詩遊空間 <いつかのBGM>

今まで聴いてきた音楽、今日聴いた音楽、これから聴く音楽・・・      

インターコンチネンタル / ジョー・パス

2008年03月31日 | ジャズ・フュージョン


曲目
1. クロー
2. メディテーション
3. アイ・カヴァー・ザ・ウォーターフロント
4. アイ・ラヴ・ユー
5. サヴォイでストンプ
6. ウォッチ・ホワット・ハプンズ
7. ジョーズ・ブルース
8. エル・ジェント
9. ビリー・ジョーの唄
10. リル・ダーリン

ジョー・パス(g)、エバーハルト・ウェーバー(b)、ケニー・クレア(ds)


『ヴァーチュオーゾ・シリーズ』を大作とするならば、さしずめこのアルバムは『小品集』といった趣があるような・・・
とはいえ、べつに大作がよくて小品集が悪いなんていったことではなく、あくまで大作は大作の良さ、小品集には小品集の良さというものが必ずある。

ソロギターの巨匠として名高いジョー・パスにしては少し珍しいトリオもの。
CTI風の音作りやボサノヴァなどをとりいれ非常に耳に優しい音楽なのだが、そういうところからも僕が『小品集』といったわけがある。
それこそ『ヴァーチュオーゾ』では『一音たりとて聴き逃してなるものか』みたいな気迫を聴くこちらももって挑まなければならなかったが(そんなの僕だけか・・・?)、このアルバムに関しては、もうギタープレイがどうのとか、この曲のあのアドリブが・・・なんてのは抜きにして聴く事にしている。
・・・というか、このアルバムにそういう部分を求めるのも少々野暮ったいのでは?なんて思うのである。
ちょうどCTI時代のウェス・モンゴメリーを聴くのと似たようなニュアンスで・・・
というわけで、このアルバム、聴くのはほとんど就寝前だ。
あまり神経を刺激せずに、それでいて薄っぺらくもない、そんな程よさが程よく僕を眠りへといざなってくれる。
なので、このアルバムの一曲一曲についての印象や感想などといったものはない。
もちろんジョー・パスのギタースタイルについての意見といったものもない。
ただあるのは、アルバム一枚を通じて伝わってくる『安心感』というものだ。
一家に一枚、そういう『安心感のあるアルバム』というのも必要なのではなかろうか?


The Melody At Night, With You / キース・ジャレット

2008年03月29日 | ジャズ・フュージョン


1. I Loves You, Porgy
2. I Got It Bad (And That Ain't Good)
3. Don't Ever Leave Me
4. Someone to Watch over Me
5. My Wild Irish Rose
6. Blame It on My Youth/Meditation
7. Something to Remember You By
8. Be My Love
9. Shenandoah
10. I'm Through With Love

あいにく、というか今日は休日ということもあってか平穏な心のままでいれたので、このアルバムを聴いて涙を落とすということは無かったが、これが少し心の疲れているときや不安定なときにでも聴いていたら間違いなく泣いてしまうだろう。大袈裟ではなくこればっかりは事実だ。

『胸の奥のほうから熱いものがこみあげてくる・・・』
というのが感動というものの大雑把な道程なのだが、時として自らその感動するという行為を拒否してしまっている自分というのもいないだろうか?
感動なんていくらしたって構わないし、することによって減っていくということもないのに、何か変な貧乏心が邪魔して『こんなところで感動している場合ではない・・・』なんて、妙にエセ・ストイックぶりっ子になってしまったり、『大人がこんな事で泣いてなんていられない・・・』なんて、わけのわからない古代思想に脅かされたり、もうなにがなんだかわからない意固地な自分というものはいないだろうか?
さも神から与えられる感動の量には上限があるみたいに思い込んで、なるべく感動の無駄遣いはやめておこうなんて窮屈な生きかたになっている自分というものはいないだろうか?
嗚呼、ばかばかしい・・・

