英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

秋の五目御飯

2007-10-29 | イギリス

20世紀イギリス短篇選(上)

この上巻では一部を除き第2次世界大戦あたりまでの作品が収録されています。巻頭を飾るキップリングの作品は19世紀末の発表ですから厳密に言って「20世紀・・」ではないのですが、これがいきなり重厚で沈痛なテーマで迫ってきます。大英帝国が最大限に膨張しようとしていた当時の、まさに帝国の辺境で帝国を支え続ける4人のイギリス人たち。鉄道関係の技師たち、医者、そして現地支配層を操る役人。本国から遠く離れた過酷な土地で彼らは何を信じて日々を送るのか・・・。
続くベネット、モーム、フォースターと「死」をテーマとしたものが並ぶ構成・・・。ちょっと息が詰まりそうになったところで、ウッドハウスが登場します。チェルシーの芸術家が多く集まるアパートでの出会い・・・。ジーヴス物なんかとはちょっと違うウッドハウスが楽しめます。
戦争で傷ついた夫の帰還を複雑な思いで迎える妻の話であるロレンスの「指ぬき」、数多くの翻訳が出ているハックスリーのミステリー「ジョコンダの微笑」・・・・・・、イギリスがまだ大きな帝国だった頃、時代を映し出しながら描かれた作品たちが楽しめます。


「船路の果て」ラドヤード・キップリング
「故郷への手紙」アーノルド・ベネット
「ルイーズ」サマセット・モーム
「岩」E・M・フォースター
「上の部屋の男」P・G・ウッドハウス
「キュー植物園」ヴァージニア・ウルフ
「痛ましい事件」ジェイムズ・ジェイス
「指ぬき」D・H・ロレンス
「脱走」ジェイス・ケアリー
「ジョコンダの微笑」オルダス・ハックスリー
「幽鬼の恋人」エリザベス・ボウエン
「単純な生活」H・E・ベイツ

秋祭り

2007-10-24 | 日常

先週末は地元のお祭りでした。近くの神社で行われる祭りは、220年前から続く神楽が子供達によって境内で演じられ、幕間には吹き火(花火)が行われます。この吹き火の起源は幕末の長州征伐まで遡り、なんでもこの村に駐留した幕府軍が火薬を製造するために釜場を開き、その時吹き火の技術が村に残されたということです。地面に据えた吹き火は高い物は4階ぐらいまで吹き上がり、手持の筒仕様のものは神楽といっしょに振り回されたりします。神楽も十二神祇神楽と呼ばれるもので、12種目から構成され、それぞれ表裏の舞があり、全部で24も舞が出てくる本格的なもの。
今年は最年少演者として娘の幼稚園の同級生も「狐」をしっかりと舞っていました。少子化の時代、演じ続ける子供達がいるか心配ですが、今のところ大丈夫みたい。(伝統として男の子しか舞えません。女子は囃子だけ。)
最後まで観ると日付を超えてしまうこの祭り、毎年楽しみにしています。
祭りが終わると秋本番です。




写真は分かり辛いですが、「狐」の一場面です。

これは寝酒にもってこい

2007-10-16 | イギリス
当初華麗にウッドハウス・イヤーをスタートさせたものの、国書刊行会の怒涛の発行にその存在がやや危ぶまれていた文芸春秋版、待望のタイムリー安打です。

マリナー氏の冒険譚 (P・G・ウッドハウス選集 3)

パブ「釣遊亭(アングラーズ・レスト)」にて、日ごと語られるマリナー氏の身内話。そのパブに集まる人々は、皆それぞれお酒の名前で呼ばれています。ジーヴス物、ブランディングズ城物で鍛えられてますので、さほどの新鮮さはありませんが、「お約束」の満足度だけは確実です。
私が、ウッドハウス作品の中で好きなのは、出てくる女性が皆ハチャメチャなこと。この選集にもロバータ・ウィッカム嬢が登場!キュートかつ「わがまま」で大胆な彼女がまわりの男達をキリキリマイさせる場面は何故か男にとって心地よいものです。
それ以外にも気弱な男に効果抜群の「バック-U-アッポ(Bタイプ)」が巻き起こす騒動なんかもいいですね。ジーヴスが作る朝の「お目覚」も飲んでみたいですが、この「バック-U-アッポ(Bタイプ)」もプレゼの前には是非飲んでみたいものです。

どこかコメディ

2007-10-10 | イギリス
遅ればせながら1000円均一に惹かれて観に行きました

「THE QUEEN」

ダイアナ元妃がパリで事故死した8月31日から葬儀が行われるまでの1週間、王室の中で何が起きていたのか、エリザベス女王がどんな決断をしたのかを綴った作品です。
実際に存命している英国一、二の超有名人たちの記憶に新しい事件を演じるわけですから大変です。ヘレン・ミレンはそういう意味で女王の孤独、不安、品格を上手く演じ分けていたと思います。彼女以外でもフィリップ殿下役も皮肉屋で知られる殿下の性格を上手く表していましたね。ブレア首相も目の動かし方なんかがそっくりで・・・・・。でも、なんか観ているうちに根本的に笑える映画のようにも思えて来ます。英国本国のテレビでよくやっている、王室や政治家をおちょくるマペットショーを観ているような気分がしてくるのです。まあ、チャールズがあまり似ていなかったのがせめてもの救いかな。これがそっくりさんだったらギャク映画になっちゃうかも。
高貴なる一族の生活が意外とフランクなんだというところ。
鹿狩りに行くときはやっぱりBarbour なんだというところ。
広大な一族の領地とブレア家の散らかったキッチンの対比が面白いというところ。
ラストシーン、女王とブレアがバッキンガムの庭で政策を論じ合う場面、女王の愛犬たちのうちの一匹がおしっこしちゃうところ。
英国人は王政には批判を大いに持ちながらも、現女王は広く敬愛を集めているというところ。
等等、見所は多い作品でした。




No but, Yeah But・・

2007-10-04 | イギリス

「リトル・ブリテン」

イギリスのコメディっていうと、ちょっとブラックで毒気のあるものが多いですが、この「リトル・ブリテン」はそのレベルを超えてかなりいっちゃてます。イギリス人の日常の場面を切り取ったシーンは、慣れない日本人ならちょっと引いちゃいそうな言動に満ちていてとってもスパイシー。登場するのはゲイ、オカマ、女装倒錯者、車椅子生活者、精神病患者、コギャル・・・・、人種差別、地方差別的発言、何でもありなんです。これがBBC夜10時の番組とは・・・イギリス人というのは大人なのガキなのか分からなくなりますね。とにかくイギリス人のステレオタイプが湧き出てて「笑い」が噴出す番組です。NHKの「サラリーマンNEO」とベクトルは似ていますが、禁断の度合いが違います。
最初観てて分からなかったのが、この番組、ほとんどの登場人物をマット・ルーカスとデヴィッド・ウォリアムス2人で演じているということ。彼らの話術自体に驚かせされます。
DVDもイギリス本国で記録的販売量をつくったとか。
このDVDで笑えるか、笑えないかでその人のイギリス度が分かるかもしれません。



この彼は自称「村唯1人のゲイ」 ウェールズ在住。