(東京新聞)
TPPでGDP3.2兆円増と試算 交渉参加表明へ
農業生産は3兆円減
- 2013/3/15 2:00 日本経済新聞
政府が15日に公表する環太平洋経済連携協定(TPP)への参加に伴う経済効果の試算が明らかになった。輸出の増加などで国内総生産(GDP)を実質で3.2兆円(0.66%)押し上げる効果があると試算。安価な農産品の流入で農林水産業の生産額は3.0兆円落ち込むとの見通しも示すが、他の産業の生産の伸びや消費の拡大がそれを補う。
経済効果の内訳は消費による影響が3.0兆円(0.61%)、投資が0.5兆円(0.09%)、輸出が2.6兆円(0.55%)それぞれGDPを押し上げる効果があると試算。一方、安価な輸入品が増えることによるGDPを押し下げる影響は2.9兆円(0.60%)と見積もった。
TPPの影響に関しては内閣府、経済産業省、農林水産省が個別に試算してきた。内閣府は関税撤廃で実質GDPが2.7兆円増えると試算。経産省はTPPに参加しなければ競争条件が不利になるため輸出が8.6兆円、生産が20.7兆円減ると見積もった。
一方、農林水産省はTPP参加で現在10兆円の農林水産業の生産額は3.4兆円減るとの見解をまとめている。3府省の前提や計算手法はばらばらのため政府は統一試算に踏み切ることにした。
安倍晋三首相は15日、首相官邸で記者会見し、TPP交渉参加を正式に表明。全閣僚で構成する日本経済再生本部も開き、TPPを経済再生につなげる決意を示す。試算はTPP担当相になる甘利明経済財政・再生相が同日夜に記者会見して明らかにする。
これに先立ち、首相は公明党の山口那津男代表との与党党首会談で理解を得たうえで、記者会見でTPPに参加する意義などを説明。政府は近く米政府に参加する意向を伝え、日本が交渉参加するために必要な米議会の了承手続きに入る。
首相は14日夜、TPP問題を担当する自民党外交・経済連携本部の衛藤征士郎本部長らと会談し「私には大きな責任がある。重い決断をしたい。今やらないとルールづくりに間に合わない」と表明。「日本と米国でルールづくりをしていかないといけない。交渉は押し返す覚悟でやる」と交渉参加に強い意欲を示した。
同時に「主張する外交で孤立を恐れず臨む。参院選もあるが、国益を考えて判断する。強い交渉チームをつくる」と語り、官邸主導で交渉に臨む考えを示した。内閣官房に置く府省横断の専任スタッフを拡充し、閣僚会議を新設する。甘利氏がTPP担当相を兼務し、複数の府省にまたがるTPPの総合調整を取り仕切る。
大塚将司「反メディア的! その記事、ダマされていませんか?」第9回
明日正式表明、TPP交渉参加=成長戦略は本当か?米国の属国化加速の懸念も
2013.03.14
「首相官邸 公式サイト」より安倍晋三首相は明日3月15日に記者会見を行い、TPP(環 太平洋経済連携協定)交渉への参加を正式に表明すると報じられているが、これは安倍政権の「成長戦略」の目玉になる見通しだ。経済財政諮問会議の議員、伊 藤元重・東京大学教授は3月1日の講演で「TPPができれば成長戦略は半分ぐらい達成できるのではないか」と述べたという。だが、果たしてそうだろうか?