なんて思って、ふと考えてみると、最近の自分はまだ若かった頃の自分よりも確かに涙もろくなっているようだ。
特に音楽を聴いている時に流す涙の量は20年前よりは確実に多いだろう。
ある程度はわかっていながらも(感動する事が)感動する。から、思いもよらぬたったひとつのフレーズに心の琴線を刺激される。まで、感動のかたちは様々だけど・・・
・・・って、それはただ単純に『歳くって涙腺がゆるくなった』といってしまえば身も蓋もないのだけれど。

それと、もうひとつ考えられる事は、若い頃に知ってか知らずか、自然とあるいは作為的に自分の心や身体に塗りたくっていた鍍金。
もしかして、これからはその鍍金もそろそろ徐々に剥がれていく時期なのかもしれない。
寂しい事なのか嬉しい事なのかはわからないけど・・・





UK / UK

2008年03月28日 | ジャズ・フュージョン


1. In the Dead of Night
2. By the Light of Day
3. Presto Vivace and Reprise
4. Thirty Years
5. Alaska
6. Time to Kill
7. Nevermore
8. Mental Medication

ここのところやたらとECM系の『空間音楽』ばかり聴いている。疲れている証拠か・・・?
先日もメセニーの『サンロレンツィオ』を久々に聴いて、ひとり夜中に枕を濡らしていた・・・やっぱ疲れてんだ。。。

・・・で、そんな空間サウンドに身も心も浸していると、何故だか理由はわからないがアラン・ホールズワースのギターが欲しくなってきた。
ECM系でもなんでもないけど、どことなく共通するところがある・・・ような気がする。ないといわれても僕にはあるのだから仕方がない。
これはもう生理みたいなもので、年に数度こういういわゆる『アラン・ホールズワース病』にとりつかれる。
そんなアホらしい病気なんてない。。。
といわれても、僕にはあるのだから仕方がない。
べつに曲はなんだってかまわないのです。ただそこにホールズワースのギターがあれば、それがゴングだろうがソフトマシーンだろうがなんでも良い。というかおかしな事に、どことなく器用に『曲は聴かずにギターだけを聴いている僕』という『先生に怒られているのに頭の中ではエッチな事を考えている僕』と同じようなニュアンスの僕がいる。いるのだから仕方がない・・・
昔はよく聴いたが今はさっぱり聴いていない、というアルバムが山ほどあるが、ホールズワースに関しては日頃はあまり聴かないが時として聴かないといても立ってもいられない・・・みたいな、そんな毒素みたいなものがあるような気がする。
そしてその毒素がある一定の周期によって僕の中で目覚めてくるのだろう。
高校生のころからずっと律儀にこの周期は僕を悩ませる。

今日聴いている『UK』にしても、はっきり言ってUKの音楽、曲そのものにはさほど魅力は感じない。
ここにホールズワースが加わっていないのなら間違いなく買いはしなかっただろう。
あるいは買ったとしてもそそくさと押入れの中の安置所で永遠に眠り続けている類であろう。
ピンク・フロイドやクリムゾンらが放ち続けていたグループとしてのカリスマ感がほぼ無いに等しいUKというバンド。(ちょっと言い過ぎ・・・か?)
だから僕はここでも器用に『曲は聴かずにギターだけを聴いている』という戯けた行為に及んでしまっているのである。






一期一会 / ジェイク・シマブクロ

2008年03月26日 | ジャズ・フュージョン


1. サボテンの花
2. オリビアを聴きながら
3. 秋桜
4. 見上げてごらん夜の星を
5. ロビンソ<ライヴ>
6.I LOVE YOU
7. SWEET MEMORIES
8. 時の過ぎゆくままに<ライヴ>
9. 卒業写真
10. FIRST LOVE
11. 雪の華


