英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

ボート・ホリデイ

2006-05-06 | イギリス
今回のGWは娘が水疱瘡に罹患したため帰省もレジャーも全てキャンセル。本人はいたって元気なため家の中でストレスを感じる毎日。それに付き合うまわりもフラストレーションが溜まり放題。いっそダム湖にボートを浮かべて釣り三昧と思ったのですが、家人の「一人だけずるい」の一言で断念。
気鬱になります。
115年前の彼らのように。

ジェローム・K・ジェローム「ボートの三人男」 (1889)丸谷才一訳
副題は「犬は勘定に入れません」

気鬱にかかり世の中の全ての病気を患った3人の紳士が、気晴らしにロンドンからボートでテムズ河を遡りオックスフォードまで旅をすることに。お供は犬のモンモランシー。
高校の文学史のテキストには多分出てこなかったこの小説。もっと早く知り合っていたら人生変わったかも・・・というのは大げさですが、それぐらい掛け値無しで面白いお話です。もともとはテムズ河岸の名所をガイドする意図を持って書き始めたものらしいですが、その片鱗を残しつつもまったく次元の違う19世紀末ヴィクトリア後期の名作に仕上がっています。内容はどこを読み返してもイギリス的なユーモアに満ちていますが、お気に入りは「海の船旅」「コミックソング」「火にかけた薬缶」「釣り人の自慢」でしょうか。
実はこの小説を読んだとき、最初に頭に浮かんだのが何故か夏目漱石。彼の描く「高等遊民」をこの本の中に感じたのです。3人の紳士の中には銀行家もいたようですが、彼らの浮世離れしたナンセンスな会話を漱石も神経衰弱にかかりながらも楽しんだのでしょうか。

さて話の舞台となるテムズ河。ロンドン橋あたりまでは昔から港として使われボート遊びをする風情などありませんが、郊外ハンプトンコートあたりまで遡ると川幅も狭くなり田園風景が楽しめるようになります。オックスフォードまではくねくねと蛇行を続け、数多くの水閘(ロック)を通らねばなりません。
なかなかイギリスに行けない私は、グーグル・マップで3人の旅程を辿っています。空撮の写真だけでも長閑な船旅の一片でも感じることが出来ますよ。そう、ロックもちゃんと写ってますから。


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2 コメント

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はじめまして (くろにゃんこ)
2006-05-08 09:43:20
時々、こちらのブログは拝見させていただいておりました。

かなりなイギリス通でいらっしゃるようなので、コメントを入れるのに迷っていましたが、「ボートの三人男」ということでTBさせていただきます。

私の場合は、もともとテリー・プラチェットのディスクワールド、バークリーが好きでありましたが、「犬は勘定に入れません」から「ボートの3人男」へ、さらにウッドハウスへと流れています。

イギリスの笑いは深い。
ありがとうございます。 (ぷりめら)
2006-05-08 13:32:34
ご訪問いただき恐縮です。

当方ちっともイギリス通なんてことございません。

英語もろくすっぽ出来ないくせに何回か遊びに行ったことがあるというレベルです。間違い勘違いがありましたら、ご容赦くださいね。

ウッドハウス、いいですよね。かなりの作品量みたいなので今後の出版を期待しちゃいます。

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