もともと、TPPは2006年5月、APEC(アジア太平洋経済協力会議)のシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリの4カ国が結んだ経済連携協定だが、09年11月にオバマ大統領が参加の意向を表明したことにより、米国主導に変質した。
アジア太平洋地域の国々のヒト、モノ、サービス、カネの移動をほぼ完全に自由にしようという、新たな自由貿易の枠組みを目指すことになり、その後、カナダなど6カ国も拡大交渉に参加した。米政府は「13年の完了」を目指すが、実現の保証はどこにもない。
日本は10年11月、菅直人元首相が交渉参加に向けて関係国との協議に着手する基本方針を表明した。しかし、今日に至るまで、参加には至っていなかった。農業、医療分野などで反対論が根強く、参加の是非をめぐる国内の世論が収斂していないからだ。
安倍首相は2月22日の日米首脳会談後に「聖域なき関税撤廃が前提でない」という趣旨のTPPについての共同声明を発表、その後の会見で早期に交 渉に参加する意向を明らかにした。支持基盤である農業団体が反対の急先鋒なため、自民党内に慎重論が根強かったものの、正式表明は時間の問題だった。
米国の狙いは、はっきりしている。発展著しい太平洋を取り巻くアジア、中南米の国々を米国流のルールの枠内に取り込み、米国が経済的にも覇権国家として君臨することだ。この野望を踏まえ、参加の是非を熟慮すべきだが、国内議論ではこの視点が欠落している。
1970年代以降の日米経済摩擦の歴史を振り返ればわかることだが、高まる日本の経済的プレゼンスを潰そうと、次から次へと高飛車な要求を突き付 けた米国、小出しに要求を受け入れ、妥協を繰り返した日本。そして、日本の経済力は米国にとってそれほど脅威にならないところまで削ぎ落とされてしまっ た。そんな日本が交渉に参加して、外交力で米国に立ち向かい、日本に有利な貿易ルールを勝ち取れるのだろうか。
●見落とされる貿易と為替の観点
もう一つ、忘れてはいけないのは、電機、自動車などの加工組み立て産業の輸出競争力で、多額の貿易黒字を稼ぎ続けた、四半世紀前の日本とはまったく違うことだ。原発の運転停止に伴うエネルギーの輸入増があるとはいえ、過去2年は貿易赤字国に転落している。
特に、12年の貿易収支の赤字額(6兆9273億円)は第2次石油危機後の1980年を大幅に上回り、32年ぶりに過去最大を更新した。この事実も重く受け止めねばなるまい。
また、為替市場の潮目も完全に変わっている。経済再建を目指す緊縮策の行方が不透明になったイタリア総選挙の結果(2月下旬)、そして、今年9月 までに850億ドル(約8兆円)の予算をカットする米国の歳出強制削減策発動(3月1日)ーー。こうした円買い材料にはほとんど反応していない。
ニューヨーク株式市場では、ダウ工業株30種平均が3月11日までの7営業日連続で続伸し、5営業日連続で史上最高値を更新している。市場予想を大きく上回って改善した雇用統計などのプラス材料にのみ反応し、緩やかな改善が続く米景気への期待が上げ相場を演出している。
米国景気回復への期待はドル高円安要因になり、3月11日の円相場は1ドル=96円台前半に下落した。日本株のほうも、日経平均株価が8日続伸、一時1万2400円乗せとなり、4年半ぶりの高値水準となった。しばらくは円安、株高基調が続くだろう。
いずれにせよ、マーケットの潮目が変わったことにより、日本企業の輸出競争力は回復し、関税障壁の影響は薄らぐわけだ。
一歩譲って、TPP参加により落ち目の電機産業の復活につながり、自動車と並ぶ新 たな輸出産業育成に道が開けるならいい。だが、その展望がみえない以上、5年後、10年後の実現可能な日本経済の未来図を描くのが先決で、成長戦略の目玉 などと嘘をつき、参加を急ぐべきではない。もっとも、日米同盟の強化との大義名分の下、「米国のルールを受け入れるのが“敗戦国”日本の宿命」という覚悟 があるのなら別だが……。
(文=大塚将司/作家・経済評論家)
安倍首相は15日にもTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加を表明する。
TPPとはいったい何なのか。安倍首相も含め、全体が分かっている人が日本に何人いるのだろうか。日本だけではない。交渉当事国でさえ、自分の国が何を交渉しているのか、国民は知ることができない。
前原氏が暴露した事前交渉の一端