『日本全国の中年の皆さん、是非一度このアルバムを聴いてくださぁ~い!』って夜中に屋根の上に登って大声で叫びたくなるような、そんなナイスなアルバムです。

ウクレレといえば牧伸二な世代にとって、彼の出現はけっこうショッキングだった・・・いや失礼、、かなり言い過ぎ。
かなり新鮮であった・・・のほうがいい。
ウクレレでこんないろんな音楽表現ができるということもよく知らなかったし、だが、あの素朴で温かな響きは昔から好きだったが・・・
・・と、そんなことはどうでもよい。
ジェイク・シマブクロっていったい何歳なのだろう?見た感じはかなり若い感じだが。
というのも、このアルバムの選曲が非常に素晴らしい。
特に僕と同世代である40歳前後のものにとっては、まさに落涙もの。
カラオケレパートリーとしてはどの曲も即採用。
『おっさんを泣かせていったいどうするつもりだシマブクロ・・・?』

『素朴さというものは時としてあらゆる高価なものよりも光り輝く』
とは、かくも有名なピカソの名言なのだが(嘘)
このアルバムでの素朴で純粋なウクレレの響きと、何も着飾るものを必要としないそんな剥きだしの名曲たちとの文字通り”一期一会”の出会いに僕は幾度も涙する・・・

さぁ、中年諸君、思い出してごらん。。。

『ひとつ屋根の下』や『北の国から』の名シーンを・・・
あの忌まわしい日航機事故を・・・
ペンギンのキャラが流行ったあのCMを・・・
茶話会で歌った『卒業写真』を・・・
日本一ダンディーでカッコよかったころのジュリーを・・・
百恵ちゃんを・・・
そして
夢を追い求めていたころの自分を・・・

さぁ思い出してごらん。。

そして、いっしょに泣こうぜ!



MODAL JAZZ loves DISNEY

2008年03月24日 | ジャズ・フュージョン


情けない事に『熊のプーさん』の原曲を全く知らないので、一曲目のファイヴ・コーナーズ・クインテットの演奏なんて聴くと、『普通にカッコいいハードバップじゃん』って身も蓋もないことなんぞを思ってしまう。
さすがに2曲目の『アラジン』の歌は知っているが、ここでもなかなかに渋く聴かせてくれる日本代表『native』、追ってみる価値あり・・・か?
3曲目はなんと東京ディズニーランド・エレクトリカルパレードの曲をピアノトリオで。ディズニーランドといえば、子供たちが『ミッキーさんかわいい!』とか『ドナルドだぁ~!』って喜んでいる横で『こんなの着ぐるみの中にバイトが入ってるだけじゃん・・・』って信じられない暴言をいともたやすく吐き散らかす戯けたオヤジにとっては地獄のようなところで、人・・・人・・・&人・・・の、その狂熱の修羅場において死にかけたこと数回・・
そんな苦しい気分を思い出しつつも、なかなかに綺麗なピアノトリオを聴き、ほんの少しだけ溜飲を下げる。

・・・などなど、一曲一曲についていちいちコメントを書いてゆくのもなんなので、『べつにディズニーを好きでも嫌いでもない(注・ディズニーランドは嫌い)』な僕のお目当てであり、このアルバムのベストトラックは、かなりベタだがFABRZIO BOSSOの『SomeDay my Prince will come』なのだ。
ラテン風味で、マイルスやエヴァンスのような震えるほどのリリシズムはないが、かわりに『眩しい太陽の下、今日も美女をたらしこむ・・・』みたいな軟派なイタリアン・スケベちっくが随所に織り込まれた気風のよさはまぁまぁクール・・・か。


ザ・ケルン・コンサート / キース・ジャレット

2008年03月22日 | ジャズ・フュージョン


ここのところ仕事や法事の準備やらでかなりお疲れ気味。
というわけで、ほとんど、というか全然落ち着いて音楽も聴けていない状態だ。
せめて、就寝前のひとときの時間はこのアルバムを聴いて精神を落ち着かせている。
昔はよく聴いたが、さいきんはとんとご無沙汰のキース・ジャレット。
久々に聴いてみるとこれがまた良いんだよなぁ~
心に染みる。
とくに疲労気味の身体と神経にほどよく染み込んで少しだけど楽になれた気分だ。
このバタバタはおそらく今週末くらいにはおさまりそうなので、来週からはまたゆっくりと音楽を聴きたいと思っている。

