『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

逆境でも自分次第『いじっぱりのクイーニ』

2017-03-07 06:24:55 | アメリカ文学


『いじっぱりのクイーニ』ロバート・バーチ著 五頭和子訳 福武書店
258頁 1966年(原書初版)1988年(翻訳初版)小学上級より


“今日の一冊”は、アメリカで数々の賞を受賞したコチラ。
1930年代大恐慌の時代のアメリカ南部ジョージア州を舞台にした物語です。

【ここがポイント】
・貧しく厳しい環境の中にも、牧歌的なのどかさと明るさがイイ
・十代の多感な心理、怒りとの向き合い方を平易な言葉で描いている
・逆境に負けない姿勢、言い訳をしなくなっていく姿が清々しい!
・自分が抱いていた幻想を捨て、現実の親の姿を受け入れる強さに感動


 

13歳のクイーニは、素行が悪く、問題児として見られている少女。
本当は芯が強くて、自分をしっかり持っている女の子なのに、白い目で見られがちなのは、お父さんが刑務所に入っているから。当然周りはからかいます。

♪クイーニの父ちゃん 鎖にしばられ、おりの中♪

なんて、歌ってはやしたててね。人ってからかわれるとすごく傷つくんですよね。
でも、クイーニは同情されるのも、父親の悪口を言われるのと同じくらい頭が来るといいます。
そして、カッカしてしまうのに、それをいかにも気にしてないようなふりをしてしまう自分もいやになっちゃうんです。

なんであたしって、気にしてないようなふりなんてしちゃうのかしら。そうやって自分の心にうそつくから、ことがどんどんややこしくなっちゃうのよね。

って。エライ!!!そこ気付けるんだ、13歳で
自分が自分の心にウソつくから、なんだかイライラすること、気づけてない大人の多いこと!

クイーニの災難は続きます。
クラスメートの中でもクレイビーっていう特に嫌な奴がいるんですけどね、そのクレイビーにケガをさせちゃったのでもう大変
そこへ、教会の窓ガラスを割った犯人だと濡れ衣もきせられ、自暴自棄になってもおかしくない状況に。

そんなクイーニを救ってくれるのは、色眼鏡をかけず、先入観で彼女を判断しようとしなかった3人の大人たちでした。
校長先生、判事さん、そして病院の先生。
直接的に救うわけではないのだけれど、彼らと話したことで、クイーニは怒りのおさめ方を学ぶんです。

「わたしはね、固く信じている。思いやりのない人間は、結局、自分で自分を傷つけているんだ。他人を傷つける以上にね」(p101)by 校長先生

「・・・だれかが、してはいけないことを、してしまったとしようー大人でも、子どもでもだ。たいていの場合、本人やまわりの人間は、悪いのは自分たちじゃない、いっしょにいた仲間なんだと、思ってしまう。もちろん、くだらない仲間に本当にひきずられることだってある。けれど、わたしたちは、ひとりひとり、自分自身の考え方や行動に責任を持たなくちゃいけないんだ。-つきあう人間を選ぶというのが、まず第一にあげられるね。自分の行動に責任があるのは、いつだって自分自身なんだ。仲間じゃあない。・・・」(P161-162) by 判事さん

自暴自棄になりそうなとき、彼らの言葉がクイーニの暴走を抑制するんです。人は人と接することで成長するんだなあ、としみじみ

窓ガラスを割った真犯人が見つかったとき、校長先生は、普段から騒ぎばかり起こして周りからの信頼を失わせていたクイーニにも反省点はある、としながらも、こう言います。

「・・・でも、きみにはそれだけエネルギーがあるっていうことなんだから、どうせならもっといい方に使ってごらん。きっと、自分でもびっくりするくらいうまくいくよ。そうだね、こんなふうにも言えるかな。楽しいことだって、石を投げれば、じゅうぶんとどくところにあるんだよ。本当にすぐ近くにあるんだよ。そこまでいけるかどうかは、もう、きみしだいだ」(P.235)

これね!!!それだけエネルギーがあるってこと、目の前の表面的な言動にとらわれて、言えそうでなかなか言えないの
校長先生、ブラボ~
自分の考え方や行動を決めるのは自分自身。
さ、今日から言い訳はやめよう!そう思わせてくれる一冊でした。


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