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「松尾の箱」管理人の、BLにまつわるあれこれ
現在は気が向いたときに更新

ネットワーク

2009-02-23 19:18:34 | コラム
以前、わたしは生まれ育った首都圏を離れ、
地方」というかぶっちゃけ 「田舎」 に住んでいたことがある。

どれくらい田舎かというと、
とりあえず雑誌も書籍もコミックスも、
本はすべて出版社が発売日とする日には売っていない
という程度に田舎だ。

「○○さんのコミックスは、今月25日に発売!」とか言われても、
その日に本屋の店頭で売られていることは100%ない

余裕をみて4~5日遅れで本屋にチェックしに行っても、
まだ売られていないこともあれば、
そもそもその本屋では入荷予定なし、なんてこともあり、
(もちろん入荷数が少なく、売り切れてることもある)
ほしい本を入手するには、ア○ゾンに注文するのが
一番早くて確実、というのが実情だった。

それでも、当時の住まいに引っ越した当初の頃は、
家の近くに小さな本屋さんがあった。

そしてその本屋さん、それほど売り場面積が広いわけでも
ないにもかかわらず、
「なんでこんなにBL充実してるのっ!?」と
東京から来たわたしが驚くくらい
BL本の品揃えに力を入れてくれていて、たいへん助かっていた。

雑誌はもちろん書籍やコミックスも、
新刊だけでなく、ちょっと前に発売されたものでも、
話題の作品は必ずあった。

おかげでわたしはBL本を、いつもお店で現金で ―― つまり、
通販で個人情報を流出させることなく入手できていた。

きっとこの本屋さんのスタッフの中に、BLが大好きな人がいるのね。

「GJ、見知らぬ店員さん!」 と、いつもわたしは心の中で思っていた。

まあ、単に 「売れる」 本を並べていただけなのかもしれないが。

ところがわたしが引っ越してきてから間もなく、
その本屋さんがなくなってしまう (撤退する) ことになった。

えー、この本屋さん、なくなっちゃうのっ!?
それは困るっ!

なにしろ田舎なので、他の本屋と言われてもそう簡単にはないのだ。
少なくとも、わたしの生活圏には代わりになる本屋さんはなかった。
(BL本をあつかっている本屋がないのではなく、本屋そのものがない。くぅー)

それまでわたしはBL本を通販で買ったことがなかったのだが、
その小さな、しかしBL本が充実した本屋さんがなくなった以後は、
ア○ゾンなどの通販で買うようになった。

あー、インターネットがある時代でよかった。

ネットがなかったら、地方でオタクなんてやってられないよ。

平台に並べられた本を見て、「お、これおもしろそうじゃん」 と
表紙買いをすることはなくなったが、
それでもわたしのオタク生活は、
インターネットによってどうにか支えられていた。

そして、そんな日々を送っていた中の (確か) 2006年4月5日の朝。

その日、わたしはいつものようにネットで新聞を読んだり
なんだりしていた。
そのうち 「あ、そうだ。ビブロスから出るコミックスで
チェックしたいのがあったんだっけ」 と、
何気なくビブロスのサイトにとんだ。

すると、トップページが文字だけの白い画面が表示された。

「あれ?」 と思ってよく見ると、
倒産したのでこのサイトは閉鎖した」 的なことが書かれている。

え? 倒産?

……… ?

――― !

えええ ―――――っ!

ビブロスが倒産っ!?

うっそ、BL業界のジ○○ーズ事務所であるビブロスが倒産?

そんなことがあるんかいっ!?

とりあえずソッコーでBL仲間にケータイメールを入れる。
返って来たメールはたいてい 「うっそ、マジっ!?」 的な内容だった。

時間がたつにつれ、Yahoo!や出版業界サイトにも
ビブロス倒産のニュースが流れ始めていることがわかった。

ひぃい~
ビブロス、本当に倒産したんだ。

じゃあ、あのシリーズとかあの作家さんのコミックスとか、
これからどうなっちゃうのっ!?

とりあえずは、次号のマガジン・ビーボーイ (2006年5月号) の
発売まで、あと2日だけど、その発売はどうなっちゃうの?

不安は募るが、しかし、ここはオタク不毛の地

独立UHF系アニメは見られないし、
雑誌だろうがなんだろうが、
目当ての本が実際に出版されているかどうかを、
本屋の店頭で確認できないド田舎なのだ。

「いちおうア○ゾンでMBBの5月号の予約はできるんだけど、
 あとで出版社側の都合でキャンセルされるかもしれないし。
 すまん、誰か発売日当日に、書店で売られているかどうか、
 確認してきてっ!」

田舎から届いたわたしの悲痛な叫びメールに応えて、
東京に住むBL仲間が発売日当日 (4/7) に、
本屋へチェックに行ってくれた。

んで、「売られていた」 との報告が届いた。

はぁあぁぁ~

安心して脱力 …… (ぐったり)

ああ、インターネットがある時代でよかった。

そしてBL仲間がいて本当によかった!

インターネットという通信手段としてのネットワークと、
BL仲間たちとの間の、互いを支えあう人間同士のネットワークと。

地方に限らないかもしれないが、
このふたつのネットワークはわたしのオタク生活を支え、
なおかつ、より豊かにしてくれる必携アイテムだったと、
いまでも時々あの頃のことを ―― 思い返すのである。