あ~~~ しんど。。。

Just Four / native

2008年03月18日 | ジャズ・フュージョン


曲目
1. Mirage
2. The Edge Of Daylight
3. Uncolored Frame
4. Just Four
5. Spiral Insight
6. Confession
7. Get Along In My Life

とてもスムーズに聴けるという点では悪くはないと思う。
ジャズ・フュージョンというよりは、クロスオーヴァー的な肌合いもあって、もう少し右の方向へ進んだらCTI路線か?ってな趣もあるにはある。
ただ欲を言えば、もう少し『ざらっ』としたようなものや『がりっ』としたようなものが含まれていたならばもっと良かったのではないだろうか?

現在のジャズシーンはかなり多種多様になっているようで、完全に浦島太郎状態の僕としてはけっこうついてゆくのがしんどいのだが、それにも増してややこしいのが『クラブ系』というやつ。もうなにがなんだかよくわからないお手上げ気分で、それでもたまには聴いてみたりもするのだが、その中ではやはりこのバンドは良い線いってるとは思う(何故に上目線?)
というか、そもそもnativeというバンドをクラブ系と言っていいのか?

僕が音楽にのめり込み始めたころ、クロスオーヴァー~フュージョンの流行りだしたころで、その中にはサンボーンやブレッカー兄弟やパット・メセニー達もいわゆる『流行音楽』系に属していた賊軍として古くからのジャズファン達にけっこう叩かれていたのだが、今となれば全くナンセンスな話で、逆に彼らがいなければ、彼らが作っていたいわゆる『流行音楽』と呼ばれた音楽がなければ、もしかしたら今『ジャズ』という音楽を聴いている人々はかなりの確率で少なくなっているのかもしれない。もっと極端な事をいえば衰退の一路を辿ってしまっていたのではないだろうか?もちろんかなり大袈裟な表現だけど・・・
・・・なんて、本格的ジャズファンに殴られそうな事を書いてしまっている自分が怖い。

・・・と、そんなこんなを考えていると、いま僕がいかにも爺臭く『クラブジャズ系はわからん』などとのうのうとほざいている暇があるのなら、もっともっといろんな音楽を聴け・・・という話になるわな。
もしかしたら、ここらあたりから未来のジャズシーンを切り開き、作り上げていくミュージシャンが出てくるのかもしれないのだから。
自分のアンテナは錆びついてしまわないように、常に手入れしとかなくちゃ・・・なんて思う今日この頃です。

クラス・トリップ / ジョン・アバークロンビー

2008年03月16日 | ジャズ・フュージョン


曲目
1. ダンサー
2. リスキー・ビジネス
3. デセンディング・グレース
4. イリノイズ
5. キャット・ウォーク
6. エクスキューズ・マイ・シューズ
7. スワールズ
8. ジャック・アンド・ベティ
9. クラス・トリップ
10. ソルジャーズ・ソング
11. エピローグ

ジョン・アバークロンビー(g)、マーク・フェルドマン(vi)、マーク・ジョンソン(b)、ジョーイ・バロン(ds)

