軌道エレベーター派

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真空の海に帆をあげて

2010-06-14 20:34:39 | その他の雑記
 世は探査機「はやぶさ」の帰還で沸きかえっていますが、同じ頃、「楽園の泉」(早川書房)で軌道エレベーターを描いたアーサー・C・クラーク御大の想像が、また一つ実現しようとしていますね。

宇宙ヨット「イカロス」、帆の展開に成功
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11日、5月に打ち上げた宇宙ヨット「IKAROS(イカロス)」が、太陽光を受ける帆の展開に成功したと発表した。3日から作業を進め、地球から約770万キロメートル離れた位置で無事終了した。今後、半年程度かけて宇宙空間を飛行する実験をする。(日経新聞6月11日付朝刊)


 ほんのわずかな光圧による加速を行うソーラーセイルを備えた「イカロス」。 ソーラーセイル、宇宙ヨット、光子帆船などなど、呼び方は様々ですが、私は「はやぶさ」よりもこちらの方が興味深いです。1辺14mの四角い帆で、1Gにおける0.2g程度の圧力しか受けられないのですが、代わりに、自力推進ではないからどんどん加速していくことになります。
 軌道の自由度は低いのですが(姿勢制御用の推進装置を搭載すればそれだけ重くなり、セイルの巨大化を迫られるという二律背反的な制約がある)、技術発展や上手な組み合わせによって、将来複雑な任務をこなしてくれる時代も訪れるでしょう。ソーラーセイルは太陽でなくとも恒星の近隣では使えるわけですから、深宇宙探査用にも活用できるかも知れません。ちなみに、セイルの折りたたみ技術には、日本の折り紙の知恵も期待されているとか。

 このソーラーセイルをクラークは「太陽からの風」(早川書房)で描いていますし、先日紹介した「最終定理」(同)でも登場します(物語はボロクソに批判したけどね)。アニメの「機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER」(サンライズ)では、セイルを量子の幕で形成して直径を巨大化させていました。本当にできるかどうかはわかりませんが、非常にユニークです。やっぱりSFというのはアイデアの宝庫であり、多くの科学者や技術者の原点なのですよね。
 今回の見出しにした「真空の海に帆をあげて」というのは、クラークと並ぶSF御三家の一人、アイザック・アシモフの著作の邦題ですが、こういう時代になったわけですね。御三家全員(あと1人はロバート・A・ハインライン)お亡くなりになりましたが、もし生きてこうしたニュースを見ていたら、きっと興奮したことでしょう。これで軌道エレベーターが実現しない理由がどこにあろうか?
 
 それにしても、これまでの地道な努力がこのところ立て続けに結実しているのでしょうが、「はやぶさ」の航宙記録をギネスに申請したり、擬人化して「あかつき」「イカロス」とツイッターで対話させたりして、最近のJAXAは宣伝が上手い。。。やり手の広報担当でも就いたのでしょうか?(文中敬称略)
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