にいはんは周回遅れ

世間の流れとは違う時空に生きる

平野日出木、オーマイニュースで大いに語る(5)

2008-05-26 | オーマイニュース

インタビュー記事の3回目も後半に入ります。前回のエントリではこちらの記事を掲載した意義(正当性)を力説した平野日出木オーマイニュース(以下引用部分を除いてOMN)編集長ですが、後半部分では比較的答えやすそうな質問が並びました。このあたりの構成に、インタビュアーでもあった黒須みつえ記者の配慮が感じられます。(引用部分はイタリック体で表示、フォント変更・太字は筆者)

これからのオーマイニュース

Q6-1  これからどのような効果を狙った、どんな企画をお考えですか?

 オーマイニュースには全国各地、世界各国の市民記者が在籍しています。そういった市民記者の記事を、たとえば世界地図などのビジュアル的なものを使って、旅行をする際などの情報源になるようなものを作れればと考えています。

この質問、インタビュー動画ではもう少し詳しい話を聞くことが出来ます。平野氏の中には、桜企画のようにFlashを活用したページを作り、発信場所別に記事を参照できるイメージがあるようです。現状では海外在住の市民記者はそれほど多いわけではなく、在住している地域にも偏りがありますが、国内から発信される海外ネタも含めれば、OMNにもそれなりの本数の記事が集まっています。

OMNには桜企画や日本列島力クイズの実績がありますから、それをベースにして実現可能な企画を出してきたのかなという印象を受ける回答でした。

Q6-2 今後における、投稿記事・写真の有効活用についての青写真はありますか?

 賞味期限の長い記事、よく取材をしている記事、専門分野の記事などが多いので、これらが蓄積されればデータベースとして活用されていくのではないかと思います。

具体性に欠けるというか、いかにも青写真といった感じの回答です。これだけでは質問のニュアンスが読み取りにくいので、どうしてこのような回答になったかがよくわからないのですが、できれば「記事や写真を経営資源としてどのように活用していくのか」といった観点からの回答を望みたい質問ではあります。以前、元木昌彦社長がコンテンツ販売について触れていましたが、それがどの程度現実味を帯びているものなのかが気になります。

そして、この回答で気になった点がもう一つあります。

平野氏は、OMNが既にデータベースとして活用されている事をご存じないのでしょうか?

OMNがこれまでにやってきた事は、その多くがサイト内で確認できるようになっています。例えば、平野氏は昨年10月に編集に関連するいくつかの改善案を出しました。それに対して、拙ブログでは今年に入ってから進捗状況を確認するエントリをアップしていますが、その後の動きのなさを見て、当時抱いていた「検討が実際に行われたかどうか」という疑問が確信に変わりつつあります。

OMNが創刊されてからまだ2年にもなりませんが、市民記者証の発行編集長賞ほぼ毎日が講演会の立て直し等、やるといった事がいつの間にかなかった事になってしまう例は枚挙に暇がありません。OMNにとってはあまりありがたくない活用のされ方かもかもしれませんが、過去にどのような発言をし、それがどのように実行されたかどうかが確認できるというのは、立派なデータベースとしての活用法でしょう。

OMNは、OMN自身の「過去との整合性」を確認する目的で、大変有効に活用されています。

その他もろもろの疑問について

Q7-2 評価点の分母(評価点を投じた人の総数)が消えました。どのような効果を狙ってのことか、教えて下さい。
  
 特定の記事(記者)に対し、同じIPアドレスからゼロ点を100回近く投じる「ゼロ点攻撃」が続きました。ゼロ点攻撃は記者を萎(な)えさせませんか? 評価スライダーを抜本的に変更するのは時間がかかるため、分母を消しました。

 サイトリニューアルで評価スライダーを設置する際に、0点というのを設けない方が良かったかもしれない。1~10の加点方式で対応できたはずですから。

 (黒須の「逆に1点攻撃で晒し上げというのもありますね?」という問いに対し)そういうこともあるかもしれません。ですが、あのランキングは噂されているように操作することはできません。

分母を消したことで未登録者はこのような実害を被っているのですが、記事を書いてくれる人を重視する立場にいると、未登録者などはどうなろうと構わないのでしょう。平野氏は、インタビュー2回目の中で、オピニオン会員を排除した時は創刊3ヶ月のタイミングだったので書き手である市民記者を最優先せざるを得なかったと述べていますが、創刊から2年になろうかという今の時期でも事情は変わっていないようです。

Q7-3 現行の持ち点配分(市民記者10点・未登録者1点)についてはどうお考えになられていますか?