一端を伺わせるシーンが11日の国会論議であった。民主党の前原誠司氏が、日米事前協議を暴露した。TPPの最大の問題点は、「農業」でも「聖域なき関税」でもない。交渉内容が国民に知らされないまま、決まってしまうことだ。
日本がTPP交渉に参加するには、すでに協議を始めている加盟国の承認がいる。前原は国会で次のように述べた。
「我々が最後まで交渉参加を表明できなかったのは、なぜかというと、米国の要求、事前協議の中身があまりにも不公平だった。トラック、乗用車につ いては関税をすぐにはゼロにしない猶予期間を設けるべきだ、ということだった。日本の安全基準については米韓FTAと同じように枠を設けるべきだ、という ことだった。保険については、はじめはがん保険だけと思っていたら、学資保険の中身を変えることについても色々と言い出した。つまり中身について、事前交 渉でこれをとにかく武装解除しなければ米国議会に通告しない、と。しかしこういう中身について我々は不公平であると、本来であれば、自動車の関税猶予なん てことは本交渉でやる話であって、我々は農産物を相殺して妥協しなかった」
事前交渉とは、何のためにあるのか。TPP交渉に参加する資格を審査する、というならまだ分かる。実態はTPP交渉に入る前の「武装解除」だったと前原は指摘する。
実質的な通商交渉が始まっていたのである。その要求は親米派とされる前原氏にすら「不公平だ」と映った。自由貿易を掲げながら自国の自動車関税は 下げない。それでいて米国から輸出する自動車には、安全基準の審査で特別なはからいをしろ、という。「OKしなければTPPに入れないぞ」である。こうい う要求は日本の国内法なら「優越的地位の乱用」とされ違法行為だ。
保険分野では学資保険も標的
保健分野ではガン保険だけでなく、学資保険まで文句をつけてきた。米国保険会社と競合する保険商品を問題にする。かんぽ生命の株主が政府であるの は非関税障壁だと主張し、「売らせるな」と圧力をかける。かんぽ生命はがん保険を扱わない、と決めたのは、こうした裏交渉を受けての決定だった。それが学 資保険までダメ出しされ、「そこまでは」と日本の腰が引けた、というのが真相のようだ。
異なる文化を持ち、制度も慣行も違う国が経済取引のルールを作ることは必要なことであり、世界はその方向に進んでいる。問題はその決め方だ。フェアで、対等で、情報が公開されることが大原則だ。
TPPの危うさは、ここにある。フェアであるか怪しい。対等ではない。情報はまったく公開されない。
中身を知らない国会議員が、どうして交渉参加の是非を議論できるのか。
安倍首相は「自民党にはさまざまな意見がありますが、いったん決まれば全員がひとつなって取り組みます」と、常々言っている。
今回も、反対論、慎重論が噴出しているが、党の部会で審議にかけ、首相一任を取り付ける段取りだ。そこには議論はない。言いっぱなし、聞きっぱな しの「ガス抜き」があるだけで、問題の所在を語り合い、ことの是非を真摯に考える自由で民主的な作業は見えない。党内の議論は、手順を踏む儀式である。
主要紙は前原発言を無視
もともとTPP交渉参加は、民主党政権で菅直人首相が、突然言い出したことだ。
対米関係でしくじった鳩山政権の轍を踏まず、米国への「武装解除」を示すのがTPP参加だった。不安定な政権を維持するには、米国との軋轢を避け るしかなかった。その足下を見透かすように「参加したかったら、これを飲め」と要求を突きつけられた。外交とはそういうものだ。
前原氏は民主党で政策調査会長を務め、昨年10月からは国家戦略担当としてTPPの事前交渉を知る立場にあった。米国の理不尽な要求を跳ねつけるこ とも、飲み込むこともできず、交渉参加を決断できなかった。環太平洋の自由貿易をうたい、モノ作り日本に新たな活路を見出すTPPというコンセプトなの に、自動車輸出に障害を残す、というのでは国民に説明がつかなかった。
国会でこうも語っている。
「我々は交渉参加表明をしたいと模索したが、この条件ではあまりにも日本は不公平だということで、我々は非対称的だということで交渉参加表明をしなかった」。そして「これ、妥協してまさか交渉参加するなんてことはないですよね」と迫った。
安部首相は正面から答えず、「前原さんも民主党も政府として交渉に当たってきた。米国との交渉においては、中身においては、皆さんに守秘義務が課せられているはずです。交渉中のことをいちいち外に出せば交渉にならない」とした。
前原氏が「守秘義務」を破っても訴えようとした「不公平な交渉」は、翌日の全国紙はほとんど載らなかった。東京新聞が扱った程度で、朝日も日経も無視した。
