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「ニュームーン~」 「渇きの海」 加筆修正検証

2009-10-29 00:46:19 | コラム
以前実行した 『愛くらいちゃんと』 の加筆修正検証だが。

そもそもわたしが、なぜ
依田沙江美さんの雑誌掲載作品について
雑誌掲載時とコミックス収録時で
どんな加筆修正どのくらいあるのかを調べてみよう
という気になった一番の大きな理由は、
現在コミックスが発売延期になっている作品に
依田さんはどのくらいの加筆修正をしようと考えているのか、
それを過去の作品の加筆修正を調べることで、
ある程度推測できないだろうか? と思ったことにある。

そして、実は加筆修正の検証には、
今年の6月くらいから着手していた。

しかし、その検証は一度挫折した。

なぜなら、あまりにも加筆修正が多数&複雑で、
やってもやっても終わらず
「ひーん、もうやだ、やめるっ! (泣)」 と
投げ出してしまったからである。

その時に検証したのは
コミックス 『ニュームーンに逢いましょう』 に
収録されいている下記2作品、

「ニュームーンに逢いましょう」
   → アイス Vol.10 掲載 (1996年10月10日 発行) / オークラ出版
「渇きの海」
   → Charade 2000年 5月号、7月号 掲載 / 二見書房

である。

「なんでその2作品を選んだの?」 と訊かれたら、
「掲載誌がたまたま手に入ったから」 と答えます ……
特に意図はありません。

そして、わたしはまず最初に
1996年に描かれた作品 「ニュームーンに逢いましょう」
検証着手した。
そしてこれはすぐに終わった

なんと、に関してはまったく加筆修正がなかったからである。

「なーんだ。依田さん、昔の作品ではそれほど
 加筆修正しなかったんだなー」

などと、まだ1作品しか調べていないのに、
わたしはのん気にもそんなことを考えていた。

その「ニュームーンに逢いましょう」 の検証終了後、
次に着手したのが 「ニュームーン~」 の続編である
2000年に描かれた作品 「渇きの海」

これが、やってもやっても検証が終わらず
わたしを一度は挫折させた作品である。 orz

「渇きの海」 は二見書房のシャレードに前後編で掲載された。

よし、まずは事前にコミックスを読まず、
先入観なしで雑誌掲載時のオリジナルを一読! と思って
読んだのだが、んん? 何がちがうのか、
わたしの脳ミソではさっぱりわからん ……

とりあえずページ数を調べると、
雑誌掲載時の扉ページを除く本編は60ページであるのに対して、
コミックスの扉ページを除く本編は69ページになっている。
(※ いずれも前後編あわせてのページ数)

げっ、9ページ本編加筆があるの?

『ニュームーンに逢いましょう』 のコミックス描きおろしは、
あとがき以外では同人誌掲載作品 (「暗殺者のプロフィール」番外編)
再録だけだったので、
新たな描きおろしはほとんどないんだな、と思っていたが、
実際には 「渇きの海」 に加筆という形で
9ページも描きおろされていたのか。

そうか、甘野有記さんの 『楼閣の麗人』 に収録されている
「女王陛下の首飾り」 と同じなんだな。
(※ 詳しくは過去のコラム 「加筆修正に関する考察」 をお読み下さい)

本編のページ数を確認後、雑誌コミックスを見比べながら検証開始

そして本編1ページ1コマ目にさっそく背景の加筆発見

むぅ …… こんな早々と。
イヤな感じだ。

本編2ページ以後も、ほぼ毎ページにトーンの貼り足しや背景の追加、
若干の絵の変更などの単純な加筆修正があり、
コミックス41ページ目からはページ増加をともなう
加筆修正があるのだが ……

うっわ、なんじゃこりゃ?

これまでにわたしが雑誌とコミックスとを見比べて
はっきりと確認してきたページ増加をともなう加筆修正は、
ページをまるごと1ページとかまるごと複数ページ増やす方法ばかり
だったのだが、
この 「渇きの海」 のページ増加をともなう加筆修正は、
ページの途中から加筆が行われている ……!

