オーマイニュース(以下OMN)が新しく導入したシステムの目玉に、市民記者同士によるSNS機能があります。そこには「みんなの記者クラブ」と銘打った、正式掲載5本以上の市民記者が設立できるコミュニケーションスペースがあります。このコーナーが発足した当初、拙ブログでは、他者の投稿すら記者クラブのキャップに責任を負わせるとした市民記者規約に疑問を呈するエントリをアップしましたが、ここまでこれといったトラブルもなさそうで、まずは順調なスタートを切ったと言ってもよさそうです。
その記者クラブに、新しく「プロだけど市民記者」なる記者クラブができていました。いわゆるネット右翼と称される人々が集うと一部で言われている2ちゃんねるや、嫌韓サイトと称される場所で揶揄されているそれとは全く違う、プロ市民記者クラブがOMNに誕生したのです。
ただ、このプロ市民記者クラブの構成員には不透明な点があります。これは構成員全員がプロフィールを公開してくれている為に外からでもわかる事ですが、今日22時現在での構成員は5名。その中でOMNの記者として記事を書いていると言明しているのは藤倉善郎記者ただ1名で、他の4名はOMNが認めるプロ記者かどうかが明らかではありません。
OMNにおいて、一般の市民記者であるかOMNが認めるプロ記者であるかは重要な意味を持ちます。簡単に言えば、市民記者規約・市民記者倫理綱領の拘束を受けるか否かという点です。度々例に出して恐縮ですが、藤倉記者はOMNの依頼を受けて記事を書いています。OMNが依頼しているのですから、取材経費が自前ということはないでしょうし、原稿料にしても一般の市民記者と同額ではないでしょう。
ここではわかりやすく説明する為に取材経費や原稿料を例に挙げましたが、OMNがプロと認める記者には、一般の市民記者とは異なり、市民記者規約も市民記者倫理綱領も関係ないOMN独自のルールが適用されるわけです。記事を書く時の表現上の問題・トラブルが生じた場合の責任の所在・OMNが市民記者に定める免責事項・取材姿勢等々、一般の市民記者が取材をし、記事を書く場合には様々な配慮をしている事と思われますが、OMNが認めるプロ記者に対するルールというかガイドラインはこれまで一度も公表された事がありません。
ここで、プロ市民記者クラブ構成員に藤倉氏以外にもOMNが認めるプロ記者がいるのではないかと推測される例を挙げてみます。これは構成員の一人が書いた記事ですが、ネットカフェの女性店員の注意は報道であることを理由に拒否し、男性店員が名刺を持っていないのは非常識と因縁をつけて取材を強行しています。この記者がただ常識を知らないのかと思いきやさにあらず。警察官に制止されて会津若松署を出るときに口の中でゴニョゴニョ言うさまは、ネットカフェの店員に強引に取材した面影はありません。警察官に威圧的に出られれば、殆どの人はそのように対応する事でしょう。
ところで、この記者は身分を明らかにして、謙虚な取材をしているでしょうか?答えは否です。記者は潜入と称し、まず客としてネットカフェに入り、店内の写真を撮っています。女性店員の制止を「報道だから」とはねつけたそうですが、OMNの取材である事を明らかにしていたかも甚だ疑問です。そして、身分を明らかにしたのは男性店員に促されて名刺を提示してからです。一連の流れから、この記者の目的はネットカフェへの潜入ではなく、店への取材が目的と思われますので、OMNで時折みられる潜入レポートとは性格が異なると判断されます。
次に、記者は正当な手段で情報収集をしているでしょうか?これも答えは否です。記者は男性店員が名刺を持っていなかったことをきっかけに、立場が逆転した(と感じた)と書いています。取材相手の弱みにつけこんで取材を強要したといえるのではないでしょうか?
この2点は、市民記者倫理綱領の第1項と第2項を元にした疑問です。更に、市民記者規約第10条には禁止行為として、下記のように書かれています。(引用部分はイタリック体で表示、太字は筆者)
第10条(禁止行為)
市民記者は当社ウェブサイト、「この記事にひと言」欄および「未登録の方のコメント」欄ならびに市民記者マイページにおいて、さらに市民記者として行う一切の行為を含め、次の行為を行ってはならないものとします。
以下の行為が確認された場合、状況を判断した上で掲載情報の変更、市民記者の登録削除を含めたしかるべき処置をとります。
当社は、本規約違反に関して市民記者に連絡する場合は登録メールアドレス宛に送信させていただきます。市民記者の事情により当社からのメールを確認できなかった場合も、本規約に則った対応をさせていただきますので予めご了承ください。なお、当社の処置に関する質問・苦情は一切受け付けておりません。(略)
(9)当社が定める「市民記者倫理綱領」に反する行為
ところが、この記者はその後も記事を書き続けています。一般の市民記者がこんな取材方法を得々と語ったら編集部のチェックが入って然るべきだと思うのですが、その形跡もありません。市民記者規約や倫理綱領を逸脱しても責任を問われないのがOMNが認めるプロ記者です。その証拠に、OMNにはニュースのたねキングになっているライターや、編集部におかしな記事の改変をされても修正依頼の方法を知らなかったライターも存在しています。(ただし、このライターが誰のIDを使ってコメントしたのか、あるいはシステムに未解決のバグが存在するのかは興味津々ですが)
OMNが元木昌彦編集長代理体制に移行してから、従来の編集部員以外に外部のライターによる記事がかなり増えました。そのようなライターと一般の市民記者の記事が同じサイトで読めるのはOMNの魅力の一つには違いありません。しかし、同じ土俵に立つならば同じルールの下で競い合う事はできないでしょうか?それが物理的に不可能というなら、せめてOMNが認めるプロに適用されるルールを隠していてはいけません。
勿論(自称○○も含め)、プロと素人の間にはかなりの力量差があるのでしょう。それは認めざるを得ないとしても、ルールまでもがOMNが認めるプロにとって有利に作られており、しかもその内容が公表されず、誰に対して適用されているかすらわからない現状では一般の市民記者の立場がありません。編集部員も含め、OMNが認めるプロが書いた記事には一目でそれとわかるようなマークをつけるべきだと考えます。
念のために付け加えますと、みんなの記者クラブから編集部員を含めたプロを排除しろと言っているわけではありません。新システム導入直後から、朴哲鉉記者がOMN不具合報告記者クラブの窓口となってバグ対応に尽力していた事を知っている人は決して少なくないでしょう。他の編集部員の中にもみんなの記者クラブに参加し、市民記者たちと交流を深めている人もいます。そのような交流は歓迎されるべきですが、外から見てOMNが認めるプロかどうか判別できない人たちが、内輪で集まって何かをやっているというのは、OMNがSNSを導入した目的から逸脱する行為ではないでしょうか。
プロだけど市民記者などという不透明な記者クラブの存在を、OMNはいつまで黙認し続けるのでしょうか?このままでは自分たちの都合に応じてプロの顔と市民記者の顔を使い分けられますし、一般の市民記者からこの記者クラブがOMNの別働隊ではないかという疑惑を持たれるかもしれません。
藤倉記者を除く構成員は、OMN認定プロならはっきりと宣言しましょう
市民記者なら市民記者規約を遵守しましょう
【参考リンク】
市民記者倫理綱領