バスはもう出てしまった
TPPの悲劇は、交渉に守秘義務が課され、事実が外に伝われらないことだ。
前原氏が問題視した事案は、民主党政権のごく一部と官僚だけが知っていたことだ。
自動車が米国市場で不利に扱われるのを認めるか、見返りに農産物の例外を認めさせることがいいことなのか。かんぽ生命への干渉を許すのか。どれも 日本にとって重要なことだ。政府のごく一部だけが知り、決めてしまう。こんなことが秘密裏に行われていいのか。国会も国民も蚊帳の外におかれてきた。
守秘義務をかけた交渉で、得をするのは誰なのか。
日本が交渉参加を表明すると、米国議会が参加を認めるかどうか審査する。あちらもねじれ国会、財政削減をめぐり大統領とギクシャクする議会にとっ て、重要度がさして高くもない日本のTPP交渉参加が、どれほどの優先度で審議されるか定かではない。7月までに結論が出るといわれるが、そうなったとし ても日本が交渉のテーブルに就けるのは夏休み明けの9月から。交渉終了の1ヵ月前である。
入れ、入れ、とせっ突かれ、無理を受け入れて交渉に参加しても、ルール作りにはほとんど加われない。
7日の東京新聞は「日本が交渉入りしても加盟国が合意した項目は、再協議することはない、と参加9ヵ国で決められている」と特報した。バスはもう出てしまった。
シンガポールで開かれた3月の交渉で、米国の交渉担当者は、「日本が交渉参加を表明しても、事前に交渉のテキストを見ることはできないし、確定した項目に修正や文言の変更は認められず、新たな提案もできない」と述べた、という。
決められたルールは受け入れるしかない。見せてもらえない、というテキストは900ページに及ぶといわれる。交渉参加はサインするだけになりそうだ。
企業が国家を支配する
では、交渉参加国は喜んでいるのか。そうともいえないのである。なぜなら、国民は何が話され、どう決まったのか、知らされていない。交渉の主導権を握る米国でも、TPPへの疑念は広がっている。
「TPPで企業が国家を支配する」という刺激的なタイトルをつけたキャンペーンフィルムが米国のNGOによって作られた。
焦点となっているのがISDS条項と呼ばれる「投資についての紛争解決システム」だ。ある国に投資した企業が、政策の変更で損害を受けたとき、その国の政府を訴えることができる。訴訟を扱うのはワシントンに本部のある世界銀行だ。
米国のNGOは、NAFTA(北米自由協定)に盛り込まれたISDS条項を使って、メキシコやカナダで、米国の廃棄物業者が政府を訴え、巨額の賠償 金を勝ち取ったことを実例に上げ問題にしている。環境規制を強化したり、国内業者を保護したりする政府を、外資が訴えるという仕組みだ。
国境を越えた投資は、各地で摩擦を起こすことは少なくない。それぞれの国で裁判になるのが普通だが、国家を飛び越え世銀に設けられた仲裁機関が決 定する。言語は英語である。決定に当事国の裁判所は関与できない。訴訟社会の米国らしい解決方法だが、多国籍企業が訴訟という武器を装備することになる。 世銀は代々米国が総裁を送り出している。IMFと並び米国主導の国際金融体制を支えてきた拠点である。
TPPは協定が結ばれると、国内法制を協定と整合性ある形に変えることが迫られる。分野は貿易にとどまらない。薬品の認可や価格、食の安全表示の仕方、金融や輸送、知的財産、紛争処理超国家の経済秩序が各国の制度を規定する力となる。
秘密交渉のTPPの交渉内容は、各国のNGOが監視し、政権内部のシンパから情報が伝わる、という展開になっている。
TPPは、文化と伝統を背景に出来ている経済の慣行や制度を根本から問い直すものだ。改革のきっかけになるかもしれないが劇薬である。力の強いものに有利に働くだろう。
そうであるなら、国民的論議が必要だ。少なくとも国会に情報を提供して、議論されてしかるべきだろう。
「不公平な武装解除」を問題にした前原氏も結局は抱え込んだまま、国民に問いかけることをしなかった。自民党は、農協の反対を抑えるのに、米国にも「自動車という聖域」がある、と示しただけで、それでTPPで日本がどうなるのか、明らかにしていない。
安倍政権は、菅政権同様、日米関係という力学で参加を決めたように見える。あとは手順を踏むだけ。形ばかりの審議で決めてよいのか。TPPは日本の民主主義の成熟度を試しているように思う。
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野田政権よりひどい安倍政権!