 市民記者の特権として持ち点を10点にしましたが、そもそもポイント制というのもどうかと感じています。たとえば、「良い・普通」などの評価でもよいはずです。

悪いという評価は記者を萎えさせてしまうので、平野氏にとっては論外なのでしょう。とはいえ、良い・普通の2段階評価というのはなかなかいいアイデアかもしれません。実行すると市民記者と未登録者の差がなくなってしまいますが、この方式だと“良い/○人・悪い普通/○人”という形で自動的に分母が復活します。

ただし、この制度の問題は導入がほぼ不可能という点です。評価スライダーの抜本的な変更には時間がかかるそうですし、普通の評価が記者を萎えさせないとも限りません。とても良い・良いの2段階評価というのも考えてみましたが、そうすると、今度は良いの評価が記者を萎えさせてしまいそうです。それならば評価スライダーそのものを無くしてしまえばいいのですが、今度は良い評価を得られない記者が萎えてしまう可能性が出てきます。

萎える記者を一人として出さない、言い換えれば良い評価だけが見たいという記者に対応したシステム作りというのも、なかなかたいへんな作業のようです。

Q7-4 トップページから記者名をなくした理由をお聞かせ下さい。

 見出しと記者名の2つの情報が同時に読者に与えられると、トップページの現行レイアウト(署名の位置や大きさ)では、見出し情報が必要よりも軽く、記者名情報が必要以上に重く扱われてしまう傾向がありました。

 よりよい見出しをつけ、(記者名ではなく)内容そのもので勝負できる記事を作っていくために、初出時には記者名を削り、「読者が選んだ注目記事」に入った時点で記者名が現れる見せ方の方がベターだと判断しました。

記者名を削った時に、OMNから市民記者に向けてこのようなアナウンスがあったのでしょうか?いいえ、記者名が削られたのは昨年12月ですが、今になってこんな質問が出ているのですから、アナウンスなどなかったものと考えられます。編集部がこのように考えていたとしても、市民記者の側に伝わっていなければ意味がないと思うのですが。

見出しはともかく、内容で勝負できる記事を作るには市民記者の協力が欠かせません。記者名だけでスルーされる記事の救済にはなっても、それが記事の質向上につながるわけではないでしょう。編集部にしてみれば、そういった記事を見出しで釣って読ませればPVが増えると思ったのかもしれませんが、読まされる側の気持ちも少しは考えて欲しいものです。

また、この回答にはOMNが抱えるもっと根本的な問題が隠されています。それは読者の固定化です。

既存のマスメディアにしても、よほど熱心な読者でもない限り記者(出演者)名を見て記事をスルーする人などそうそういません。ましてやOMNは市民メディアで、そこで記事を書いている市民記者に一般的な知名度などありません。にもかかわらず、記者名だけでスルーされる記事が、その対策を取らなければならないほどOMNに多数存在しているのは何故でしょう?

(OMN内部で)目立つ記者の数と比較して、読者が少ないというだけの話に思えます。

OMNが一般に浸透し、幅広い読者を獲得できればスルー問題は自然に解決するでしょう。幸い、OMNではこの4月に梨元勝氏と加護亜依氏が多くの読者を呼び込んでくれました。そこで呼び込んだいわゆる一見さんが“梨元”“加護”といった名前が見出しにない記事にも目を通してくれればいいのですが、OMNがその為にどういった取り組みをしているのか、じっくり見ていきたいと思います。

さて、全3回のインタビュー記事から特に印象に残ったのは、平野氏が正面から答えられない質問の多さです。特に実名(署名)主義や創刊宣言について語ったくだりなど、OMNの現状に照らしてみればある程度納得できる答えではあっても、過去の言動とは噛み合わない点がゴロッゴロ出てきます。過去との整合性をかなぐり捨て、これまでその場しのぎを繰り返してきたツケが、このような形で噴出したと言ってもいいでしょう。

OMNは創刊以来迷走を続け、現在ではエムプロの発足によって市民メディアの看板すら揺らいでいます。実名主義は署名主義の間違いだった、創刊宣言は守らなくても構わないなどと言い放つ人が編集長の座にいるのですから、いつの間にか市民メディアの看板がなかった事になっていたり、OMNなりに都合よく解釈した市民メディアの新定義が登場しても不思議ではありません。

今回のインタビュー記事は本当にツッコミどころ満載でした。ですが、この記事の真価は回答の内容にはありません。平野氏の現時点での考えが明らかになり、それがOMNのサイト上に記事として出され、今後OMNが続く限りサイト上にその記事が残る。ひらたく言えば平野氏がOMNで語った、これが最大の収穫です。


黒須みつえ記者、お疲れ様でした。 GJ!


最後に、個人的に最も衝撃を受けた箇所をインタビューから再掲して終わります。


Q3-2 市民記者や読者は、創刊宣言とどのように付き合っていったらよいとお考えですか?

