想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

ポルトガルの海辺で ART in KUMAMOTO 1

2017-07-05 11:56:50 | Weblog
「復興」の文字がついた熊本の観光は
お城や水前寺公園だけではないと、
訪れた人はよーく知っていると思うが
ここはどうだろうか。

市内繁華街の通り町筋から路面電車に
乗って味噌天神前で降りると目の前に
ある画廊喫茶ジェイ。
その歴史が変わろうとしている。



創業時の店主であり現在はスペインの
セビリア在住の画家川上順一氏、
夏恒例の個展がこの店で開かれるのは
この夏が最後となるようだ。
といってもジェイがなくなるわけでは
なくビルに建替えられてリニューアル
される予定という。



残念…。
レトロという言葉が薄くてここには
使えないくらい、れとろ。
人々の吐息と肌のぬくもりによって
創られてきた場所だ。

まだ若かった川上さんが設計し、
大工さんと一緒に造った。ジェイは
マスターの頭文字。
ジェイを営みながら創作を続けた。

一枚板のカウンターや大きな梁、
床、壁、棚、もちろんテーブルと椅子、
すべてが木で造られている。
入口から入ってすぐに目につくのが
昔懐かしの鋳物の丸いストーブ。

面白い話を聞いた。
スペインで成功した川上さんが帰国し
ジェイで個展を開くようになると
大工さん夫妻が訪れた。
ある年、絵を買ってくれた。
そのお礼を言いに大工さん宅を訪ね
驚いたという。
ジェイがそこにあったから。
大工さんは奥さんにせがまれて
同じつくりのリビングを造っていた。
この話を聞いて笑った。
奥さんの気持ちはすごくわかる。
大工さんにとってもジェイは自慢の
作品だろう。



ネルドリップでいれる珈琲の味、
同じうたい文句の店はあるが、
他所では味わえなかった。
川上さんのことを今でもマスターと
呼んでしまうことがあるが、
マスターのいれた珈琲をカウンター
で飲んでいたのは、私が一番寂しい時
を過ごしていた頃だった。

ジャズを知ったのはここだった。
かかっていたセロニアス・モンクが
心臓の鼓動とピタっとあってから。
心臓なのか脳天なのか、ハートに
しみいって、楽しくなった。
楽しさは、寂しさを和らげてくれた。

独りと寂しいがくっつくと
とんでもない寂しさに襲われ壊れて
しまう、つかのまそれを変えてくれた
場所であった。



今回の絵はセビリアから車で一時間
ほど走ったポルトガルの海辺に滞在
して画いたものという。



それまでも水辺を画いた絵はあったが
セビリアの山や川、白い壁の家々など
内陸部の風景だった。
大西洋に臨んだポルトガルの海というと
作家 檀一雄の晩年を思い浮かべる。



ああ、ここを気に入ってしまった
川上さんは、もう日本には戻らない
そういうことだろうと思った。

ジェイを訪ねてみませんか。
川上順一展 7月10日まで
問合せ:096-372-8732
ぐるなびにマップあります。






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