言葉で説明するのがけっこうたいへんなので、
簡単な図で説明してしまうと。

雑誌掲載時の
 ・本編8ページ目 (右側、オレンジの図) と
 ・本編9ページ目 (左側、黄色の図)
コマ割りはだいたい下記 (↓) のような感じなのだが。
(※ コマ割りは一部省略しています)

加筆修正前
         9ページ目 ← 加筆修正前 → 8ページ目

これが加筆修正 (緑色の部分) されるとこう (↓) なる。

加筆修正後
                加筆修正後


コミックスでは本編8ページ目 (オレンジ色のコマ) の途中から
エピソードが追加 (緑のコマの部分) され、
8ページ目のコマの一部は次々ページに切り貼り移動し、
しかも移動先で押し出されたコマ (欄外の黄色) が
別ページへさらに切り貼り移動する、という ……

ぐっはぁっ!
なんと複雑な ……

しかも、ページ増加をともなう加筆修正は4つあるのだが、
このひとつ目の加筆修正を含めて、
合計3つがこんな感じのページの途中からの加筆修正なんである。

…… 甘野有記さんの 「女王陛下の首飾り」 の
2ページずつ合計8ページ増のエピソード追加では、
「うまく追加されてるなあ、すごいなあ。
ちゃんと話がつながるなあ」
と感心したが。

依田さん、これもすごい加筆です ……

「女王陛下の首飾り」 と、
山田ユギさんが、セリフ横書き・左綴 (と) じの作品を、
切り貼りでセリフ縦書き・右綴じに直したのを
ミックスしたすごさだと思う。

エピソード追加以外にも、
「渇きの海」 ではトーンの貼り足しなどの単純な加筆修正が
多数あり、なんと雑誌掲載時とコミックス収録時で
まったく変更がないページは1ページのみ

本編が69ページなのに、
わたし的には 『愛くらいちゃんと』 (本編約160ページ) よりも
加筆修正濃度というか密度みたいなものが
高いように感じた。

「渇きの海」 の加筆修正の割合などを表にまとめると
下記のようになります。
(※ 詳細はサイトでどうぞ →こちら

雑誌掲載時の話数前編後編合計
A:雑誌に掲載された本編ページ数312960
B:雑誌に掲載された本編ページのうち  加筆修正があるページ数312859
C:加筆修正したページの割合 (%) 1009798
D:加筆による増加ページ数 +8+1+9
E:増加ページを含む  加筆修正したページの割合 (%) 126100113

   ※ C:加筆修正したページの割合 (%) = B ÷ A
   ※ E:増加ページを含む加筆修正したページの割合 (%) = (B+D) ÷ A


特に選んだわけではないのに、
どえらい加筆修正割合になってしまったな ……

そうか、過去にはこんな大きな加筆修正をした作品があったのか ……

あー、発売延期になっているコミックスのうち、
特に二見書房様。
いっそ 『美しく燃える森』雑誌掲載時の原稿
そのまま収録したものを暫定版コミックスとして出しませんか?

で、依田さんがご満足のいく加筆修正が終わったら、
それをあらためて 「完全版」 とか 「愛蔵版」 とか銘打って
出版する、と。

暫定版は完全ネット予約制でもOK。
予約部数相当少なかったら、多少割高でもかまわないから
オンデマンドで出版するとか。

「暫定版を買えばとりあえず話を読めるんだから、
完全版なんて買う人いないんじゃない?」 という心配は、
ナツモエの応募券完全版につけることで解消しましょう。

―― っていうか、暫定版にも完全版の応募券と合わせれば応募OK
ナツモエ応募券をつければ、暫定版の部数も伸びるんじゃね?

早く読みたいファンに暫定版を買わせ、
さらにナツモエに応募したいコアなファンに完全版を買わす。

一粒で二度美味しく依田沙江美さんのファンをしゃぶりつくす、と。

悪くないプランだと思うのですが。

正直、『美しく燃える森』 へ 「渇きの海」 並みの加筆修正を
依田さんがご予定しているならば、
『美しく燃える森』 の発売はまだまだ先になるのでは、
と思わされた結果の出た今回の加筆修正検証でした。