淡々とした静寂、しかし、そこにはそれがいつ破綻してもおかしくはないほどの脆さと儚さがある・・・
その悲しい静寂の中で、それでも凛として踊り続ける一人のダンサー、いつ脆く崩れていくのかも知れないまま・・・
一曲目『ダンサー』
まさに目を閉じるとその暗闇の中に鮮やかに映し出される、そのような物語、風景・・・
さすがECMといえばそれまでだけど、やはりこのレーベルの音楽については、否応なく『夢見がちなおっさん』になってゆく僕である。
そして、ひとつ困った事にして、じっと目を閉じて音楽に聴き入っていると、その気持ちの良さ、心地良さに負けて、『夢見がちなおっさん』が本当に『夢の世界』へ迷い込んでしまうときがある。つまり『寝てしまっている』のです(笑)
日頃、世知辛い世間様の風に晒されて、いろんな疲れが身体のいろんなところに溜まっているのですよ・・・もうこればっかりは仕方がない。
・・・なんて居直るつもりなんてなく、正々堂々と言うが、『ECMの音楽は安眠できる』
いちおう弁解しておくが、けっして退屈とか面白くないから寝てしまうという類ではなく、逆に本当にそのような退屈な音楽なら僕はきっと気持ちよくは眠れたりはしないだろう。音が邪魔になってかえって眠れないと思う。
そのてん、一連のECMサウンドはなんとなく周波が合う、というか、本来の僕が好きな音楽であって、それは『安心』というマークに支えられたどこかの生命保険のように、おそらくこれから老後もお世話になるであろう・・・とは確信している。

起きているのと寝ているのとのちょうど中間にある隙間の空間に、このアバークロンビーやビル・フリーゼルなどの浮遊ギターが蛍の光りのように灯っている・・・
もしかして、その空間こそが僕にとっての最良の場所なのかもしれない。



化身・アバター / ゴンサロ・ルバルカバ

2008年03月13日 | ジャズ・フュージョン


曲目
1. Looking in Retrospective
2. This Is It
3. Aspiring to Normalcy
4. Peace
5. Hip Side
6. Infantil
7. Preludio Corto No. 2 for Piano (Tu Amor Era Falso)

ゴンサロ・ルバルカバ(p)、ヨスヴァニー・テリー(s)、マイケル・ロドリゲス(tp)、マット・ブルーワー(b)、マーカス・ギルモア(ds)


かなり高度で難解な音楽っぽいんだけれど、それがただの頭でっかちやアヴァンギャルド的色合いが強いものには決してなっていないのは、やはり彼らが本物だという揺るぎない証明なのだろう。
そこには、ある種のクラシック音楽や現代音楽風な響きも感じとることができるが、彼はインタヴューで『僕たちは室内楽をやっているんだ。ジャズという定義や、クラシックという定義ではなく、レヴェルの高い音楽というものを打ちだそうとしているといったほうがいいかもしれない・・・云々』と答えている。
ここでもう一度書くが、『レヴェルの高い音楽』というと、どうしても冒頭に書いた<頭でっかち>気味なジレンマに陥りやすい、そしてそうなることがわかっているから、時として試行錯誤の上であえてアヴァンギャルドや<いかにもクラシック音楽風>な路線へ進みがちになるという事は否めない。
となると、聴く側としては、つい『・・・またか』という落胆にも似た感情が生まれてしまう。
このような『レヴェルの高い音楽』にまつわる、いわばループ的な解釈の仕方は、それはもうひと昔もふた昔も前から議論のテーマとして取り沙汰されているのは言うまでもなく、おそらく今後も同じ課題がグルグルと螺旋状に音楽を作り出す側、音楽を聴く側の間を旋回してゆくことなのだろう。
・・・で、更にもう一度書くが、このアルバム、そういったジレンマは幾分かは含みながらも、けっして頭でっかちにもアヴァンギャルドにもクラシック風にもならず、JAZZとして正々堂々と成立しているという点では多いに評価が出来るのではないだろうか。
そもそも、クラシックがレヴェルが高くて、ジャズやロックがレヴェルが低いみたいな考え方が根本的に間違っている事で、我々の間に少しでもそういう空気が漂っているのなら、いっこうに扉は開いてはくれないのだろうが・・・

まぁ、そんな頭でっかちな意見なんてほっといて・・・
このアルバムを聴いてみて直感的に感じえたものは、『非常に心地良い緊張感(テンション)の高さ』、そしてそのテンションの味わいは、あのマイルス、ハンコック、トニー、ロン、そしてウェイン・ショーターが醸し出していたアコースティック・マイルス最終時期『ソーサラー』や『ネフェルティー』あたりに漂っていた空気の味と似ているような気がする。
思えばこれらも『尋常ではない異様な香りを放つテンション』の権化のような音楽であった。
そして、このアルバムにも確かに『異様な香りを放つテンション』が散乱している。
それは理路整然としてはいるが、確かに散乱している・・・