お役目遂行中って感じです
いくらTPPは危ない!と自民党に意見を入れても
国民の声を聴くつもりはないようです
もう入れる気もなくなりました
私もTPPには断固反対ですが、ウヨクとかレッテル貼りしてしまっているところが管理人さんのレベルが低いという印象を与えてしまっていると思いますよ。
TPPにはリベラルの人も反対していて大いに励まされるのですが保守だってTPPなんぞ絶対嫌です。桜でもTPPの恐ろしさについては2年前から詳しく報道している訳ですから。
右翼だなんだと言ってる場合ではないと思います。私は人権を安易に振りかざす弁護士や活動家は大嫌いですし東京裁判史観を受け入れる人は大嫌いです。が!ことこの件については左も右も中道もノンポリもないのです。
皆でとにかくTPPに反対すべきなのです。安倍政権がいやならどこが嫌なのかちゃんと節目して抗議すればよいのではないでしょうか。
そもそも軍事も外交能力も諜報機関も何もなくヒューマニズムだけで人命も日本人の生活も守れる訳がないのです。フランスイギリスはじめ先進諸国はそれがしっかりあり、かつ国家観もあって、時にはダーティなこともやりながら自国を守っているのです。きれいごとで我々の生活を守れるわけではありません。
先日はご返信有難うございました。
ドラマ10ご存知とは思わず、ビックリです。
火曜日に終了した「いつか陽のあたる場所で」もよかったです^_^
日本の首相など米国株式会社に尻尾を振り任期を務めるのがデフォなようで、保守だの右翼だの自民民主だの、あんま関係ないんでしょうね。良識ある、少数派公務員を除く行政官僚のホンネは何と言っても【大過なく】が大事。行政のトップである総理大臣はその典型。自己中心的。自分を、自分のお友だちを護れればそれでヨシ。ひょっとすると日本は資本主義経済下で、もっともある種の“共産主義化”がすすんだ地域ではないか?とも思えたりします。
自己中心的といえば。
安倍って良く公式の場で【安倍政権】ってワードを使うのが鬱陶しくて堪りません。先ほどもいってました。コレ、幼児が自分のことを例えば【シンゾークン】って呼んだりするのと似てる。過去にもこういう首相いたっけかなー。気のせいかなー。
橋下はメディアを巧みに泳ぎまた飼い馴らす「男」ですが、安倍は単なるおバカで目立ちたがりで幼児的な「お坊ちゃま」ですね。
追記。
クリックいつもヤらせてもらってます(汗)
まあ、はっきり言ってTPPに関しては民主党よりマシ程度の認識しか無かったので大して驚きはしていませんが、残念なのは確かです。
保守ならば国柄を崩壊させかねないTPPにはもちろん反対だと思うし、そうでなくとも「国民の生活が第一」ならば反対ですよね。
後は精々参加国から総スカン食って抜け出しやすい雰囲気になることを願うばかりです。というか、日本の主張をきちんとしたならば必然的にそうなると思うんですが。
流石に「安倍さんははなから脱退する気だ」とまで言い度胸はありません(笑)。
追伸 下野してからカッコつける前原さんカッコ悪い。。。
事後ですみません、冒頭の画像を拝借しました。クリックでお許しを。
歴史が動いた、って感じですね。悪い方に。
国柄がどうのこうのという話の無内容さ(あんたがその美しい田園風景を壊すんやろ)もさることながら、滑舌の悪さとお顔のお肌の荒れ方にびっくりしました。
お病気の特効薬はかなり副作用がきついんじゃないでしょうか。
心配になるほどでした。