大倉草紙

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【滋賀】 冨嶽三十六景と富嶽百景 北斎 富士を描く (佐川美術館)

2008年08月20日 17時14分24秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
8月16日(土)
当日の行程:(JR・堅田駅)…(江若交通バス・堅田駅~佐川美術館) → 【冨嶽三十六景と富嶽百景 北斎 富士を描く(佐川美術館)】 → (江若交通バス・佐川美術館~堅田駅)…(JR・堅田駅~大津京駅) → 【石山寺と湖南の仏像 ―近江と南都を結ぶ仏の道―(大津市歴史博物館)】【弘文天皇長等山前陵】 → 【新羅善神堂】 → 【フェノロサの墓】 → (京阪・皇子山駅~出町柳) → 【五山送り火】



   
          

佐川美術館の建物の前には、水庭が広がる。
暑い日だったので、この光景はありがたかった。
美しいこの建物は、さまざまな賞を獲得しているそうだ。

水庭に佇んでいるのは、牡鹿。
佐藤忠良作「蝦夷鹿」(1971)。


   

北斎の『冨嶽三十六景』と『富嶽百景』をいっぺんに観ることのできる、実に嬉しい展覧会。
北斎の魅力にやられてしまった。

どの1枚をとっても計算され尽くしたその構図は、見飽きることなく、観れば観るほど発見がある。
よく指摘されることだが、「本所立川」(『冨嶽三十六景』)では、材木と富士山が作る幾何学的な形が、
「甲州石班沢」(『冨嶽三十六景』)では、猟師が投げる網と彼が立っている岩の作る三角形とその向こうに聳える富士山の相似形が、
「尾州不二見原」(『冨嶽三十六景』)では、手前に描かれた大きな桶の円とその円の中に小さく見える富士山の三角形が、
それぞれ画面を豊かにしていて、やはりおもしろい。
それから、「駿州江尻」(『冨嶽三十六景』)のように、視覚だけで風を感じられる作品も、天晴だと思う。

『富嶽百景』からも、印象に深く残っているものをいくつか挙げる。
「孝霊五年不二峯出現」は、人物が向こう(富士山のほう)を見ているのにもかかわらず、彼らの驚いた表情が見えてくる不思議な作品だ。
「江戸の不二」に描かれた鯱の尾は富士の山頂よりも高く、その顔は滑稽だ。
尾に鳥がとまっているのも、とぼけた感じがする。
「夢の不二」は、茄子がどこにあるのかと思ったら、なんと鷹が抱えていて、びっくり。

今度はどんな仕掛けをしてやろうかと企んでいる北斎が見えるようである。
これが70歳過ぎてからの仕事だというのだから、驚きだ。
やんちゃな爺さんを想像してしまう。

展覧会のポスターやチラシに使われているのは、『冨嶽三十六景』の中でも有名な「神奈川沖浪裏」。
この作品は、波の伊八の彫刻の影響を受けているともいわれる。
数年前、千葉県の行元寺で波の伊八の欄間を見たという母の話を思い出した。
もう一度、ゆっくり聞いてみよう。