 「創刊宣言」は、まだ全く市民メディアがどういうものかわからなかった日本人編集部員が、2006年8月の創刊当時に、自分たちが長期的に目指すべき方向性や日々のオペレーション上の疑問について確認する、ざっくりとしたマニュアルのようなものでした。今でも照合すべき点は多々あります。

 憲法、教義、綱領のような、守らなくてはならない基本ルールというよりも、2006年8月当時の"心意気""guiding light"のような性格の文章として「宣言」を受け取めてもらえるとうれしいです。宣言の文言一字一句を精査して、その文言と比べて、今の運営は整合性がとれていないではないか、直せ、と迫られてしまうと立ち往生してしまうかもしれません。大きな方向感を感じ取っていただくのがいいかと思います。


(おわり)

【なんとなくリンク】
OMNに出なかったインタビュー

【おことわり】
何となくリンクを追加しました。木村多漏さん、ありがとうございます。(5/27 1:30追記)



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6 コメント

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なんとなくリンク (木村多漏)
2008-05-26 16:28:57
元祖日出木インタビュー記事
http://yaplog.jp/parsleymood/archive/483
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にいはん、長文乙でした (Mint)
2008-05-26 20:05:13
基本的に編集長二重体制の現状ですが、インタネ的には元木編集長のエムプロがおもしろいです。

何故か加護記事がOMN側に掲載されたりしてますが、基本的に市民記者サイドは情熱を持った編集長が居れば繁盛しますが、現状ではアメバの爪の垢を煎じて飲む気が無い編集長なのでお先真っ暗です。

その意味で「高邁な理論なんか不要。売れてナンボやぁ」って元バーテンダーの元木氏の開き直りはインタネ的にはネット全体への燃料補給になりますので歓迎して良いでしょう。

普通、部数低迷の時は編集長を換えるのですが、オヨンホは資本を引き上げて勝手にシンドバットって選択をしました。
「平野編集長では永久に仏滅です」ってオヨンホの選択も正解だったかも。

上から目線の編集長ではOMNでは勤まらないって解ってない平野編集長ですから。
今回ご苦労の市民記者には申し訳ないですが、「皇室アルバム」を見るような消化不良を記事から感じました。
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>Mintさん (mitsue)
2008-05-26 22:10:48
インタビューですからね、討論会ではなく。
編集長の(対外的な)お考えを聞いて表したかったわけで、それを聞いての続きはこれからです。
直訴や話し合いをしたいのであれば、インタビューではなくちゃんとそういう場を設けるべきですね。
そういう場も必要かなと感じましたが、私は企画のコマをこれでもう使ってしまった。
どこかでジワリとバトンが回ればいいなと思っています。

消化不良を起こさせてしまったみたいで、こちらこそ申し訳ありません。。。
Mintさんのお望みの結果を出せなかったにもかかわらず、お読みいただきありがとうございます!
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そしてにいはん (mitsue)
2008-05-26 23:52:48
ありがとうございます!
創刊宣言のくんだりは、お伺いしているさなかでにいはんのことを偲びました。。
ガイディングライトと言ってもあそこを今初めて見た人はそう思わないでしょうね。
創刊時の宣言ですから書き直すわけにはいかないでしょうが、あのままサイト上に鎮座しているのも微妙ですよね。
編集長はそれを気にしていないわけではないってニュアンスでした、そしてそれを記事上にうまく表現できませんでした。

記者名がトップページから消えたのは困ります。
読みたい人のがピンポイントで読めない。全部目を通すわけにはそういかないですもの。
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いやー長かった (管理人)
2008-05-27 01:56:41
>多漏さん
ネタ投入どうもです。早速エントリに追加しておきました。
それにしても変わって欲しいところはなかなか変わらないものなんですね。

>Mintさん
予定通りなら今週中にエムプロが正式オープンしますね。
時期的にダービーに絡んだオープン記念企画が登場するかも。

>インタネ的には元木編集長のエムプロがおもしろいです。
オマニーが市民メディアでなければアタシももう少し面白がれると思うんですが・・・
売れてナンボのネットメディアって、他にいくらでもありますしねえ。
その為にはエロ解禁が手っ取り早いですが、芸能ネタでPVを稼げるうちは自重するのかな。

>mitsueさん
もう何度も言ってますが乙、ホントに乙。

アタシは信者として創刊宣言にこだわってますが、書き直しにはそれほど抵抗はありません。
憲法が時代に合わせて修正されるのと同じような感覚です。その時々の解釈であり方が変わるよりはずっといい。
ただ書き直されたとしたら、今のバージョンとどこがどう変わったのか
比較できるようにちゃんと参照できるようにしておいてもらいたいですね。

>全部目を通すわけにはそういかないですもの。
中の人は全部目を通して欲しいんですよw
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システム (スナギモ)
2008-05-27 12:36:48
オーマイは読者の中には記者名で読んでいる人も多くいるってことを認識すべきだと思うけどね。

きっとどこぞのヘタレ記者が「ヘッドラインに名前出すのやめてください」とか泣きついたんだろう。

たとえばトップページに「黒須みつえ」とあれば、いよいよ袋とじか?とwktkでアクセスする人も多いだろう。

記者別に記事更新をRSSフィードでもしてくれれば完璧なんだけどね。
オーマイのweb2.0にはきっと存在しない考え方。
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