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加筆修正・検証編 『愛くらいちゃんと』

2009-08-16 19:23:04 | コラム
依田沙江美さんの最新刊 『愛くらいちゃんと』 では
どんな加筆修正どれくらい行われているのか?

そしてその加筆修正からどんなことが読み解けるのか?

前回はこの疑問を提示するところで終わったわけだが、
まずは実際に 『愛くらいちゃんと』 の雑誌に掲載されたものと
コミックスとを見比べて、
本編ページにどんなちがいがあるのかを調べてみた。

そしたら ――

…… ぐおぉっ

検証開始2ページ目 (コミックス P.5) の1コマ目で、
すでに雑誌掲載時とコミックスとで微妙に絵がちがう……っ!
右側の吹き出しの後ろにトーンが貼り足されている。

2コマ目もちがう。5コマ目もちがう。

次のページ (コミックス P.6) もいきなり1コマ目からちがう!
2コマ目3コマ目もちがうっ!!

ひいぃっ!
なんかわたし、とんでもないというかロクでもないというか、
どえらくアホタイヘンなことをしようとしてるっ!?

1ページずつこんな話をしてったらきりがないので、
加筆修正があるページの結果を下記のようにまとめてみました。
※ 詳細はサイトでご覧下さい。→ こちら)

雑誌掲載時の話数合計
雑誌掲載時本編ページ数31232331724 *515159
加筆修正があるページ数29211514735094
加筆修正したページの割合 (%) ※9491654510013100059
  * 雑誌掲載時の本編ページ数は実際には25ページなのですが、コミックス収録時に1ページ
    カットされているので、24ページにしてあります。
  ※ (加筆修正があるページ数) ÷ (雑誌掲載時本編ページ数) = 割合 (小数点以下四捨五入)


※ 1ページあたりの加筆修正を入れたコマ数がちがうので、
  割合を調べる資料としては弱いかなと思ったけど、
  とりあえずページ数で修正の割合を計算してみました。
  コマ数はさすがに数える気にならん。



連載1回目の原稿は、本編31ページ中29ページ (94%) に
コミックス化にあたってなんらかの手を入れたのか ……

雑誌の方を読んでもそれほど白いと (わたしは) 思わないけど、
依田さん的にはあれこれ手を加えたかったのね。

連載2回目の原稿は、修正を入れたのが本編23ページ中21ページ (91%)。
連載時は作画の時間に余裕がなかったのかな。
くぅ……、がんばれ、依田さん。

連載3回目4回目は、
加筆修正したページの割合がそれぞれ65%、45%。
前2回にくらべれば加筆修正の割合は低い。
作画のためにさける時間にわりと余裕があった、という
ことなのかしら?

しかし、連載5回目は加筆修正うんぬんの前に、
雑誌掲載されたのが扉ページを入れてわずか8ページのみ。

ぐっはぁっ (吐血)

お元気なのかしら、依田さんっ!?
どこか身体の調子が悪いとかっ!?
ホントにもう、それだけが心配よ。

まあ、依田さんは以前、自分はネームに時間がかかると
言っていたので、きっとネームに時間がかかって、
作画にあてる時間が足りなかったいうことなのだろう。

この推測を裏付けるように、
その次の連載6回目は、
雑誌に収録されている本編24ページ中、
加筆修正されているページは3ページ (13%) しかない。

8ページしか雑誌に掲載されなかった連載5回目の時点で
すでに連載6回目分までのネームはできているので、
作画に十分な時間がかけられた、と推測できる。

そしてわたしが最終回だとカンちがいした連載7回目
隔月連載なのに、雑誌掲載はまさかの6ページ (本編5ページ)

雑誌の表紙には
「石倉先生×昴の恋 注目のラスト!!」ってあおりが入ってて、
目次ページP.329から 「愛くらいちゃんと」 になっているのに、
最終回でもないし、P.329から載っていない (P.331 から掲載されていた)
しかも 「愛くらいちゃんと」 のあとから
目次に載っていない新人さんの作品がはじまっている。

