英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

暑かったですね、3連休

2008-07-23 | 日常
連休はお祭り見物を兼ねて小倉に帰省することに。
行きの途中、岩国で寄り道です。向うは、「地底王国 美川ムーバレー」。何ともB級な言葉の響きが心地よいですが、タングステンを採掘していた鉱山の後を利用した第3セクターが運営するテーマパークです。知人からの「子供は楽しめるかも・・」「とにかく涼しいのは保証する」という後ろ向きなお薦めにより、訪問を決意したのですが・・・。入場料を払うと、小さな金属プレートと地図が付いた探検記録シートが手渡されます。約800mある洞窟(坑道跡)に点在する金属パネルに刻まれた形と、渡されたプレートの形が合うかを調べ、符合すればそこにあるメッセージから隠された紋章をゲットして謎を解明していくという趣向。渡される金属プレートは何種類もあり、よほどの大家族で無い限り、同じパターンとはならない様になっています。自然とそれは競争になるわけですが・・・。中は、無理やりムー大陸をイメージさせる石像が鎮座していたり、トロッコ軌道の残骸やら、縦坑跡なんかが有り、ちょっとインディジョーンズぽい雰囲気が味わえます。地底湖や轟音響く地底滝なんかもあったりして、確かに親子としては楽しめました。
後から聞いたのですが、ここでは別に隣接する宿泊施設のプランとして、ナイトツアーが開催されているとか。限定3組が、照明が消された洞窟内に懐中電灯だけを持たされて、15分毎に送り込まれ、閉ざされた出口の鍵を求めて謎解きをするというものだそうです。90分がリミットで、それを過ぎると救助隊が送り込まれるとか。これはけっこう恐そうですね。


日曜日は午前中に北九州市立美術館に。ミレイ展を鑑賞しました。シェークスピアを題材とした「オフィーリア」で有名なジョン・エヴァレット・ ミレイですが、テート美術館で観た「オフィーリア」が日本で観られるとは思ってもみなかったので嬉しかったです。


初年時代の冒険家ウォルター・ローリーを描いた作品です。映画「エリザベス・ゴールデンエイジ」に登場する野心と下心満々の男とは違って、純真な未知なる世界への憧れが上手く出ています。


まさに、売れる絵です。教会でのお説教の最中に、ついくたびれて・・・。
ビクトリア朝のイギリス人の心を掴み、求められるモチーフを描き続け大金持ちとなった画家の全体像が分かる良い展覧会でした。

そして今回の目的だった小倉祇園太鼓の見物に。


これは夕方5時半から開かれる太鼓広場のオープニングの様子です。前日の競演会での上位入賞山車が定められた場所に陣取り(F1のスターティンググリッドみたい)、合図とともに正調祇園太鼓を一斉に20分間敲き続けます。町内を「ヤッサヤレヤレー」の掛け声とともに流す山車も風情がありますが、腕自慢の一斉太鼓は相当な迫力がありました。ただ、気になったのは、相変わらずヤンキー山車の多いこと。太鼓が上手ければ許せますけど、これが下手糞。拡声器でまったく関係ない歌をガナッたりとヒンシュク集めまくり・・・。彼らは集団暴走と同じ気持で楽しいんでしょうが、正直、「消えろ!」ですね。利害が複雑に絡む祭りに、その筋の人たちが「役割」を担って来たことは認めますが、こういうチンピラは競輪場にでも集めてやらせとけばいいと思いますね。
まあ、愚痴はともかく祇園祭は大いに楽しみました。



ユニリーバ

2008-07-17 | イギリス

この映画だったら上映禁止にはならないでしょう・・・(情けない)

「幸せのレシピ」

先日深夜BSでやっていた独映画「マーサの幸せレシピ」のハリウッドリメイク版です。
主演は、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ。ウェールズ出身でマイケル・ダグラスの奥さんです。現在、LUXのCFに出ていますよね。
「LUX」ブランドを扱っているのはユニリーバ社。このユニリーバ社は、もともと石鹸をつくっていたイギリスの会社と、マーガリンをつくっていたオランダの会社が1920年代に合併して出来た会社で、現在も両国に本社を置く企業体を採っています。紅茶のリプトンブランドも買収によりユニリーバが扱っています。その他にもモッズへアーやダヴやポンズなどやドメスト、ブルックボンドもユニリーバのブランド。クノールもユニリーバに吸収されていますが、日本では味の素がライセンス生産を行っています。うーん・・・、石鹸、洗剤系と食品系というと、同居させたくない商品群ですよね。
ところで、ユニリーバのロゴマーク。何がモチーフになっているのでしょう。ホームページで見ると・・・、こんなに複雑なものでした。

我が家では上映禁止!

