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ホヴァネス:聖なる殉教者の神秘、交響曲第3番

2013-10-15 21:03:13 | CD


アラン・ホヴァネス:
・交響曲第3番 作品148
・聖なる殉教者の神秘 作品251

指揮:ヴァフタング・ジョルダニア
KBS交響楽団
ギター:マイケル・ロング

Soundset: SR 1004



 以前も書きましたが、ホヴァネスの音楽はなごみます。アルメニア系アメリカ人のホヴァネスは若い頃はシベリウスと交友関係を結びシベリウスのような曲を作っていたのですが、コープランドやバーンスタインに批判され、過去の作品のほとんどを破棄した上、自分のルーツであるアルメニアの音楽や日本・インドなどのアジアの音楽を研究して独自の音楽を作りました。とても聴きやすい音楽ですが、顕著な特徴があってどれを聴いてもホヴァネスの作品とわかるものになっています。ただ、どれも同じような曲に聴こえるため、(変な)金太郎飴と言われることが多くあります。

 このディスクのメイン曲であろう「聖なる殉教者の神秘」は世界初演らしいです。恐らくアルメニアの聖者の生涯か何かをテーマにしたものと思われますが詳細はわかりません。ギターと弦楽が交互に短いエピソードを奏でる作品ですが、特に凄いギタリズムを披露するわけではなくて、素朴でつぶやくような旋律を単音で奏でるものになっています。

 私はむしろ交響曲第3番がお気に入りです。ホヴァネスの主要な曲ではないし、深いテーマや表現があるわけでもないですが、なごむし、どこか笑えるし、妙な迫力はあるし、変な構造を持っているし、聴いていて飽きることはありません。



 上の動画はこのディスクと同じ演奏だと思われます。全3楽章で、9:26から第2楽章、17:07から第3楽章で、どれも聴きやすくはあってもどこか聴き慣れない部分があってホヴァネス節が全開です。第1楽章はカノン風の幾つかの旋律がひたすら繰り返されます。第2楽章では10:26からの怪しげな音形を繰り返しかぶせてくるのがまさにホヴァネス節。時々チェレスタが合の手を入れるのが微笑ましいです。

 そして私の好きな第3楽章、全体はソナタ形式(提示部-展開部-再現部-コーダ)になっています。冒頭の提示部からいきなりズンドコしてて泥臭いのが笑えます。そして18:56からの変な音形はこれまたホヴァネスに特徴的なもの。他の曲にもこういうのが何度も使われています。直後の19:08からはいきなりフーガ(みたいなもの)が始まります(しかも変拍子)。交響曲には部分的にもフーガという形式はあまり使われないのですが、ホヴァネスはどんな作品にもフーガ(みたいなもの)をブッ込んでくるのでたまりません。その後の20:16からは弦楽が11/8拍子で繰り返す音形に乗って金管が2/4拍子で分厚い和音を奏でる部分で、聴けば聴くほど何をやっているかわかりませんよ! それでいて異様で巨大な山脈のような存在感があります。展開部は21:14あたりからで、もう耳にこびりついて離れないフレーズが変奏されます。再現部は23:35あたりからで、提示部と比べてややうわずっており、何らかの音楽的な解決が感じられます。コーダは27:36あたりからで簡潔に終わります。

 この曲の解説も楽譜も見たことがないので、上の分析は私が勝手にしたものです。だから間違っている部分も多々あるかもしれませんが、とにかくホヴァネスはヨーロッパの伝統的な音楽を踏襲した上で独自のおかしな要素を導入し、それでいて聴きやすくて耳に残る音楽を作ってきたのです。

 このディスクの指揮者のヴァフタング・ジョルダニア(って読むのか?)はグルジアのトビリシ生まれ。アルメニアとは隣同士なので、音楽的なバックグラウンドに共通点がひょっとしたらあるのかもしれません。また、演奏のKBS(Korean Broadcasting System)交響楽団は韓国の楽団で、ヴァフタング・ジョルダニアと共にホヴァネス作品をしばしば演奏しているようです。ホヴァネスのアジア趣味にマッチするのかもしれません。


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