計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

日本気象学会・機関誌「天気」9月号が届きました。

2015年10月03日 | 気象情報の現場から
 9月号には私の「ニューラルネットワークによるサクラ開花日の学習・予測実験(山形・新潟を例に)」と題した調査ノートが掲載されています。

 
 これまで山形県について取り組んできた、熱流体数値モデル(2009年)や降水域モデル(2014年)を経て、次に挑戦したテーマが人工知能(ニューラルネットワーク)によるサクラの開花予報でした。

 かつて、サクラの開花予報は気象庁の事業の一環としても行われていましたが、近年では民間気象会社が各々独自の予想を発表しています。そんな様子を横目に、それこそ「指を咥えて見ているしかなかった」状況が何とも歯がゆく、独自の手法で予測したいとかねがね思っておりました。

 また、ニューラルネットワークは、新卒当時の就職活動の際、ある気象情報会社が「ニューロ天気予報」なるものを実用化したことを契機に興味を持ちました。結局、その企業への就職は叶わなかったわけですが、得体の知れない「人工知能(ニューラルネットワーク)」が「天気予報」にも応用できるのであれば、その先の応用分野にも適用可能であろう、と直感しました。

 例えば、「ウェザーマーチャンダイジング」(気象予測を基にした発注計画・需要/売上予測や販売管理)はもちろん、(当時バイオメカニクス研究室にいた者としては)生気象学的な応用、すなわち「気象予測に基づく健康管理情報」、さらに現在であれば「気象予測を基にした防災計画支援情報」などが挙げられます。

 要は過去の事例・データを蓄積して、「原因」に相当する入力情報(入力信号)と「結果」に相当する出力情報(教師信号)の対応がとれた状態でのデータベースを構築して、あとは人工知能(ニューラルネットワーク)に学習させれば良いのです。

 肝心のニューラルネットワークの仕組みや理論はさっぱりわかりませんでしたが、色々な分野に応用できるであろう・・・という可能性を漠然とながら感じていました。

 あれから時が流れ、熱流体数値モデルの開発を進める傍ら、ニューラルネットワークにも挑戦しましたが、はじめから順風満帆に行くはずもありません。研究を放り投げた(断念した)のも3~4回?・・・結局10年近く掛かって、何度目かの挑戦でようやく、一つの形になりました。

 現在は、ニューラルネットワークを用いた局地気象の解析、特に上空の条件に応じた降水域と気温の分布のシミュレーションを研究しています。例えば、山形県の場合は降水域分布の形成までは「熱流体+降水域モデル」でシミュレートできますが、内陸の冷気プールのようなものは再現できません。そこで、この不足部分をニューロモデルでフォローしようというわけです。

 そしてさらには、気象条件に応じた、その他の分野への波及効果についてもアプローチしてみたい、と思ってはおります・・・が、さすがにマンパワーが限界を超えてしまいそうです。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« The computational simulatio... | トップ | オンライン「天気」にて公開... »

気象情報の現場から」カテゴリの最新記事