2008-07-09 | イギリス

「モンティ・パイソン 人生狂騒曲」

ちょっと前に、NHK・BSで深夜にやっていた映画です。
その時は観ずに録画しておいたものを一昨日ようやく鑑賞し始めたのですが・・・。
モンティ・パイソンならではの「毒」が満載です。これに比べれば「リトル・ブリテン」なんて慎ましやかなものですね。カトリック信者の子沢山を揶揄したミュージカル仕立てのコーナーなどは最高です。
いつの間にか妻も後ろからテレビを観ています。
「これ、何?また、あのイギリスの気持悪いやつ?(リトル・ブリテンのこと)」
「これは、モンティ・パイソン。これは映画だけどもともとは同じくBBCの番組だったんだよ」
「ぜったいイギリス人の感覚って、おかしいんだって!」

~しばし鑑賞~

場面は、・・・・クレオソート氏のエピソードに差し掛かかりました。
とにかく、ゲロを吐きまくって、レストラン中がゲロまみれになるシーンです。
我家の中が妙な緊張感に浸されていると感じた瞬間!
テレビのスイッチを消されてしまいました。妻に・・・
「だめ!ありえない!こんな映画!」

次の日・・・、続きを観ようとDVDを立ち上げたのですが・・・・
何と・・・消去されていました。録画データそのものが・・・

カトリックの国アイルランドでは上映禁止だったとか。まさか、我が家もとは・・・。


「自負と偏見」だけなんですけど・・・

2008-07-08 | イギリス

カレン・ジョイ・ファウラー
「ジェイン・オースティンの読書会」


「私たちはそれぞれ、自分だけのオースティンを持っている。」で始まるこのお話。ジョスリン、バーナデット、シルヴィア、アレグラ、プルーディー、そして唯一の男性グリッグの6人が、ジェーン・オースティンの残した小説をテーマに、読書会を開催するという趣向。論じられる作品は「エマ」、「分別と多感」、「マンスフィールド・パーク」「ノーサンガー・アベイ」、「自負と偏見」、「説得」の6作品。6人それぞれの生い立ち、そして強さと弱さが読書会の合間に語られていくのですが、それを聞いているのが「私たち」という存在。そう読者もいつのまにかこの読書会のメンバーになってるかのような気がしてきます。随所にオースティン作品に出てくる人物像が、6人にさりげなく似てたりとかして、オースティン愛読者なら楽しめること請け合いですし、もちろん、オースティンをまったく読んだことのない人も十分に楽しめます。グリッグなんて、この読書会のために初めてオースティンの本を購入したという設定だし、途中で「自負と偏見」すら読んだことがないことがバレて、他のメンバーを愕然とさせたりするのですから、心配はいりません。私自身「自負と偏見」を読んだだけという初心者でしたが、十分に堪能しました。巻末には、ファウラー自らの取り上げたオースティン6作品の解説と、オースティンを取り巻く関係者、各時代の読者によるオースティン作品の評価がまとめられてます。そしてご丁寧にも、この本自体を読書会で取り上げるときの質問集まで・・・。ジェイン・オースティン作品への楽しい手引書としても価値がありそうです。
後半に出てくる、改良された占いボックス「オースティンに聞いてみよう!」っていいですよね。日本人作家だったら誰の占いボックスが欲しいですか?
全てを読み終えた後で、巻頭に掲げられたオースティンの言葉を読み返すと、ちょっとニヤッとしてしまいました。「人の打ち明け話が完全に真実を語っているということは、まれ、きわめてまれである。ふつうは何かが多少とも偽装されていたり、少しばかり間違っていたりするものだ。」
私も毎日の忙しい生活に少しだけオースティンを取り入れてみようかな。

白を基調としたシンプルな装丁もいいです。



もうすぐ会えるね

2008-07-07 | イギリス

苦手なもの・・・、それは整理整頓!会社の机の上は、入社以来書類と原稿の山、山、山・・・・。よく地滑りを起こしては、隣の社員からヒンシュクを買っておりました。最近は月に1度、机周りの整理整頓状態を巡回チェックする制度が設けられ、巡回日の前日、退社時間に書類の山をそのままキャビネットに放り込む始末です。そのうちキャビネットも一杯になり・・・そのまま廃棄するのですが・・・。だいたい今まで、キャビネットの中から必要なものを取り出した記憶がないのが可笑しいところです。パソコンのデスクトップもリアルな世界同様ぐちゃぐちゃです。アイコンがデスクトップ全てを覆っている状況に周りの連中は唖然としています。加えて私は事務処理がこれまた大の苦手です。だいたい会社ってのは提出書類や会議資料が多すぎませんか?!出張届け、新幹線回数券申請、仮払い申請、出張精算、部下の残業申請、休日出勤申請、時差出勤申請、有給休暇申請、物品購入申請、定期購読申請、書籍等購入申請、弔電申請、結婚許可申請(何じゃこれ!)、家族調書、各種年末調整用書類、大量の発注書、大量の納品書、取引先登録申請、36協定申請、月報、週報、小口交通費精算、派遣採用申請、派遣継続申請、社外セミナー等受講申請・・・・・、加えて果たして本当に必要かどうか実に怪しい各種会議資料が追い討ちをかけます。劣悪なデスクトップ環境の下、当然提出期限に間に合わせることは困難を極め・・・・いつもボスや総務から督促のメールが山のように・・。机の引き出しには切り忘れた領収書の束が・・・2ヶ月前のだから切るの諦めましょう・・・。
でも、こんな事務処理最低な男がヒーローっていうお話があるのです。そう、