これが現代のストレート・アヘッド・ジャズというものならば、僕は多いに現代のジャズに身を投じてみたい衝動に駆られる。





Suitcase /Steve Khan

2008年03月11日 | ジャズ・フュージョン
曲目
ディスク:1
1. Where's Mumphrey?
2. What I'm Said
3. Blue Zone 41
4. Melancholee
5. Played Twice
6. The Suitcase
7. Dr. Slump
8. Blades
ディスク:2
1. Guy Lafleur
2. Uncle Roy
3. Eyewitness
4. Capricorn
5. Dedicated To You
6. Caribbean Fire Dance
7. Mr. Kenyatta

スティーブ・カーン(g)、デニス・チェンバース(ds)、アンソニー・ジャクソン(b)


はっきり言って、僕の中でスティーブ・カーンといえば(ない)ギタリストだった・・・かつては。
パット・メセニーの美しく流暢なギターと、ジョンスコの歪んだ変態ギターの中間辺り、つまりどことなく中途半端な位置に僕はスティーブ・カーンというギタリストを置いていた(勝手に・・・だが。)
それに94年のライヴって・・・?何故に今更?
そんなみたいな少々怪訝な思いもあったのだが、なにせいろんなところでこのアルバムの評判が良いので、ギタリスト仲間である僕としては(嘘)、聴かないわけにはいかない・・・
で、とうとう、僕の中ではとっくに(ない)はずだったスティーブ・カーンの、それも2枚組アルバムを購入しました。

・・・で、最初に聴いた感想は
とにもかくにも、『アンソニー・ジャクソン!』だ。
巷ではデニチェンの凶暴なドラムとかパワフルさとかが富に有名だけど、凶暴という観点から見れば、このトリオ、完全にアンソニーのほうが凶暴だ。
普通にバッキングしているかと思えば突如すごいフレーズを何の前触れもなくぶっこむわ、淡々としたラインを刻んでいるかと思えば、『どこからそういう風な音を拾ってくるの?』的な、恐ろしくも理解不能な音をぶっこむわ・・・ぶっこむわ・・・
そんな、『常に進化し続けるおっさん、アンソニー・ジャクソン!』
思い起こせば、アル・ディメオラとアホみたいな速いフレーズをなんとベースでユニゾンしていた、あのアンソニー・ジャクソン。
今のルックスは完全におっさんだが、あの頃からすでにおっさんルックスだったので、今も昔もあまり変わらないのも(見た目もプレイも)微笑ましい。
スタイルも弾きかたもぶっ飛び度も、すべて高い水準で確保し、そしてそれらを常に進化させてゆく、その衰えを知らない真摯な姿は尊敬にも値する・・・か?

おそらく、この3人から発生する『音』というものには、無駄なものなどひとつもないのだろう。
3人が言いたいこと、伝えたいことを音で表現する過程において、『喋りすぎず、黙りすぎず』といったようないい塩梅に抑制の効いた表現方法は、そんじょそこらのハナタレどもでは到底真似できるものではない。
『言いたい事ははっきりと言わせてもらう。しかし、無駄な事は口が裂けても言わない。』といった、ドスがきいて筋の通った頑固さというところがとてもクール。

『スティーブ・カーンって、こんな良い音楽をしてたんだなぁ~』なんて、今まで『ないギタリスト・リスト』に彼を載せてしまってたことを痛切に反省しつつ、これからの自分が音楽を聴く時の姿勢、態度、挑み方・・・などをもう一度勉強し直さなくてはならないな・・・と、このアルバムを聴いて強く決心した今日この頃なのだ。大袈裟だけど・・・