すげぇ。
カラーの雑誌の表紙の方が印刷所に入れる締切りが早いと思うから、
表紙に修正入れられなかったのはしかたないと思うけど、
モノクロ目次にも修正入れられなかったのか。
それほど超ギリギリまで依田さんの入稿をねばったのか。

依田さんも編集さんもおつかれさま…

そしてこの時雑誌に掲載された本編5ページには、
コミックス化するにあたってすべてのページに加筆修正が
入っている。
よっぽど作画の時間がなかったんだな。

しかし、わずかなページ数でもいいから絶対掲載する!
決して連載を落とさ (せ) ない! という編集部側の
ものすごいガッツが感じられる。

さて、若干話が横にそれるが、
この当初最終回の予定だった連載7回目 (6ページ) が
雑誌掲載されたのが2009年5月14日発売の花音6月号。

その雑誌掲載と同時にコミックスの発売予定7月29日
ネット上で告知された。

連載7回目が本当に最終回だったら、
雑誌連載終了 (5/14) からコミックス発売 (7/29) まで
2ヶ月以上あったわけだけど、
最終回が7月14日発売の花音8月号までのびてしまった。

最終回が7月14日で、コミックス発売が7月29日
それってテレビで言うところの撮って出しの状態じゃん!

―― と一見思えるが、
これまたきっと最終回全体ネーム
6ページしか掲載されなかった
5月14日発売の花音6月号の時点で終わっていたのだろう。

そのため、本当の最終回となった連載8回目
作画の時間に余裕ができた、と推測でき、
その推測を裏付けるように、
7月14日発売の花音8月号に掲載された
最終回の本編15ページにおいては、
コミックスでは加筆修正はない

コミックスにそのまま収録できるレベルにまで描きこんで、
雑誌掲載した、ということになる。

そしてその最終回の原稿はわりと早めに入稿してて、
その後は最終回以外の原稿に、
コミックス化のための加筆修正をガンガン入れていたのであろう。

コミックスに収録された最終回以外の本編ページは144ページ
そのうちトーンの貼り足しや背景の描き足しなどの
単純な加筆修正がされたページは94ページ

ぐはー、たいへんだったなぁ。

依田さん、本当におつかれさまでした。

―― と、まあ、コミックスでの加筆修正調べると、
こんな感じで作家さんが雑誌連載時どんな苦労をなさったのか、
ということなどが読み取れるのではなかろうか?

あともうひとつ、今回の検証でわかったことがある。

それは、加筆修正には、

1.物語がよりわかりやすくなる加筆修正
2.読者サービスのための加筆修正
3.トーンの貼り足しや背景の追加、若干の絵の変更などの
  単純な加筆修正


以外に、

4.減ページ (カット)

があるということ ……

『愛くらいちゃんと』 においては、
雑誌掲載時の連載6回目・本編1ページ目
コミックス収録されていない

つまりカットされた、ということである。

詳しい事情はサイトの研究室に書いたので割愛するが、
確かにこれ、台割 (だいわり) の都合上、
1ページ増やすか、あるいは1ページ減らすかしないと
仕方ないよな。

そして 『愛くらいちゃんと』 では
1ページ減らす=カットを選択したんだな。

そんなわけで、『愛くらいちゃんと』 には、
雑誌掲載された本編の中に、
コミックスに収録されていないページが存在します。

えー、長々と書いてまいりましたが、
『愛くらいちゃんと』 加筆修正の検証、
お楽しみいただけましたでしょうか?
(楽しいのかな…わたしはそれなりに楽しみましたが)
(応用の達人・友人Aには 「楽しそうだね」 と言われました)


またそのうち既存のコミックス収録作品で
加筆修正の検証をやる予定。

ただし (思ってたよりも) 時間がかかるので、
次回のアップデートがいつかは未定。

興味がある方は、気長に次回をお待ち下さい。

それでは、また。


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