2009年度作品。スペイン=アルゼンチン映画。
刑事裁判所を退職したベンハミンは、残された時間で25年前に起きた忘れ難い事件をテーマに小説を書くことを決心し、かつての上司で今は判事補のイレーネを訪ねる。それは1974年、銀行員の夫と新婚生活を満喫していた女性が自宅で殺害された事件。当時、渋々担当を引き受けたベンハミンが捜査を始めてまもなく、テラスを修理していた二人の職人が逮捕されるが、それは拷問による嘘の自白によってだった…。(瞳の奥の秘密 - goo 映画より)
監督はフアン・ホセ・カンパネラ。
出演はリカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミル ら。
「瞳の奥の秘密」は、極めて上手い作品である。
過去の事件を引きずったまま、いまを生きる男が、むかしのトラウマを克服し、精神的に蹴りをつけ、前へ進んでいく過程を非常に丁寧に描いている。
その時折の登場人物の心情を丁寧にあぶり出し、事件とリンクさせるあたりはなかなか優れている。
その構成は巧みと言うほかない。
物語の運び方も巧妙で、場を盛り上げるように語る手腕はさすが。
2時間強の作品だけど、その2時間の間、集中力が切れることはほとんどなかった。
プロットにはよどみもゆるみもなく、ときに意外なできごとが起きたりと飽きさせないつくりに終始している。
作品があまりに上手すぎるため、隙がなさすぎるな、と感じる面もあるが、それは言ってみれば、ぜいたくな注文なのだろう。
しかし25年前の事件は多くの人を傷つけている。
主人公もそうだが、被害者の夫の傷は相当にでかい。
だから被害者の夫が犯人に復讐を決意する理由もよくわかるのだ。
その復讐方法も、彼なりに考え込まれていて、いくらか残忍だ。
犯人に絶望を与えようと行動する彼の姿は、この映画でもっとも印象に残る。
また、主人公の方も、この事件で仲間が死んでしまい、心に傷を負った。
だが、真実にたどりつくことで一つの区切りをつけ、前に進みだそうとしている。
とは言え、彼のラストの行動は、果たして正しいのかどうかはわからない。
だが少なくともそれはセンチメンタルな、裏を返せば、思い切りの悪く、行動が遅い、主人公にはふさわしいと言えるのかもしれない。
ラストでいろいろ複雑な気分になるものの、トータルで見れば納得の一品である。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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