「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

Doctor's Doctor 医者の医者

2016-04-11 | 雑記
杜の都に住み始めて1週間以上が経ちました。
孤独には慣れているつもりでしたが、相馬に居た頃と最も違うのは「病棟から電話が掛かってこない」ことであり、なんというか、しばらくはかえって落ち着かない気持ちになっていました。これまでは受け持ち患者さんの存在が頭のどこかに常にありましたから。患者さんの都合によって、我々の生活が常に左右されていたのです。今となっては、病状の変化に応じて、病棟のスタッフから電話がかかってきたのを懐かしく思い出します。まあ、古巣の当直外勤に行けば、おそらくすぐに電話はかかってくるのですがね……。
臨床各科と異なって診断科には病棟がありません。つまり、入院患者さんを直接診る機会がありません。診断検査を通じてしか、我々診断部門の医師には、患者さんと接する機会がないわけです。

米国では診断科とくに放射線科の医師は「Doctor's Doctor(医者の医者)」と呼ばれます。
患者の診断に苦慮する主治医に対して適切な診断を授ける医師としてそれなりに敬意が払われていますし、放射線科の研修医(Resident in Radiology あるいは Fellow in Radiology)は人気が高く、いわゆるエリートコースです。日本ではむしろ目立たない裏方のイメージがあるかもしれませんが、その点は必ずしも各国で共通しているわけではないようです。
診断は、時にとても難しく、いつだって重責であります。
なにしろ、その患者さんの治療方針を左右するのですから。
診断科の背負っている重みは、決して臨床各科に劣るものではなありません。
とはいえ、病理科や放射線科などの診断科は、患者さんの都合に左右されずに自分のペースで仕事ができるという意味で、身体的にも精神的にも比較的に楽ではあります。当然、研究の計画も立てやすいです。OnとOffの切り替えがはっきりしていますから。

紆余曲折を経て、仙台に来てから私もDoctor's Doctorの端くれになりました。
力量が足りていないのは十分に判っているので、全く自信がないまま、不安な気持ちで仕事をしています。いつか自信をもって、診断できるようになりたいと願いながら。せめて患者さんに迷惑だけはかけないように祈りながら。
今日も今日とて修行しています。生涯勉強と言われる仕事ではありますが、まあ、頑張ります。