日本の成人の「生涯学習」率は先進国で最低(Newsweek)
経済協力開発機構(OECD)が2012年に実施した「国際成人力調査(PIAAC 2012)」では、各国の成人に「現在、何らかの学位や卒業資格の取得のために学習しているか」と調査した結果、日本は先進国の中で最低だったとの事。
日本型雇用と言うと「
終身雇用で社内の教育システムがしっかりしている」のが特徴、と認識しています。
かつては所謂、大企業と言う世界(=正確にはその系列子会社)にもちょこっと籍を置いておりましたので、
大企業グループの充実した研修制度を目の当たりにしていました。
しかし、
実際には日常の実務をこなしながら、さらに業務に関する勉強をするというのは、なかなか難しいものです。一口に「社内の研修を受ける」と言っても、その分だけ業務の負荷が軽減されたりするわけではないので(全てがそうだ、と言うわけではないでしょうが)、なかなか学習効果につながらないこともあるのかも知れません。
当時の私は、系列子会社の人間として、グループ本部に出向の身でしたので、言ってみれば「
傍系」です。これに対してグループ本社の社員は「
直系」ですね。新入社員は入社して3ヶ月程度を過ぎると(傍系は本部に出向後)、直系・傍系を問わず、
共通の専門知識の導入教育を受けます。その間も、この他に実務(「雑用」と呼ばれる類もあれば、本格的な実務のサポートまで)があります。その後も入社2年目を終了する段階で、それまでに体験した業務の成果を基に
社内論文をまとめ上げ、
その成果を発表(プレゼンテーション)するイベントまであります。
この後もさらに、実務に従事しながら、必要に応じて研修を受講することができる「
制度」は整っていました。しかし、実際には(傍系の身では)その制度を使って受講している余裕などありません。さらに、
激務の果てに心身ともに余裕を失った同僚達を何人も見送りました。今思えば、配属先にもよりますが、
理解ある部署に配属されていれば、大きく成長することも十分に可能であっただろうな・・・と思います。このように
充実した制度を持っているのは、やはり大企業ならではと思います。
もし、
自社内でこのような研修制度が整備されていない場合は、
自分で何とか学んで行かなければなりません。資格・検定試験であれば、それに特化した
専門学校や
通信講座もありますし、
Eラーニングも発達しているかもしれません。また、
社会人向けに解放された大学・大学院も現れてきています。問題は
本業と学業との両立なのではないか、と正直そう思います。
職場の理解がなければ、学校に行って勉強することができない。ましてや
学位取得なんて、休職するくらいじゃないと厳しいのではないか、とも思います(社会人は学生のように暇ではありません)。
学びを深めることと実務との関連性、要は「
学業=コスト」と「
業務上の成果=パフォーマンス」との間の
コスト・パフォーマンスが明確に描けないことが、一つの要因なのかも知れません。
そして、
企業が自社内での人材育成を行う余裕が無くなってきている、という側面も無視できないでしょう。企業が行う研修の多くが
OJT(=On Job Training)中心になってきています。OJTを通して得られるのは、「
社会人としての自覚」は勿論ありますが、基本的にその会社・部署の文化や独自の業務の進め方、すなわち「
その会社・部署でのみ通用する業務のやり方=ローカル・ルール」です。従って、
その会社・部署での即戦力を育成することはできますが、そこからさらに発展することはありません。
一生涯を、一つの会社内で過ごすことができるのならば、これでも何ら問題はないでしょう。しかし、企業の寿命が短くなり、また競合他社との吸収・合併やリストラ、人事異動での出向なども含め、転職するような事態に直面したときに、問題が顕在化してきます。
一つの仕事だけできれば良い、と言う時代はとうに終わりました。私は今の会社で何社目だろうか・・・数えるのも面倒くさいのですが、毎回、
仕事の内容はガラッと様変わりしています。しかし、
物事の基礎・基本や本質は変わらないので、何とか対応できています。
進化論を唱えたダーウィンの言葉として「
最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」が有名です。ただ実際には、これはダーウィン自身の言葉ではないとの指摘もあります。
この言葉を唱えたのが誰かはさて置いても、この言葉はビジネスにも相通じるものがあります。
マーケットは常に変化しています。カスタマーニーズも変化しています。当然、そのニーズに応えるためのサービスの在り方も変化しています。従って、ビジネスに携わる者も常に、アップデートし続けなければ、これらの変化に対応できないのです。
人間は、それまでに培った知識や経験、スキルなどの枠の中でしか、物事を理解したり、認識したり、思考を巡らせることができません。つまり、
この自らの枠を広げるためにも、常にアップデートし続けることが必要ということになります。その手段として、人材育成や研修というものがあります。日
常の業務に唯々忙殺されて、使い捨ての労働力になってしまうのは、企業にとっても社員にとっても良いことではありません。
日常の業務もしっかりとこなしながらも、
少しずつでも学びの時間を確保していく、そんな仕組みがあったら良い、と私は考えています。そんな
社会人のための学び舎が、これから必要になってくるのではないか・・・とみにそう思うのです。