安全保障関連法案の審議が行われた11日の参院特別委員会で、共産党の小池晃議員が、法案の成立を前提にした行動計画を記した「内部文書」が、防衛省内で秘密裏に作成されていると指摘した。中谷元防衛相はしどろもどろの答弁を繰り返し、質疑は紛糾。打ち切られる事態になった。

 文書を入手した小池氏は「防衛省幹部の暴走。戦前の軍部と同じ」と批判、中谷氏の監督責任を追及する構え。法案成立を目指す安倍政権には想定外の「小池爆弾」となった。

 文書は「『日米防衛協力のための指針』(ガイドライン)および平和安全法制関連法案について」。今年5月末、統合幕僚監部が作成。当時は閣議決定を受け、衆議院の審議が始まった時期だ。「今後の進め方」では、法案成立や法施行の時期に言及しているほか、南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に関し、現法下で認められていない「駆け付け警護」の任務を付与する検討に触れた部分もあった。防衛省幹部は内部資料と認めた。

 中谷氏は当初「いかなるものか承知していない」と答弁し、「法案を先取りするようなことは控えるべき」と釈明。小池氏は「国会審議の真っ最中に、法案成立を前提とした計画が議論されている。大臣が知らないとは大問題だ」と指摘した。同日夜の党インターネット番組では「文書の存在を知っていても知らなくても、中谷さんは大変」と指摘。入手の経緯に関し「防衛省でも法案への怒りが広がっている」と話した。国会は12日から「お盆休戦」に入るが、今後の審議の混乱は避けられない。

 

自衛隊を「軍」との記述も! 防衛省・統合幕僚監部が安保法案成立後の戦闘マニュアルをすでに作成していたことが発覚し、国会中断

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2015.08.11 リテラ
 
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防衛省・統合幕僚監部公式ホームページより


 安保法制をめぐる参院審議でまたぞろ、とんでもない事実が発覚した。自衛隊が安保法案成立前から米軍と一体化して戦闘に参加するためのマニュアルを作成していたことが発覚したのだ。

 暴露したのは、共産党の小池晃議員。統合幕僚監部が今年5月末に「ガイドライン及び平和安全法案について」なる内部文書を作成していたのだが、その中には、「ガイドライン、平和安全法案を受けた今後の方向性」として、「8月に法案成立」とあり、法案成立を前提とした、具体的な自衛隊の部隊の編制まで書かれていたという。

 さらに、新ガイドラインで新たに設けられることになった同盟調整メカニズム(ACM)が常設になるという記述。そしてPKOについても、南スーダンのPKOを年明けから新法制に基づいて運用する、と明記されていた。

 まだ法案が成立しておらず、国会審議の真っ最中にもかかわらず、その成立後の方向性を、自衛隊統幕が議論しているというのは、明らかなシビリアンコントロールの逸脱。小池議員の言うように「戦前の軍部の暴走」を想起させるものだ。

 しかも、前述した文書のACMに関するくだりには、運用面の調整を実施する「軍軍間の調整所」が設置される、と書かれていたという。集団的自衛権容認によって、自衛隊内部では、自衛隊はすでに「軍」になってしまっていたのである。

 この追及に中谷元防衛相は一旦「承知していない」としながら、「同じ表題の資料は存在します」と答弁。しかし、「細部まで特定するには多少時間がかかる」として審議を中断。そのまま、休憩に入り、散会してしまった。

 この事実の危険性をメディアはどこまできちんと伝えるのか、注意しつつ見守りたい。
編集部