R・D・ウィングフィールド 「夜のフロスト」

これは「クリスマスのフロスト」「フロスト日和」に続くシリーズ第3弾の作品です。イギリスの架空都市「デントン市」を舞台にした警察小説ですが、主役を張るフロスト警部ってのが、事務処理能力ゼロ!って刑事。しゃべれば下品で服装もだらしない。でも、私と違うところは、とにかく仕事中毒ってところ。睡眠もとらず、紅茶一杯飲む時間も惜しんで動き回り続けるのです。本筋とはとうてい無関係と思える些細な事件を幾つも抱え、そんでもって最後にはそれらの数ある事件の顛末がいきなりパズルが完成するようにピッタリとはまって難事件そのものが解決しちゃうというところが見ものです。あらためて奥付を見てみると、発行年が2001年6月です。もう7年も前なのですね。そう、7年も待たされました!そうです。とうとう次のシリーズが7月末に発売されます。題して「フロスト気質」とか。上下巻2分冊ということでボリュームもたっぷりみたい。暑い夏もこれで乗り切れそうです。

もうすぐ夏本番・・

2008-07-01 | イギリス
クリストファー・プリースト「限りなき夏」

「双生児」で、それまでは何ともなかったのに、突然地面が軟らかくなったかのような読書体験を与えてくれたプリーストの短篇集です。ここには8編のお話が収められています。

「限りなき夏」
戦時中のロンドン。空襲警報が響く中、男が1人、橋の上で佇んでいる。実は、彼はその時代の人間ではない。その場所でかつてどんな男女の会話がなされたのか、どうして彼はこの場所から動こうとしないのか。そして凍結者・・・とは・・。

「青ざめた逍遥」
遥かな未来のイギリス。ある目的のために作られた小川。そこには3つの橋が掛けられています。1つは明日へ渡ることが出来る橋、1つは昨日に渡ることが出来る橋、そしてもう1つはそのまま今日に渡ることが出来る橋です。このエリア一帯は人々の憩いの場として開放されており、主人公の少年一家も年に一度のピクニックでここを訪れることを心待ちにしています。少年が橋を渡るときに起こしてしまったハプニング。その時少年が会った人とは・・・。
恒星間旅行が試みられる時代にあって、バスケットを抱え、家族揃ってのピクニックを楽しんでいる光景が、古き良きイギリスそのものの様に思えるところが不思議なところ。少年のお父さんは、フロックコートにシルクハットという出で立ちです・・・。

「逃走」
プリーストのデビュー作とのこと。全体を貫く緊張感とスピード感。押し寄せるパワーと恐怖が主人公と共に読者を包み込みます。現代の先端デジタルアニメーションを観ている印象。

「リアルタイム・ワールド」
何故か完読できすコメントなし。

「赤道の時」
ここからの4篇は、数千年も戦争が続く、架空の群島が舞台であるシーリーズから選ばれています。シーリーズ物とはいっても、それぞれは関連性のないお話です。
この「赤道の時」は飛行機に乗る者からの視点で語られています。新しい飛行理論で時空を飛び回る飛行機たち。どこまでも続く大空と赤道上に浮かぶ島々の情景が美しく描かれます。

「火葬」
据え膳食わずは男の恥・・・が、食わなかったことで、いや、別なものを食べてしまったことで、とんでもない悲劇を招くことに・・。エロティックで恐くて、ちょっとエグイお話です。

「奇跡の石塚」
ここでやられてしまいました。プリーストには気をつけろ!とあれだけ慎重に読んでいたのに・・・。ちょっと油断した隙なのでしょうか、まんまと作者の意図通りに引っかかってしまいましたよ。

「ディスチャージ」
どこか現実感のない戦争・・。その戦地に送られた男は、赴く途中に目にした島々の名前を記憶し、その記憶を頼りに帰還しようとします。今では忘れ去られた絵画技法に執着し続ける男の運命は・・・。
これもなかなかにエロティックです。